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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
112/232

35話


 学園祭も無事に終わり、後始末を終えてしまえばまたゆったりとした日常が戻ってきた。


 そんな日の昼休み、私は隣のクラスを覗きに来ていた。早苗ちゃんに会いに来たわけではない。彼女は今、私のクラスで美野里ちゃんと今流行りの少女漫画について語っている。私はついていけなかった。年頃の女子の情熱には心がついていかなかった。そして、同じく話しについて行けなかった秋田くんに誘われ、隣のクラスへ来ている。


「波留さん普段の彼らを知らなさそうだから」

「同じクラスになったことないしなぁ」

「俺もだよ。……あぁ、ほらあそこ」


 教室の後ろの扉からこっそり顔を出し中を伺うと、秋田くんが指差す方には同級生に囲まれる辻村がいた。男子より女子のほうが少し多いかな。

「笑ってるね」

「笑ってるよね。他人と関わるときはずっとあんな感じの微笑みを浮かべてるんだよ」

「へぇ……」

「美しいって評判だよ」

「そうか……」


 美しいと評判の微笑みを浮かべた辻村を二人で眺めているとふと、辻村と視線がかち合った。気づかれた。

 そしてあろうことか辻村は先程までとは違う、花が綻ぶような笑みを浮かべた。その笑顔を見た周りの女子がキャーっと黄色い声を上げる。ふむ。


「美少女がいるよ秋田くん」

「美少"年"だよ波留さん」

 そうだった。


 不審に思われる前に次のクラスへ。たしか赤坂がいるはず。今年は3人ともバラバラのクラスになったと聞いた。


「あれが赤坂くん」

 赤坂も人に囲まれていた。凄いね。赤坂の周りは男子のほうが多いかな。


「なんか穏やかに笑ってるね」

 私が知ってる赤坂はもっとハツラツとしていたが。もっとこう、はしゃいでる犬みたいな……。

「中等部に上がってから大人っぽくなったって噂されてるよ」

「初耳」


 また静かにその場をあとにする。長居すると不審に思われそうだし。というかまた存在に気づかれたら面倒だ。退散退散。



「で、あれが木野村さん」


 秋田くんが示した方を見ると木野村が女子に囲まれて笑っていた。穏やかなお嬢様らしい笑顔で。


「お嬢様がいる」

「お嬢様だよ。因みに木野村さんは高嶺の花と呼ばれ始めてるよ」

「知らなかった」

 高嶺の花かぁ。そういえばこの間生卵を電子レンジで温めたってメールに書いてたな。爆発したんだろうか。

 暫く木野村を観察した後、そっとその場を離れる。





「改めて三人を見てみた感想は?」

 感想、感想か……。


「表情筋疲れそうだよね」

「波留さんはもう少し表情筋使ったほうがいいと思うけどね」

「……」

 そんなに無表情だろうか。

 自分の顔をムニムニ触ってみるがまぁ何かわかるわけではない。普通の顔だ。





「波留ちゃん! 秋田くん! このクール系なキャラとわんこ系なキャラ! どっちがいいと思う!?」

「クール系だよね?」

「わんこでしょ?!」


 クラスに戻った私達を出迎えたのは未だに白熱する漫画トークを繰り広げる二人だった。そして巻き込まれた。もう少し三人を眺めてくるべきだったな。

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