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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
111/232

34話 1年学園祭3




 兄が女子に囲まれている。



「……」

「お兄さんモテモテだね」

「お兄ちゃん凄いなぁ」


 学園祭2日目、兄のクラスに圭と秋田くんと一緒に来ると、兄が女生徒に囲まれていた。今現在も。


 そんな兄はウェイター姿である。因みに耳と尻尾はない。


「波留さん?」

「……兄さん裏方じゃなかったのか?」

「……ウェイター姿だし、表だねぇ」

「私のクレープ……」

「そんな悲しそうな顔しなくても」

「僕のホットケーキ……」

「君たち似た者姉弟だね!」


 案内された席についてしょんぼりしていると兄がこちらに気がついて近づいてくる。


「二人とも、それに秋田くんもいらっしゃい」

「クレープ……」

「ホットケーキ……」

「……なんか、今日も休みがいて……」

 圭と二人でジッと見つめれば兄が視線をそらす。休みの人がいるなら仕方ないか……。


「今度の休みに作ってあげるから」

「やったー」

「わーい!」

 私と圭の頭を撫でてから兄は他のお客に呼ばれて去っていった。次の休日が楽しみである。






「うわ……パフェでっか……」



 秋田くんはパフェ、私はホットケーキ、圭はクレープを頼み、それぞれがテーブルに運ばれてきた。そして、秋田くんのパフェが大きすぎて唖然としている。


「特大なんて頼むから……」

「ここまでとは」

「凄いですね!」




 結局、秋田くんのパフェは三人で分けて食べた。美味かった。





「次どこ行く?」

「圭は何処か行きたい所ある?」

「えっと……ない!」

「俺も行きたいところは昨日まわったしなぁ。あとは……」

 三人でパンフレットを見ながら次に行く場所を決めていく。私も回りたいところは回った。親しくしている人たちのクラスはもう回ったし、あと気になるのは……。


「波留ちゃーん!」

「美野里ちゃんに早苗ちゃん。あれ、ご両親は?」

「さっき別れたの! 今頃二人で回ってるんじゃないかな」

「私も」


 二人がこちらに合流する。圭も二人に挨拶して、5人でまた次回るところを決めることにした。さて、どうしよう。


「ここのクラスは?」

「そこなんだっけ」

「スライム作り」

「お姉ちゃんそこ行こう」

「スライム作りたいのか」

「うん!」


 圭がとてもキラキラ目をしていたのでスライム作りをすることになった。顔を上げて目的のクラスに歩きだそうとすれば、周りの人の視線がほぼ一箇所に集まっているのがわかった。


「?」

「なんだろ」

「パレードかな?」

「こんな校舎のど真ん中でやるか」

 そもそもうちの学園祭にパレードなんてない。

 視線の先が気になってそちらに目を向ければ、中心にいるのは赤坂と美少女。木野村ではない。


「あ、あの子」

「知り合い?」

 私と同じように二人を見ていた美野里ちゃんが小さく声を漏らす。知っているのかと声を掛ければ彼女は口を開く。


「伊野坂結愛。少し離れたところにあるお嬢様学校に通う、赤坂様の従姉妹」

「なんで知ってるの……」

「私の知り合いにその学校に通う子がいるから。有名らしいよ。我が強くって、しかもなんか赤坂様の婚約者だって自分で言ってるらしいの」

「へぇ」

「で、学校では取り巻きに囲まれてるらしいよ」

 どこの学校も似たようなもんなんだなぁ……。



 ふと、視界の端に何やらゴツいカメラを構えた女子が目に入った。高そうなカメラだな。



「お姉ちゃん行こー」

「あ、うん。今行く」


 圭に呼ばれ、先に進んでいた4人を追いかけるように急いでそちらに向かう。振り返り際に見たものは、赤坂と腕を組む女の後ろ姿だった。






 そんなことよりも、スライム作って楽しそうにする圭がすごく可愛かった。天使かな。カメラでその姿を撮っていると、ふと自分のむなポケットに入ったそれに目が行く。が、また直ぐに圭、それから秋田くんたちに目を向ける。弟可愛い。




 結局連絡用の携帯を使用することは一度もなかった。何事もなくてよかった。



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