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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
102/232

25話


「つ……つかれた」



 授業の終わりを報せる鐘が鳴り響いたと同時に私は机に伏せた。


 夏休みも無事終わり、新学期が始まった。新学期からは数学と英語が習熟度別となる。その際は1、2組と3、4組が合同だ。一学期の成績を考慮して組分けされたので私は一番上のクラスになった。私と同じ教室には辻村と秋田くん、篠崎がいる。因みに今やっていたのは数学。


「おつかれ」

「秋田くんお疲れ様」

「授業進むの速いよね〜」


 そう、授業の進行がすこぶる速い。そして応用をぶっこんでくる。いいけど。しかし進むのが速いぶん、それ相応の予習復習をしないといけなくなるのが辛い。ここまで進みが速いとは思わなかった。


「波留さんこのあと生徒会だっけ?」

「おう……」


 新学期、となるともうすぐ学園祭の時期ということになる。学園祭は生徒会が中心となって行うので必然的に生徒会メンバーは忙しくなる。


「今はまだいいけど、当日が近づくにつれてもっと忙しくなるんだろうな……」

「大変だね」

「君もクラス委員だし大変だろ」

 秋田くんはうちのクラスの副委員長だ。

「何事もないといいなぁ」


 本当にな。






 まぁしかし、厄介事というのは向こうから駆け足でやってくるものである。



 掲示板の前には人だかりができていた。そして、その人たちが見ている掲示板には昨日まではなかった一枚の紙。



 掲示板に張り出されたその紙の半分ほどを埋めている写真はうちの家の前だった。そして家の前には男女の姿がある。片方は兄だろう。


「は……?」


 なんでうちの写真があるんだ。意味がわからない。


「副会長の秘密の恋、ね」

「秋田くん」

 いつの間にか隣に来ていた秋田くんを見やる。というか待て。なんだ秘密の恋って。意味がわからない。

「新聞に書いてあるよ。相手は高等部2年の戸柄千依先輩だって」

「それで何故騒ぐ。意味がわからない」

「戸柄先輩は高等部2年の中だと一番金持ちなの。結構有名な人。あと美人」

「へぇ」

「興味なさそうだね〜」

 ないからね。別に関わり合いのある人間ではないし。

 秋田くんと話していると、ふと背後から視線を感じたので振り返る。が、私の後ろにも人が何人もいて誰が私を見ているのかわからない。


「波留さん?」

「なんでもない。……行こう」


 視線はまだ感じる。すごく、不快な視線だ。




「で、あれって事実?」

「ないな」


 人だかりから離れ、教室へと戻る道すがら秋田くんに聞かれた問にきっぱりと答えれば彼は笑った。


「なんで?」

「ここ最近の兄は日が暮れる前に帰ってきている」


 先程見た写真は暗い夜道。たぶん合成写真だろう。なんてことをしてくれているんだか。


「なるほどね。波留さんどうするの?」

「どうもしない」

 とりあえず兄にことの真相を聞いて、それからだな。




 教室の近く、中等部1年の掲示板にも同じ新聞が貼ってあった。恐らく兄の学年の所にもあるのだろう。兄はどうするんだろう。

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