表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅰ ご隠居様の城  作者: 小宮登志子
第2章 後宮候補生
10/37

後宮候補生

 砂金の一件以来、執事さんは、挙動不審になっていた。上機嫌で城内をスキップし、顔を合わせたメイドに笑顔で挨拶。どう見ても正気ではない。そこで、適当に口実を設けて執務室に行き、きいてみた。

「執事さん、ぶっちゃけ、気持ち悪いんですけど……」

「カトリーナさん、あなたのおかげですよ。最近、ご隠居様にいじめられなくなったんです」

 執事さんは延々と1時間近く感動的に喋りまくった。話を簡潔にまとめると、砂金の一件以来、ご隠居様が、なぜか分からないがご機嫌で、その結果、執事さんがご隠居様から無理難題を押し付けられる(いじめられる)こともなくなり、最終的に、執事さんもご機嫌になったということだ。何なんだ……


 わたしはその日もまじめに仕事する気になれなかったので、ついでに、前から気になっていた「後宮候補生」について、きいてみることにした。

「ところで、あの純白シルクのメイドさんって、何者なんですか」

「あの子たちは、メイドさんじゃなくって『後宮候補生』といって……」

 執事さんによれば、「後宮候補生」とは、後宮に入るための予備校生のようなものということだ。

 この世界には、支配力がイマイチだが帝国が一つ、形式的には皇帝の臣下だが、実質的には好き勝手できる王や公や伯などの諸侯が多数あり、さながら神聖ローマ帝国や周王朝のごとく。とはいえ、帝国の権威は誰もが認めるところで、帝国の後継ぎを絶やさぬために、後宮の充実が歴代皇帝の重要な使命となっていた。後宮には最高の美女・才女を揃えなければならないのが建前で、その要請は身分制秩序の維持よりも優先されていた。

「ということは、わたしみたいなメイドが後宮に入る可能性もある?」

「残念だけど、それだけは、絶対にない」

 奴隷階級は家畜と同様の扱いらしい。しかし自由民なら話は別で、そういう例は多いとのことだ。

 毎年1回行われる試験に合格すれば後宮に入ることができ、受験するためには誰か諸侯の推薦が必要であるという。合格率は1%程度の狭き門だが、不合格でも、試験の得点に見合った諸侯や貴族の側室(場合によっては正室)として迎え入れられることが約束されているので、女性には人気の職種(?)らしい。自分が推薦した者が試験に合格すると、自分の名誉にもなるので、富や財力のある諸侯が受験生の養成所を開設することは多いということであった。


 このお城の後宮候補生は、ご隠居様が爵位と官位を御曹子にお譲りになった際、老後の道楽として、自分に仕える騎士や領内の自由民から、容姿端麗・頭脳明晰な12歳から15歳の子女を供出させ、組織されたのが始まりという。いろいろな意味で、領民からも好評らしい。

「でも、なぜ、純白シルクのメイド服?」

「それは、ご隠居様のご趣味です。実は、私も反対したんですよ。でも……」

 ご隠居様が自らメイド服のデザインを担当されるなど、かなりの力の入れようだったとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ