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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
147/232

68話


 声のした方へ振り返ればそこには制服を着た、戸柄先輩が立っていた。


 暗くて誰もいない夜道。


 冷たい空気。


 親しい人に付き纏う人。




 あの夜を連想させるものばかりだ。



「……こんばんは」


 挨拶を返せば戸柄先輩は優しく微笑んだ。


 彼女の手には鞄以外握られていない。その事実に静かに息をつく。


「こんな時間に、どうかなさいましたか」

「予備校の帰りなの」

「そうなんですか……」

「間切くんは大丈夫?」

「私からはなんとも」

「……貴女は、お兄さんと仲が良いわよね」


 なんの脈絡もない言葉に驚き、何も言葉を返せなかった。いきなりなんだというのか。


「世間一般から見たら仲の良い兄妹でしょうね」

「えぇ。間切くんは貴女を本当に大事にしてるわ」


 あ。




「羨ましいくらい」




 目が。




 痛い。

 違う。あの男じゃない。傷はない。あの男は、この世にはいない。


 上がる呼吸を抑えながら、痛む気がする腹部を抑えながら、真っ直ぐその人を見据える。



「本当に羨ましくて、妬ましい」




 その人が1歩近づいてくる。


 私は1歩下がる。




 苦しい。







「姉さん」



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