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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
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4話



 今日から授業が始まった。といっても初回は授業の進め方や触りだけなのだが。


 さて、授業が始まるということは昼を学校で食べるということだ。この学校は中学生から食堂を利用できる。殆どの生徒は食堂で昼食を取っているようだ。食堂広いな。



「美味しいね〜」

「うん……デザートもあるみたいだし……プリン美味しい……!」

「そだね……」


 小学校の給食も高級感溢れてたけど、食堂のご飯はそれ以上だな。美味しい。美味しいけど。



 根っからの庶民な私にこの空間は辛い。



 いや、慣れろという話なのだが。これを毎日続けてたら胃にくる。精神的に来る。……そうだ、何日かに一度、弁当を作ってこよう。その方がいい。今度親に相談してみよう。







 昼休みをなんとか過ごし、午後の授業を終えたら放課後だ。生徒会は好きなときに来ていいと言っていたし、まだ一年に任せる仕事はないという。ならば好きに過ごさせてもらおう。


 ということで今日は学校散策をしようと思う。


 とは言っても校内は小学校の頃に探索したし、進級後、先生にも案内されたので特に気になるところはない。なので今回は外だ。中庭と裏庭を取り敢えずまわろう。


 そうと決まればすぐ行動。私は中庭へ向かった。


 中庭は木々が手入れされており、所々にテーブルが置かれていた。ここで昼食を食べることも可能なのだろう。今度美野里ちゃんたちを誘ってみようかな。その場合は食堂ではなく、購買で昼食を買ったほうが良さそうだ。美しく整えられたそれらを写真に収める。うん。綺麗に取れた。



「間切?」


 写真を撮りながら中庭を歩いていると頭上から声がした。そちらへ目を向ければそこには太い木の枝に腰掛けた篠崎が。木登りかな。そうだ、写真撮っておこう。


「何してんの?」

「考え事。あとなんか木に登ってみたかった」

「木登り好きなの?」

「初めてやった。意外とできるもんだな」


 そういや私、木登りってしたことないな。今度してみるか。


「で、登ってから気がついたんだけど」

「ん?」



「俺、高所恐怖症なんだよね」



 怖くて降りられない、と篠崎は続けた。そうか。なんで登ったんだ。


 結局、その後は篠崎をなんとか言いくるめて枝から下りさせた。そんな高くなかったし。枝から下りた彼は地面に膝をついて「怖かった……」と震えていた。私はその様子を写真に収めた。



 篠崎が落ち着いた後、彼と別れてそのまま裏庭へと向かう。




 裏庭は、中庭に比べて自然豊かだった。草だらけ。日当たりもあまりよくなさそう。


「あんまり人が来ないのか」


 裏庭を歩いていると、他と比べて陽のあたる場所に花壇が作られていた。花壇は丁寧に手入れされているようだ。にしても花壇が結構大きい。


「誰が手入れしてるんだろ」


 美化委員会? そんな委員会うちの学校にあったかな。


「私ですよ」


 しゃがみこんで花壇に植えられた草を見ていると後ろから声がした。それに驚いて私はバッと後ろを向く。



「………………」

「こんにちは」

「こんにちは……」


 そこにいたのは柔らかな笑みを携えたイケメン爺だった。この世界はおじいさんもイケメンか。このおじいさんスーツ着てシルクハットに杖とか似合いそう。実際に着てるのはジャージだけど。


 暫くそのお年寄りを観察して、気がつく。なんか見たことあるぞこの人。たしか母親が見ていた会報に載ってた……。そう、そうだ。理事長だ。




 なんで理事長が花壇の手入れをしているんだろうか。



 両手に軍手をつけた理事長は私の隣に来ると雑草と思しき草を抜き始めた。



「理事長がこの花壇を?」

「えぇ。昔から土いじりが好きだったので。楽しいですよ。やってみます?」

「やります」


 土いじりなんてしたことがないのでやってみたい。

 私が答えると理事長は軍手を渡してきた。おぉ、小さい。子供用だろうか。持ち歩いてるのかな。


「それをつけて、雑草を抜いてくれるかい?」

「わかりました」


 指示通り草を抜く。ふむ。ちゃんと根っこまで取れてるかな。







 その後、無心で草を取り続け、水をやった。地味な作業楽しい。気がついたら結構時間が経っていたので、理事長に挨拶をしてその場を離れた。理事長は結構花壇いじりをしているらしい。またおいでと言われてしまった。



 暫く歩いていると、どれだけ放置していたんだろう、というくらい植物が生い茂る場所があった。その奥には何やら建物らしき人工物。あれは何だろうか。気になるけどこの草むらの中に入る勇気はない。


 取り敢えず今日のところは入らないでおこう、とまた足を進めた。あれについては今度理事長にでも聞いてみよう。


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