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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
151/232

72話 3年体育祭


 新学年になって最初のイベントといえば体育祭である。今年は生憎の曇り空。湿度は高いが、まぁ、日が照りつけていないだけましだろう。どちらにせよ私の気力はどん底だが。


「雨降りそうだね〜」

「そだね……」

「……じめじめする……」

「雨降ったら中止になるかな……?」

 応援席で空を見ながらそんな話をする。たしかに雨が振りそうな雲だ。雨が降ったら中止か、もしくは延期だろうな。


「なんで3人ともそんなテンション低いの?」


 4人の中で唯一元気な美野里ちゃんが首を傾げながら聞いてきた。


「湿度が……」

「じめじめするぅ……」

「運動は苦手……」


 精神年齢がすでに中学生ではない私と秋田くん、そして運動が苦手な早苗ちゃんのテンションは中々に低い。わかるよ。運動苦手な子にとって体育祭は地獄だ。


「早苗ちゃん今年は何に出るんだっけ?」

「……借り物競争と、二人三脚」

「あ~。たしかペアが……」

「……優勝を目指す、とてもやる気に満ちあふれた女の子デス……」


 遠い目をして答える早苗ちゃんは今にも灰になりそうだ。二人三脚のペアは身長がなるべく近い子と組まされるからなぁ。

 のんびり話していれば最初の競技が始まった。さて、応援しなければ。あと写真撮ろう。東雲先輩に赤坂たちの写真をまた頼まれているし。








「さ、早苗ちゃん……」

 えぐえぐと泣きながら私にしがみつく土まみれの早苗ちゃんに声をかけるが返答はない。

 先程、早苗ちゃんは二人三脚で転んだ。それはもう派手に。顔面からいった。その後すぐ立ち上がって追い上げたが、結果は2位。こちらに戻ってきたときの早苗ちゃんは身体精神ともにボロボロだった。


「こわかった………」

 私にしがみついたまま、ポツリと零される言葉に同情する。体育祭ガチ勢は怖い。まぁ。早苗ちゃんのペアの子は2位でもまぁ満足したらしく、笑顔で去っていってくれたけど。その対応を見て早苗ちゃんはやっと安心したらしい。私に抱きついて泣き出した。


「ほ、本田さん、保健室行こう? ね?」

「そうだよ! 早苗ちゃん怪我してるじゃない! 保健室いこ?!」

「……よしよし」

「……」


 転んで怪我をした早苗ちゃんはどうやら身体的な怪我よりも心を癒やすことを優先したらしい。早苗ちゃんがこんな風になるのは珍しいので取り敢えず頭を撫でる。しかしこのまま怪我を放置するのも良くない。幸い私達3人は午前の部最後のリレーまで出番はないので、早苗ちゃんを保健室に連れて行くとしよう。


 早苗ちゃんを軽く引き離して、よいせと抱き上げる。早苗ちゃんくらいならまだいけるな。


「もう波留ちゃんと結婚するぅ……」

「落ち着こうね。ほら、危ないから首に手ぇ回して」

 そう言えば大人しく手が回される。さて、行くか。




「……普通、あれやるのは秋田くんじゃない?」

「無茶言わないでくれる!? セクハラで訴えられるよ!」


 一緒に保健室へ向かっていた二人がそんなことを言っていたが、まぁ放置していいだろう。それにしても早苗ちゃん軽いな。

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