騎行兵器グランドウォーカーの歴史
本編に記載されていたものを別枠にしました。
説明臭いですからね。
西暦二〇九〇年、主要各国で推し進められた、新世代の搭乗型兵器の開発を目指す、通称「次世代騎行兵器計画」により生まれた機械装甲戦術兵器。
戦車等の随伴歩兵強化案として押し出された兵器群は、携行火器の大型化に伴う更なる強化を経て、わずか二年で、高発電水素燃料電池、通称ハイドロジェネレータを主動力とし、脊椎を模した高度演算装置、脊椎ユニット内に完全なるオートバランサとも呼ばれるプログラム『ソリッドウォークシステム』を搭載した、全天候二足踏破型戦術機動構造(All-weather biped Disrupt type tactical Maneuver frame )ADMフレームと略称される、人型兵器の礎となった。
時を同じくして行われた、中国前政権による日本への核ミサイル攻撃。
その数四発。
核兵器廃絶運動も浸透し、世界が少しだけ平和に感じられた先での事件。
日本による決死のミサイル防衛ですべて海上撃墜に終わったが、中国は日本の自作自演であると報道した。
だがロシア軍により海上から回収されたミサイル片が証拠として提示された。
世界中が日本と中国の全面戦争を予見したが、現実は違った。
国家間の戦争は起きず、日本は鎖国を行うにとどまり、代わりにIAEAからの緊急要請を受けて、アメリカ主導で中国に対し宣言無しの武力制圧が行われた。
核利用廃絶条約違反。
核兵器の廃絶を最も推し進めた国、支持率のためとはいえ曲がりなりにも核災地へと足を運んだ米大統領たち。
彼らのメンツを中国は完全に潰してしまったからだ。
その際、制圧に使用されたのが世界初のADMフレーム搭載大型外骨格〈タロスV〉だ。
その戦果は絶大で、空を無人戦闘機が抑え、地上戦闘、施設制圧を〈タロスV〉装備兵と無人戦闘機を制御する戦車で行うという現在の戦闘様式を確立し、世に有用性を示した。
現在のADMフレームは一切の動力、駆動系を排し、骨格に演算装置を内蔵した物だけを指す。
これは画一化されたフレームの使用による技術発展の阻害を防ぐためだ。
これを基本とし開発された、全高十メートルを基本とする人型兵器”Gigantic Land Walker”(巨大陸上歩行機兵)は瞬く間に世界を席巻した。
厚い装甲を纏う胴に屈強な手足。
人の形をした異形。
威圧的なその姿で戦場を闊歩し、踏み越え疾駆するさまを、人々は雄大なる二脚と呼び、同製品の呼称として定着した。
今では戦車を組み込まない、GLWのみで運用される部隊も増えつつある。
戦車が劣るわけではない。
破壊力、命中精度、装甲強度、無人戦闘機の制御による戦略性、そのいずれも戦車はGLWよりも優れている。
だが、GLWは速い。
地形を問わず縦横無尽に駆ける機動力、その一点のみで戦車と五分に渡り合う。
二足歩行振動による簡易動的ソナーで地雷対策もできる。
しかも操作が簡単で、下手をすれば未就学児ですら操れる。
そしてなにより費用が安い。
戦車や無人戦闘機が高性能、高品質、高価格の一途をたどる中、この差は大きかった。
そのわけはSWSとそれに連動するOS、果ては基礎フレームの設計図までGLWを構成する大部分に特許が申請されず、且つ構成部品も既存技術、それも調達が容易な旧来品でまかなわれていたためである。
特許が申請されない理由。
それは開発者が基本設計とOSデータを全世界に向けて無料配信したためだ。
軍隊からテロリストに至るまで、安価に製作、使用できる兵器はこうして普及し、新たな紛争の火種となった。




