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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
高校生編
186/232

六話


「お久しぶりです波留先輩! 秋田先輩!」

「久しぶり、山内くん」

「久しぶり〜」


 秋田くんと離に行くと山内くんに出迎えられた。彼とは学年が違うので中々会う機会がない。いや、あんまり会わなくて良いのだけれど。


 まだ幾分私よりも低い位置にある頭をなでてあげると彼は嬉しそうにはにかんだ。可愛い。後輩かわいい。


「お! 秋田、間切来たか!」

「緑茶と紅茶どっちが良いですか?」

「緑茶かな」

「俺も〜」

「マサ〜、お茶立てて」

「道具がないよ」

「じゃぁ普通の緑茶用意しますね」


 室内に上がらせてもらい、和室に通される。


「そういえば、今って銀杏会は何人いるの?」

「中学生以上は6人です。小学生は4人ですね」


 私の隣に座った山内くんが秋田くんの質問に答える。中学生以上が6人、ということは私が知っている人だけでも5人いるから、あとは中学1年生に一人か。圭の学年と1つ上にはいなかったはずだし。


「俺達が来るときは他の人あんまりいないよね」

「あぁ、そういう日を選んで誘わせてもらってるんです。ここに人を招いているのはあまり周囲にバレたくないので」

 昔相良先輩がここに来ただけで校内新聞に載せられてたしなぁ。

 秋田くんと山内くんの会話を聞きながらのんびりしているとお茶菓子などを用意していた三人が部屋に入ってきた。


「今日は和菓子です!」

「練切りだ。可愛い」


 木野村さんが持ってきたのは練切りだった。桜の形をしたそれは見事なもので、思わず感嘆の声を漏らす。やはりプロが作ると素晴らしいものが出来上がる。食べるのがもったいないな。


「波留さんのは桜なんだ、俺のはうぐいす」

「かわいい」

「俺は今からこれを食べるわけだけど」

「おう」


「可愛くて食べられない……!!」



 秋田くんは顔のついたお菓子は食べられない人ですか。なるほど。


「仕方ない。私がひと思いにやってやろう」

「何する気!? うぐいすに何する気!?」

「真っ二つ」

「波留さんに優しさはないの!?」

 どうせ食べるというのに。練切りはあまり賞味期限も長くないんだぞ。腐らせる前に食べてやるのが礼儀というものだ。


「仲良いねぇ」

「そうですねぇ」

「な〜。それにしてもやっぱここの練切り美味いな」


 同級生三人がなんか慈愛に満ちた眼差しでこっちを見ている。まるで孫を見るような目だ。おかしい。精神年齢的にはこちらが上のはずなのに。精神だけで言えばこちらはもうすぐ40だぞ。


「そういえば今日はなんで俺達誘われたの?」

 うぐいすを頭上に掲げながら秋田くんがそんなことを四人に問う。そんなにいやか。そんなにうぐいすを真っ二つにされたくないのか。


「遊ぼーぜ!」


 そんなことだろうと思ったよ。


 赤坂の眩しい笑顔に負けてその日は皆でカードゲームで遊びまくった。秋田くんが連勝した。







「っと……もうすぐ完全下校か。俺はそろそろ帰るかなぁ」

「私も」

「もうすぐ俺の親が迎えに来るから送るぞ? 車で」


 時計を見上げ、秋田くんと二人でそろそろ帰るかと腰を上げると赤坂がそんな提案をしてきた。


「俺徒歩だしいいよ」

「私も大丈夫だよ」


 玄関で靴を履き、荷物を持つ。最近は日が長くなったからまだ外は明るい。一人でも帰れるな。


「……ん? そういや赤坂くん車なの?」

 徒歩圏内だよね? と玄関口で秋田くんが赤坂に聞いた。まぁ、徒歩圏内の人間は普通徒歩で帰るわな。


「ここにいる4人は皆車だな。俺とマサ、哉太は何回か誘拐されかけてるし、木野村も危ない目に遭ってるから」

「うわ……まじか」

「君たちも大変だね」

 そういや初等部1年の頃辻村たちが誘拐されているのを見たし、山内くんが車に乗せられそうになってるのも見たな。木野村も危ない目に遭ってるのか。


 曖昧に笑う赤坂たちと別れて秋田くんと校内を歩く。



「………………普通に遊んじゃったよ」

「……楽しかったし、いいんじゃないかな……」

「そだね……」


 バレなければ大丈夫だと信じてる。

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