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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
高校生編
221/232

小話

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今回はただの小話です。

「転生するならファンタジーとかでも良かったよね」


 放課後の教室で突然秋田くんがそんなことを言い出した。彼の目線は手元の本に落とされたまま。


「突然どうしたの」

「いや、ここは前の世界とほぼ一緒でしょ? よくある転生モノはもっとぶっとんでるからさ」

「そうだね」


 基本的に転生モノならファンタジーだ。勿論それ以外もあるだろうが、有名所はファンタジーな乙女ゲームとかに転生している。確かに非現実的なそれに憧れる部分もあることにはある。しかし。


「生活水準が明らかに下がるけど大丈夫?」

「……なんて?」

「生活水準。下がるよね」

「せいかつすいじゅん……」


 そう、生活水準。トイレや風呂、食事にゲームの類。ファンタジー世界ではそれらすべてが現実とは変わってくる。大体の異世界はファンタジーで、文化的には中世ヨーロッパを模しているものが多いようだからきっと生活水準は今より下がるだろう。だからこそ主人公が現実世界の知識をフル活用して異世界生活を満喫する話なんかが出来上がるのだ。


 その点についてはここはなんの不安もない。ほぼほぼ変わらないから。携帯がガラパゴスだったり、ゲーム機が少し古い型ではあるけれどそれらも生きているうちに前世と似たようなものになるだろう。というか、なってきている。


「お話として見るぶんには楽しいけどね、異世界転生」

「現実的すぎる……夢見ようよ」

「現実で異世界転生しちゃってるからね」


 夢を見るどころの話じゃない。


「まあでも確かに、ゲームないのはやだな」

「私も美味しいもの食べられないのは嫌だな」


 それに残念ながら私は現代技術に甘やかされて生きていた人間なので突然異世界に放り出されても生き延びられるような胆力も技術も知識もない。転生先、ここで良かった。現代風乙女ゲーム万歳。これでゲームの主要キャラが私の知らないところでフラグを立てたり折ったり競ったりくっついたり失恋したりしてくれれば最高だった。


「でも俺魔法とか使ってみたかったなぁ」

「それはまあ、わかる」

「だよね〜」


 現代風かつ魔法が使える世界とかあればいいけど、魔法という便利なものがあったら科学技術は発展しなさそうだ。ゲームとか移動手段とかその他諸々はなさそう。それに法整備なんかも大変そうだ。少なくとも今のこの国のように平和ボケはしていられないだろう。


「私は、突然争いに巻き込まれたらすぐ死んでしまう自信がある」

「自信満々に情けないこと言ってる……」


 だって事実。喧嘩もろくにしたことないし。私は平和に、穏やかに生きていたい。長生きしたい。


「命をかけて戦うのは嫌だな……」

「確かに。俺もいや。平和に生きたい。今世の目標長生きだし」

「老衰したい」

「そのためにも平和であってほしい」

「本当にね」


 平和が一番だ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 明けましておめでとうございます。 波瑠さんが魔法で戦闘するなら、相手が口上を述べ様ようとしてるときに有無を言わずに先制攻撃してそうですね。 盗賊団「ヤイてめぇら、命が惜しかった…」 波瑠…
[一言] 本当に小話だった… しかし、実はこれが後々の物語に影響する伏線なのだった! なんて
[一言] 魔法があっても中世ヨーロッパ風世界なんて大抵上下水道が無いから毎日風呂に入れないどころかカルキ臭がする水道水すら飲めずぼっとん便所すらなくて至るところでう○ちが舞ってる世界なんて行きたくない…
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