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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
31/232

さんじゅう 2年学園祭 2

「買い出しだー!」

「おー」


 本格的に劇の準備に取り掛かり始めた今日この頃。演劇部で使うボンドなどの消耗品が切れたらしいので補充のために茜さんと買い出しに行くことになった。


「外出届けだしたよね?」

「さっき出しました」

「お金は持ったし、よし! レッツゴー!」

「ごー」


 茜さんと手をつなぎ、ホームセンターへ向かう。何故演劇部でない私が買い出しに連れて行かれるんだろうか。


「本当は買い出しを先生に任せてもいいんだけどねー」


 楽しそうにつないだ手をブンブン振る茜さんが話を切り出す。

 金持ちというと自分では買い物には行かないイメージがある。行ったとしても高級そうなお店。ホームセンターとかには行かないイメージだ。


「なんか買い出しってワクワクするし楽しいのよ!」

「そうなんですか」

「そうなの!」

 茜さんは本当に楽しそうである。こちらまで楽しくなってくる。うん。楽しそうならいいんだ。さっきから振り回されている腕がもげそうなのも気にならないよ。痛いけど。そのうち体ごと振り回されそうだけど。





「よしっ、これで頼まれたのは全部だね」

「茜さん」

「あとは戻るだけだし、頑張ろうね」

「茜さん」

「はい、手繋ごう」

「茜さん」

「なぁに?」

「何故荷物を2袋とも茜さんが持ってるんですか。私にもひと袋ください」


「だって重いよ!? 間切ちゃん折れちゃうよ!?」


 茜さんは私をなんだと思っているんだろうか。もやし?


「私そんなひ弱じゃないですから。ひとつください」

「無理そうだったら言うんだよ?」

 そういって茜さんは私に軽い方の袋をくれた。軽い。

「じゃ、帰りましょう」

「重いと思ったら言ってね」

 とても軽いです。これを重いと思うのは相当なもやしっ子だと思う。

 行きと同じように手を繋いで学校へと向かう。今度は振り回されなかった。




 演劇部の部室で私達を出迎えたのは死んだ顔の辻村と木野村、苦笑いする有村さんに、妙にやり遂げた顔をしている演劇部員の皆さん。そして、長い髪をなびかせ、ドレス姿で仁王立ちをする赤坂だった。



「………………………………はいチーズ」


 思わず写真を撮ってしまった。


 何故木野村が部室にいるのかとか、私達がいない間に何があったのかとか、聞きたいことはあるが、取り敢えず何で赤坂はそんな自信満々なんだ。


「こういうのは恥ずかしがったら負けだと思った」

「そうか」

「それに似合うしな! 問題ない!」

 確かに、まだ幼いからよく似合っているし、とくに問題ないだろう。髪はエクステだろうか。うん。にあってるよ。美少年って何でも似合うね。

 満足したらしい赤坂が着替えに行ったのを見送った後、買ってきたものを有村さんに渡しに行けば、有村さんは何かを探すように箱を漁っていた。なんだ?

 

「有村さん? どうしました?」

「確かここに……あ、あったあった!」

「?」

「これ間切ちゃんにあげるよ」

 有村さんがくれたのは紙切れだった。






「兄さんこれ」

「何それ」

 今日の作業を終え、家に帰った私は兄に有村さんがくれた紙を見せる。

「それっ……!」

「貰った」

「なんでこんなもの残ってるんだ!」

 兄が顔を真っ赤に染め上げて私の手からソレを取り上げる。


 有村さんがくれたのは兄のドレス姿の写った写真だった。とても可愛かった。


「似合ってると思うよ」

「全く嬉しくない……」

 兄は手に握った写真を握り潰した。



 因みに王子の格好をした一宮さんとドレス姿の兄のツーショット写真も貰ってたりする。これは一宮さんが家に来たときに見せよう。


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