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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
115/232

38話



 数日後の放課後、私は部室棟へ来ていた。今日はこのあと早苗ちゃんと手芸用品を買いに行く予定なのだ。早苗ちゃんが少し部室に寄りたいというから着いてきた。少し時間がかかるそうなのでそのへんをフラフラすることにした。部室棟は初めて来た。部活動に所属していないと来る機会はめったにないからなぁ。


 フラフラ歩いていると「新聞部」と書かれた部屋を見つけた。ここが新聞部の部室か。ここであの記事を作成していたんだろうか。

 なんとなくボーッとそれを眺める。中には基本的に部員しか入れない。




「あれ? 1年生がいる」

「……」


 ボーッしていた私の耳に届いたのは少し高めの声。声の主を見遣れば、制服からして中等部3年の女生徒だとわかった。


「中入りたいの?」

「……はい」

 中には入りたいな。

「そっかそっか。今日部活ないから鍵しまってるんだよね。今開けるよー」

 女生徒はそう言って鍵を使い、新聞部の部室を開けた。新聞部の人だったか。

「? 入らないの? 入っておいでよ」

「お邪魔します」

 お言葉に甘えて中に入る。部室は結構こじんまりとしていて、壁に、というか本棚にはギッシリとファイルが詰められていた。そして何台かのパソコンが机の上に置かれている。


「新聞部って部員数結構多くてさ。しかも殆どが幽霊部員だから名前わかんないんだよね。名前は?」

「波留です。先輩、このパソコンは触っても平気ですか」

「いいよー。そこのパソコンは共有してるものだから。記事を作るときなんかはそこのを使ってね。いろんなソフトが入ってるから面白いよ」

 部員の許可を取ったのでパソコンを起動させ、そのパソコンの前に座る。先輩は本棚の中から一冊のファイルを手に取っていた。


「先輩も新聞書くんですか?」

「毎月定期的に出してるやつはね。号外は個人が好きに出してるけど、私はやったことないなぁ」

 じゃああの悪意に塗れた阿呆みたいな記事は新聞部の中の誰かがやっていると。個人ということは新聞部全体ではないということか。

 起動できたパソコンにはパスワードなんてなく、すんなりと入れた。これ大丈夫なのか。なんとなく画像フォルダを開き、中を改めていく。そこには四季を思わせる美しい写真が多く収められていた。綺麗。



「綺麗な写真ですね」

「でしょー。新聞書くのに使うんだ。文字だけじゃ味気ないから。気に入ったのがあったら持っていってもいいよ。ただし悪用しないでね」

 新聞部結構ゆるいなぁ。

 ファイルの中には美しい写真が多くある中、雰囲気の違う写真が点在していた。兄の合成写真に使ったであろう写真と、合成後の写真。どうやら赤坂のも合成だったらしい。合成前の写真もあった。他にも合成していたようで、まぁ出てくる出てくる。私は鞄に常備しているUSBメモリをパソコンに取り付け、その画像たちをコピーしていく。


「私は部長が書く記事と写真が好きなんだけどねぇ」

「部長さん、どうかしたんですか?」

「部長、身体弱くて今入院してるの。だからか最近おかしな記事を書く人がいて」

 明らかにあの号外たちですね。それにしても部長が入院とは。大変だな。



「号外は、個人が勝手書いて出しているんですか?」

「今はそうだよ。部長が元気だった時は部長が全部確認してたんだけどねー」

 今は確認無しで載せてるってことね。なるほどなるほど。じゃあ新聞部全体が悪いわけではないのか。まぁよくある話だな。悪いことをした一部の人間が目立ってしまってその組織全体に悪い印象がつく。新聞部も大変だな。


「号外を書いている人って誰なんですか? 結構凄いですよね」

「確か高等部一年の先輩だったと思う。私も詳しいことは知らないんだ。気になるの?」

「少しだけ」

「力になれなくてごめんね。あんな感じの記事が書きたいの?」

「いいえ。ただ気になっただけですよ。あ、先輩、私このあと用事があるので失礼しますね。色々教えてくれてありがとうございました」

「いえいえ。気をつけて帰ってね〜」

 いろいろな事を教えてくれた先輩に礼を述べてから部室をあとにする。さて、USBメモリにコピー写真、どうするかな。






 早苗ちゃんと行った手芸用品店は品揃えが中々充実していて楽しかった。今度早苗ちゃんが編み物を教えてくれるらしいのでなにか作ってみたいな。

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