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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
161/232

82話 修学旅行



 夏休みが終わるとすぐに修学旅行が始まる。


 行きのバスや新幹線の中で騒いだ子どもたちの体力はまだ底を知らないらしい。現地のホテルに着き、初日の日程を終えてあとは寝るだけだという今もまだそれぞれ遊んでいる。

 かく言う私も早苗ちゃんと美野里ちゃんの部屋にお邪魔しているわけだが。


「波留ちゃんは一人部屋かぁ」

「さみしくない……?」

「寂しい」

 せっかくの修学旅行、どうせならみんなと寝るまでワイワイしたいが、仕方ない。ギリギリまで二人の部屋にお邪魔することにした。


「明日の朝ごはんなんだろ」

「バイキング形式じゃないかな」

「美味しいといいね」

 三人でそんな話をしながら時間を過ごす。トランプでもしようかと思ったがもうすぐ就寝時間なので今日はお喋りに徹することにしたらしい。


「そういえば大浴場凄かったね! 外の景色とか!」

「私視力悪くてあんまり見えなかったけど……広かったね」

「そうなんだ」

「そういえば波留ちゃんは大浴場いなかったね?」

「色々あってね」

「そっかぁ。凄かったよー。もう夜景が綺麗でね! お湯がすごく熱かったけど」

「あれは熱かったね……」


 そんなに熱かったのか。私は部屋にあるシャワーを浴びたのでわからないが、大浴場いいな。みんなでワイワイ騒ぎながらお風呂に入るのもこういった行事の楽しいところだと思う。


「っと……そろそろ点呼が来る時間だ。私部屋戻るね」

「おやすみー! また明日ね!」

「おやすみなさい」

「おやすみ」


 静かに廊下に出て部屋にもどる。廊下にはもう誰もいなかった。皆部屋に戻ったのだろう。


 一人部屋……とはいってもツインであり、ベッドは2つある自分の部屋に戻って電気をつける。先生が来る前にと先程まで着ていた服を脱いでパジャマに着替える。そして自分の腹部に残る傷跡に目をやった。



 私が一人部屋である理由については建て前上、人数の関係ということになっている。美野里ちゃんたちにもそう伝えてはある。


 しかし実際のところは違う。この傷跡のせいだ。そこそこの深さまで達した傷はどうしても跡が残る。私のだって例外ではない。火傷のようにエグくはないが、あまり人様に見せるものでもない。見せたくもない。だから私は事前に教師に相談して一人部屋にしてもらった。大浴場に行かないのもこれが理由だ。


 勿論、気にしなければいいだけの話だが……気にしてしまうものは仕方ない。教師がキチンと対応してくれてよかった。


 着替えて明日の用意を終えた頃にきた教師の点呼に答えてベッドに潜る。一人は結構寂しい。


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