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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
146/232

67話


 兄の体調が回復しない。


 倉庫に閉じ込められた日、兄は痛む胃を抱えて無理やり外に出たらしい。すぐまた倒れてしまった。それほど心配をかけたということだろう、反省。


「梓、大丈夫?」

「熱はありません。ただ、食事を受け付けないので、安静にしてます」

「相変わらず顔色悪いんですよ」

 恐らくストレスのせいだろう。


 朝早い通学路、圭と一宮さんと三人で歩く。兄が休む間、なるべく三人で登下校するよう兄に言われてしまった。


「早く良くなるといいけど……」

「あの人の方は?」

「……怖い」

 俯いてそう答える一宮さんの顔は真っ青だ。相当怖いらしい。


 因みに、突如戸柄先輩が私のもとを訪れなくなった理由は兄が止めたかららしい。そしてそのぶんも兄が負担。兄のストレスがマッハ。


「いい、二人とも。あの人が接触してきたら全力で逃げるんだよ」

「珍獣扱いですねっ」

「猛獣かな」


 まぁ扱いはともかく、あの人から逃げるのは賛成だ。この間までは餌付けですんだけど、次は何してくるかわからないからな。用心しておくべきだろう。


 今日は部活があるから遅くなるというので、帰りは圭と二人で帰る約束をしてから昇降口で別れる。二人とも、何事もなければいいが。










 その日の放課後、私は最近日が沈むのが早くなったな、などと考えながら習い事からの帰り道を歩く。まだそこまで遅くない時間だというのに外は暗く、家へと進む足が些か速くなる。早く帰りたい。


 夜は、特に冬の夜が苦手だ。


 どうしてもあの夜を思い出すから、なるべく外には出たくない。



 自宅が見えてきて、少しホッとする。早く、家に入ろう。今日は母が兄の看病のために仕事を休んでいるから、夕飯は母が作ってくれている筈。




「こんばんは」




 あと少しで家に着くという時に、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。







 あぁ、最悪だ。



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