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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
125/232

46話


 今日は生徒会もなく、早めに家に帰れたので饅頭でも作ろうと思う。なんとなく作りたくなった。こし餡余ってるし。


 まだ家には誰もいない。兄は生徒会長として働いてるし、圭は少し遅くなると言っていた。

 帰りに買ってきた芋を摩り下ろし、上白糖などの材料と混ぜて捏ねる。……そうだ今日はうさぎの饅頭にしよう。




「ただいまー!」


 生地がいい感じになってきたところで圭が帰宅した。あの子の声はよく通る。


「お姉ちゃーん!」

「おかえり」

「ただいま! あのね!」

 玄関からそのまま来たんであろう圭はとびきりの笑顔を浮かべていた。何か良いことでもあったのだろうか。


「辻村先輩連れてきた!」


 弟よ。そういうことは事前に言うんだ。もてなす準備が何もできていない。っていうか饅頭作り始めちゃったよ。どうすんのこれ。

 私がいきなりの出来事に固まっていると圭の後から辻村が現れた。本当に連れてきてた。


「お邪魔します」

「いらっしゃい」

「お姉ちゃんお饅頭作ってるの?」

「そだよ」

「お饅頭って作れるんだ……」

 キッチンに入って目を輝かせる圭の隣で辻村が出来上がっている生地をまじまじと見ていた。


「これ、どうやって作ってるの?」

「材料を混ぜる」

「それだけ?」

「それだけ」

 特殊なことは何もない。

 私の説明を聞いた辻村はまた生地をじっと見つめ始めた。



「…………まだ材料あるけど作ってみる?」

「作る!」

「……いいの?」

「いいよ」

 二人がパアッと顔を輝かせた。そうだね。圭も饅頭作ったことないもんね。

 二人が手を洗いに行っている間に材料を用意する。……計量もやらせるべきだろうか、とチラリと時計を見ればまだ時間はあった。やらせてみるか。


 戻ってきた辻村に兄のエプロンを貸し、まず計量から指示する。二人は真剣な顔で計っていた。



「計量したら混ぜます。手で混ぜると痒くなるのでヘラで混ぜてね」

 二人にヘラを渡す。

「あっ、意外と重い!」

「そりゃあ粘り気のある芋使ってますから」

「これ……いつまで混ぜるの……?」

 既に腕がプルプルしている辻村が聞いてくる。……いつまで……。


「ある程度固まるまで」

「お姉ちゃんテキトーすぎるよー」

「こんくらい」

 先程自分で用意したものを見せる。

「え、結構固まってない? それ」

「すぐこんな感じになるから。頑張れ」

「腕疲れてきた……」

 早いよ。

 しばらく混ぜ続けると二人の生地も良い感じに固まってきたので作業を中断させる。辻村は少し疲れていた。普段はやらないだろうからなぁ。圭? 圭はなんだかんだ元気。


「次は生地を丸めます。生地取ってあんこ乗せて、閉じて、楕円形に形を整えて……こんな感じ。で、出来たやつには食用色素を溶かしたこれと筆を使って耳描けば……はいウサギ」

 説明しながら出来上がったものを見せる。ここからは簡単だし体力も使わない。二人も私が言ったように作業し始めた。ここからは私も一緒にやる。


「間切さんはよくお菓子作るの?」

「気が向いたらね」

「圭くんも?」

「僕はあんまりやらないです! 兄はよく作ってますけど」

「兄さんは洋菓子をよく作るよ」

 マフィンとか。兄の作ったお菓子はどれも美味しい。

「でも圭くんもお夕飯とかは作るんだよね?」

「作りますよ。うちは平日は基本僕達兄弟が夕飯作って、休日は親が作ってくれます! 親の作るご飯美味しいんですよ!」

 平日も親が早めに帰ってくる日なんかは親が作ってくれたりするけどね。あと朝ごはんは母か父が作る。


「凄いなぁ」

「辻村先輩の家は違うんですか?」

「僕達は基本作らないかな。親とかが作ってくれるよ」

 その親"とか"にはやはりお手伝いさんとかが含まれるんだろうか。

「お姉ちゃんうちはなんで自分たちで作るの?」

「将来自立したときに必要になるだろうし、人件費がかからない。あと単純に私と兄は趣味で」

「なるほどー。僕も料理好き! 今度パエリア作りたい」

「たしかそれ用の鍋がどっかにあったね」

「今度作ろー」

「趣味……」

「趣味だよ。楽しい」

「確かに。料理は楽しいね」

 でしょう。まぁ人によるんだけど。私は昔から料理が好きだし。

 話しながらやっているともう生地が無かった。終わったか。二人はまだ作ってるし、先に蒸し鍋の準備しておこうかな。あまり使わないから上の方にしまってあるんだよな。作り始める前に用意しておくべきだった。

 手を洗って、蒸し鍋が仕舞ってある棚へと移動する。あったあっ………………届かない。


 そういえば以前これを使ったときは兄が取ってくれたな……その前は父が。そうか……私の身長では届かないのか……悲しい。

 非情な現実に悲しんでいると後から手が伸びて鍋を取ってくれた。


「これ?」

「そうそれ。ありがとう」


 辻村から鍋を受け取り、セットする。その頃には二人ももう作業を終えていたのでそれを鍋に並べていく。うん。全部は入らない。2回に分けよう。この大きさと量なら10分くらいかな。


「蒸します」

「蒸し鍋ってこんななんだ」

「そうだよ。しばらく放置」

 タイマーをつけて、置いておく。さて、待ってる間はどうするかな。洗い物と……。



「ただいまー」

「ただいま」


 一宮さんと兄が帰宅したようだ。予想よりも早かったな。

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