85話 修学旅行4
修学旅行最終日、私は一人で空を見上げていた。
また迷子である。
そろそろ迷子紐をつけられても文句は言えないと自分でも思い始めた。そういえば昔無表情の兄にがっしり肩を掴まれて「次迷子になったら迷子紐な」って言われたっけ……。兄よ、私はたぶん迷子紐が必要な人間だよ……もしくはGPS。
そんな現実逃避をしたところで私が今現在ぼっちであることは変わらない。取り敢えず連絡を取って、そこから考えよう。
前回は秋田くんにかけたので今回は美野里ちゃんに電話をかける。
『波留ちゃん!?』
「ごめんなさい逸れました」
『大丈夫! 想定の範囲内だよ!』
迷子を想定される中学3年生……ヤバイな。わかってたけど。
「今みんなどこ?」
『お土産買ってるとこ。波留ちゃんどうする? こっちこれる?』
「すぐそっち行くよ」
『わかった。早苗ちゃんがすごく迷ってるから予定よりも長くいると思う。移動するとき連絡するね』
「重ね重ね申し訳ない」
『いいってことよー』
じゃあまた、と言って電話を切る。さてと、私も移動……。
移動しようと振り返ったら辻村と目があった。
「間切さん迷子?」
「開口一番酷くないですか」
「いや、間切さんだから……一人だし」
私の側によってきた辻村は真顔でそんなことを言う。反論できないのが辛いところだ。
「……君こそ一人じゃん……」
「班の子には言ってあるよ。姉さんたちへのお土産選びたくて」
時間かかるから、と付け足す辻村。お姉さんたちへの土産は慎重に選びたいんですね。シスコンだもんね。
「間切さん班の子と合流できる? 大丈夫?」
「たぶん大丈夫」
「すごく不安になる返事」
「……」
私はよく逸れるけど、方向音痴ではないから大丈夫。たぶん。恐らく……。
「あ、そういえば私も兄さんたちへのお土産買ってないや」
「何買うか決まってるの?」
「…………」
決まっているわけがない。というか、わたしにお土産選びのセンスは皆無なのでもういっそ食べ物でもいいかなと。
「間切さん?」
「……取り敢えず皆と合流してから考えるよ……」
「そう……。ちゃんと行ける? 待ち合わせどこにしたの?」
「ここ」
地図を広げて皆がいるはずの場所を示す。さて、行くとするかな。
「あ、間切さん」
じゃあまたね、と言って歩き出した矢先辻村に呼び止められた。一体なんだというのか。
「逆方向だよ」
どうやら自分は方向音痴でもあったらしい。辻村の生温かい視線が辛い。




