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職場でオルゴールを流したら、クソ上司がいなくなりました。

作者: 秋桜星華

「会議中に寝るとは、なんてことをしてくれたんだ!」


 上司が真っ赤な顔で、私を睨んでいる。


 確かに私も悪かった。昨日徹夜で仕事をしていたせいで、つい寝てしまったのだ。おかげでうちの部署の評判はダダ下がり。


 でも、悪いのは私だけじゃない。上司も居眠りしていたし、昨日徹夜する羽目になったのは上司が前日まで会議のことを忘れていたからだ。


 あまりにも理不尽。怒りを抑えながら私は仕事に戻った。




 だからだろう。



「嫌なやつとおさらばできるオルゴール、一個1000円だよ」


 帰り道に怪しい老婆から話しかけられた私は、即座にそれを購入した。藁にもすがる思いだ。


「使い方は簡単。嫌なやつと二人でいる時に、オルゴールを奏でればいいのさ」


「二人でいるとき?」


 嫌なやつと会いたくないから使うのに、二人の時にしか使えないなんて、本末転倒だ。


「簡単に逃れられるわけないだろう?相応の覚悟がないとね」


 老婆はそう言って、オルゴールを私に手渡した。木製で、ほんのりアンティークだ。


「素敵ですね」


 老婆は私の言葉を無視し、最後に一つだけ付け足した。


「あぁ、使う相手にあんたが嫌われてないと効果はないからね。お互い様じゃないと」



 ◇ ◇ ◇



「おはようございますっ!」


 次の朝、私はルンルンで出勤した。


 今日こそあのクソ上司とおさらばするのだ。こんなに気分の良い日があるだろうか。


 昨日おばあさんが最後に言ったことが引っかかってはいたが、どうせ上司も私のことが嫌いだ。間違いなく。




「あの、部長、いいお菓子をいただいたので食べません?」


 昼休み、私は上司にそう声をかけ、二人きりになることに成功した。


「うまいな」


 上司が満足げに頷く。ちょろい。


「でしょう?あ、オルゴールもかけますね。これもいただきもので〜」


 自然な流れでオルゴールをかけ、心の中でほくそ笑む。


 上司は満足げに仕事に戻っていった。隠れてゲームでもやるんだろうけど。



 ◇ ◇ ◇



 次の日、上司は仕事に来なかった。


 その次の日も、そのまた次の日も。


 警察が入った時、上司の家には誰もいなかった。



 無断欠勤から一週間後、上司だったものが近くの山から発見された。


 私は開放感にあふれていた。あのクソ上司はもうこの世にはいないのだ。






 息が苦しい。体が重い。痛い。


 薄れゆく意識の中で、私は老婆の言葉を思い出していた。


 ――お互いに、嫌われていないと。



 昨日ふと手に取ったオルゴールの裏側には、こう刻まれていた。


 18782(いやなやつ)+18782(いやなやつ)=37564(みなごろし)


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˚✧₊⁎❝᷀ົཽ⭐︎秋桜星華の作品⭐︎❝᷀ົཽ⁎⁺˳✧༚
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― 新着の感想 ―
視点人物だけではなくて上司も会議中に居眠りですか。 それは部署全体のイメージも悪くなるでしょうね。 そして上司を呪った結果は、「人を呪わば穴二つ」という末路ですか。 不満があるとはいえ視点人物にも非は…
最後の数字の語呂合わせが作品の怖さを増幅させてました。 怖い作品をありがとうございます。
へぇ~、人柱使えば、ノーリスクで使えますねぇ…中々お買い得ゥ~。
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