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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
169/232

90話 バレンタイン2




「……なにこれ」

「うわぁ……」


「いらっしゃい二人とも。そのチョコの山は私のです」


 入り口から一歩も動かずに二人してドン引きしていると椅子に座った東雲先輩がチョコを食べながら声をかけてきてくれる。

 これ、東雲先輩のかぁ。


「もらったんですか?」

「えぇ。女子と…………男子から」

「モテモテですね」

「でしょう。流石私」

 自信満々な東雲先輩の手には相変わらずチョコ。というか。


「この量を全て食べるおつもりですか」

「なるべく。私のために用意されたものですから」

「そうですか」


 室内に入り、チョコを取り出しながら東雲先輩に近づく。先輩の机には既にいくつかの空き箱が置いてあった。食べ過ぎではなかろうか。


「こちらもチョコで申し訳ないのですが、どうぞ」

「あら、ありがとう。嬉しいわ」

「で、こっちが圭と兄からです。二人とも今日は用事があって来れませんので私が持ってきました」

 2つ、私のとは違う箱を取り出して先輩に献上する。受け取った東雲先輩は嬉しそうに笑った。


「ありがとう。じゃあ間切さん、こちらも頼んでいいかしら。二人に渡しておいてもらえる?」

「わかりました」

 受け取った高そうな箱を鞄に大事に仕舞う。

「篠崎くんと間切さんにもね。はい」

「「ありがとうございます」」


「篠崎くんからのお返しは3倍でいいわよ」

「えっ」


 チョコを受け取った篠崎は続いて告げられた言葉に固まってしまう。私はさきほど渡したもので良かったらしい。三倍か……。


「冗談よ。お返しはなくても良いの。私があげたかっただけだから」

「いや、何かしら用意しておきます……けど、期待はしないでください」

「期待するわね」

「しないでください」

 くすくすと笑う東雲先輩が心底楽しそうなので何も言うまい。


 あとから来た他のメンバーにもチョコをあげ、ついでに貰い、その日は特にやることもないので解散となった。私はその足で東雲先輩と共に他人の目を少し気にしながら離れへと向かう。


「皆いますー?」

「お邪魔します」


 離れに入り、東雲先輩の後についていくとリビングには木野村、辻村、赤坂、山内くんが揃っていた。


「他の子は?」

「習い事とかで皆帰りましたよ」

 皆忙しいんだな。

「間切だ!!」

「波留ちゃん!」

「波留先輩こんにちは」

「こんにちは。相変わらずチョコの量凄いね」

 男子三人は言わずもがな。木野村も相当な量をもらっているようだ。チョコの山が至るところにある。

「波留ちゃん、これ!」

「ありがとう。私からも」


 用意しておいたチョコを木野村からのと交換する。ふむ。高そう……というか、海外のかこれ。私でも知ってるやつだ。値段が気になるが、多分、気にしたら駄目だ。食べられなくなる。

 私からのチョコを大切そうに持った木野村が嬉しそうに、幸せそうに笑う。それを見ていると視線に気がついた彼女はハッとして真顔になろうとした。まぁ、できていないんだが。


「……実は早苗ちゃんともチョコを交換したんです」

「そっか。良かったね」

「はいっ!」

 どうやら早苗ちゃんと木野村は仲良くやっているらしい。良かったよかった。


「辻村くんたちにもこれ」

「ありがとう」

「おぉ! ありがとう間切!」

「ありがとうございます」

 三人にもチョコを渡す。ふむ。喜んでくれているようで何より。




 チョコを渡してしまえば用事は終わりなので。暗くなる前にその日はそこを後にした。







 ホワイトデーの時、篠崎はお返しのお菓子と、ついでに肩もみもしてくれた。絶妙な力加減だったから、またお願いしようと思う。赤坂たちからはこれまた高級感あふれるお菓子を頂いた。

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