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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
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15話 過去4

 本当に似ているが、前世の世界とこの世界は違う。



 モンシロチョウ含む日常で出てくる生物名とか、国の名前とか。似てるのに違う。私はこれらを前世の知識が邪魔して、中々覚えられない。そりゃそうだ。20年近く使い続けて、常識として覚えてしまっているものがそう簡単に覚え直せるわけがない。少なくとも私はそんな器用じゃない。


 しかし図鑑を持ち歩くわけにもいけない。持ち歩くとしたら何種類も必要だし。



 暫く考え、考え続けて私はある方法を思いつく。



 そういえば昔、覚えられない英単語だけ書き出して、何回も見直して覚えたな、と。



 似たような感じでできないかな、と兄の膝の上で考えていると、目の前にカメラのシャッターをきる父がいた。それをみて思い付く。



 そうだ、写真を撮って、アルバム作ろう。



 それを思いついたのは3歳のときだった。



 かくして私は親に強請ってカメラを買ってもらい、前世とは名前の違うものを撮って、写真をアルバムに収めた。写真の下にはそれの名前を記載しておく。写真に収められないものは後回しにした。



 ついでにもう一つ、そのアルバムには狙いがあった。




 人間は忘れゆく生き物だ。これは仕方のないこと。すべてを覚えていることなんてできない。



 ならば、私はどんどん前世のことを忘れていくのではないか。



 それは嫌だった。大事な思い出を失うのは嫌だ。そう思ってプリントアウトした写真の裏面にはソレの前世の世界での名称を書いていった。この世界にはない名前。私が前世を覚えていたという証のようなものだ。まぁちょっとは、忘れる速度が落ちればいいな、なんて思ったりもしたが。忘れても思い出すきっかけになればいいな、とも。


 前世の親の写真とかあれはよかったが、流石にそれはないので、諦めた。



 それから私はずっとカメラを持ち歩いて写真を撮った。最初は前世のときと名前の違うモノばかり撮っていたそれに段々と別のものが混じっていった。


 家族の写真、きれいな風景、何気ない日常。色々なものをカメラに収めるうちにそれが楽しくなって、今では撮りたいと思ったものをひたすら撮るようになった。




 そうやって少しずつこの世界に適応していって、トラウマも思い出さなくなっていった。親のことも親と呼べるようになったし、兄と弟もちゃんと家族と呼べるようになった。



 ここまでに5年以上かかった。意外と時間がかかってしまった。








 そして、小学校に入学し、気がつく。








 あぁ、ここはゲームの中なのか、と。

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