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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
84/232

9話


「やぁ」



 放課後の教室。皆が去って静まり返るそこで秋田くんが席から外を眺めていた。秋田くんは窓際の席だ。

 声を掛ければ彼はビックリした顔で振り返る。


「いい……波留さん、帰ってなかったの?」

「生徒会に顔出してた。もう帰るよ」


 君は帰らないのか、と問えば曖昧な笑みが返ってくる。帰りたくないのかな。


「……家に帰りたくないならうちに来る? 暇?」


 何も考えずにそう言うと秋田くんは少し考えたあとゆっくり頷いた。よし。


「じゃあ帰ろう。今日は圭も兄さんも家にいないんだ」


 兄は習い事、圭は友人と遊びに行くと言っていた。初等部は中等部より先に授業が終わるから、もう着替えて遊びに行っているだろう。恐らくサッカーか何かをしている。


「そうなんだ」

「そうなんだよ。さ、行こう」


 今日の夕飯係は私だが、夕飯を作るまでには少し時間がある。それまでうちで遊ぼう。食材はこの間買ったし、家にあるはずだから買い物はしなくていい筈だ。

 通学路を二人で他愛のない話をしながら歩いていく。ところで秋田くん、身長伸びたね。


「ただいまー」

「お邪魔します」


 誰もいない家に入る。秋田くんをリビングに案内して、飲み物を差し出した。


「何やる? ゲーム?」

「やる」

「おーけー」


 ゲーム機を出して、色んなソフトを秋田くんの前に出す。


「どれがいい?」

「いっぱいあるね」

「休日に家族とやったりするから」

「へぇ」


 目を輝かせながら秋田くんはソフトを手に取りながら説明分を読んでいく。


「秋田くんはどんなのが好きなの?」

「んー、アクションかなぁ。でも色んなのやる」

「へぇ。たしか秋田くんはひとりっ子だよね? 一人でやるの?」

「そうだね」

「いつも家でやってるのは?」

「やってない」

「え」


 やってない。


 どういうことだ。今の会話の流れだと秋田くんはゲームをしたことがあるはず。色んなのをやると言ったではないか。なのにやってない? なんだ? もしかしてゲームセンターとか、友達の家で? でもそれならそう言うはずでは?


「……じゃあ、いつ、どこでやってるの」


 会話しているときもソフトから目を話さなかった彼が顔を上げて困惑する私の方を向く。





「波留さんは、前世とか信じる人?」








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