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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
高校生編
198/232

十六話

「波留さんってフラグ回収早いよね」

「君に言われたくない」


 ある日の昼休み、早苗ちゃんたちは部活の集まりがあるというので秋田くんと二人で昼ごはんを食べながらのんびりとしていたら秋田くんがそんなことを言ってきた。フラグ回収とはつい先日のロッカーでのことだろう。思い出したくない。というか、フラグ回収の速さなら秋田くんも負けてないと思う。


「次は道連れにしてやる……」

「恨みがこもってるね!」

「身長のこと笑いやがって……」

「あはは」

「……」

「チョコあげるから機嫌直して?」

「……もらう」


 差し出されたチョコは食後に食べることにして、テーブルに置く。


「そういえばそろそろテストだねぇ」

「そうだね。勉強してる?」

「中学上がってからは日頃から勉強するようにしてるからそこまで問題はないよ。波留さんは?」

「同じく。やっぱり英語と社会が苦手だからそれはやらないとなぁ」

「英語、文法はわかるけど単語がわからない」

「それな」

「なぜ英語は表音文字なのか。表意文字になって欲しい」

「カタカナと平仮名も表音文字だけどね」

「そうだけどさぁ」


 まぁでも英単語も前世のときとは結構違ってたりするから、曲者である。覚え直しだ。


 そんなくだらない話をしながら二人でご飯を食べていく。今日は弟と兄が作った弁当である。美味しい。美味しいけど私の苦手な食べ物を積極的に入れてくるあたりに「好き嫌いをなくせ」という無言の圧を感じる。食べるけど。


「波留さん夏休みになったら遊ぼうね」

「……あぁ、そうだね。カラオケとか?」

「……そうだねぇ」

「……なんだよ」

「んーん。何でもないよ」


 曖昧に笑う彼はきっと何かを誤魔化してるんだろう。聞いたところでどうにもならないだろうから聞かないが。


 空になったお弁当箱を包む。苦手なものもちゃんと食べれたので褒めてほしいところだ。


「波留さん」

「ん?」

「平和だね」

「ついこの間ちょっとした騒動の渦中にぶっこまれた私にそれをいうか」


 私がそう言えば秋田くんは楽しそうに笑った。


 あの騒動で何か変わったかといえば、何も変わっていない。因みにあのことについて槇原は「まぁ全員から好かれるのは無理だからね」と言って笑っていた。


 人間関係は難しいな、などと考えながら秋田くんからもらったチョコを口に含む。美味しい。

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