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92話 フェリナとポリオ







 ポリオ達は学園内部を捜索していた。

今のところ特に変わった所はない。





「ポリオくん………次はどこを探す?」


「えっと…んー、フェリナ先生は怪しいとことかなんかありますか?」


「そうね…………特にない………かしら」


「そういえば先生っていつからここの先生なんですか?」


「私は………確か四年前くらいかしら」


「若いのにこの学園の教官なんて凄いですね」


「ふふ………私なんてまだまだよ。それに、生徒一人守れないんだから」




 暗い顔をするフェリナにポリオは同情していた。

2年の時、ポリオもまたマナリノと同じくフェリナのクラスだった。

なので、マナリノと親しかったのも知っている。

きっとマナリノを守れなかったのを悔やんでいるのだろう。




「とりあえず次は訓練場を見に行きますか」


「そうね」


「ミーナさんもそれでいい?」


「問題ないわ!」




 学園の中から訓練場に向かう。

授業中の為廊下はかなり静かで、少し不気味に感じてしまう。

ポリオは今までのことをまとめて、頭の中で考え込んだ。

行方不明事件が起きてから一年近くが経つ。

一時からパタリとなくなったが入学式前にまた起こり、そして次はマナリノ。

魔帝国の軍が警備しているなか、どうやってそんなことを成し遂げているのだろうか。

犯人の動機はなんなのだろうか。




 被害者の生徒の何人かはポリオも知っている生徒だった。

寮の生徒という事くらいしか特に繋がるものはない。



「そういえば、クラウスくんもフェリナ先生と仲良かったですよね」


「うん、クラウスくんは私の授業選択していたから………」


「あぁ、闇魔法ですか。確かに………」



 2年の時の選択科目はそこまで多くないが、1年も2年も選択科目が無いわけではなく、フェリナ先生の闇魔法もあまりポピュラーなものではない為選択科目だった。




「着いたわね」


「じゃあ俺はあっちを見てきます。先生とミーナさんは他のところを……」




 訓練場の中、特に森の中を見回る。

なにかあるなら人目につかないところだろうとポリオは考えていた。



 森の中を歩いている時だった……



 ふいに頭の中で何かがガチりとハマる感覚があった。




「行方不明の生徒達って………そういえば」


「なにかわかったの?」


「え?」




 違う場所を探しているはずの人物の声が背後からしてポリオは慌てて振り返る。

そこにはフェリナ先生が立っていた。




「先生………なんでここに?」


「あら、森の中ならなにかあるかなーって」


「そう………ですか」


「それで、なにかわかったの?」


「先生が赴任したのって四年前って言ってましたよね?」


「ええ、そうよ」


「確か闇魔法の先生になったのって僕が2年の時じゃなかったでしたっけ?」


「あー、確かにそうね!」


「大抜擢ですね」


「………ふふ 先生優秀だから」




 ニコニコと笑うフェリナの顔がポリオの中で不思議な怖さを感じた。

選択科目の先生はベテランが多いと聞いたことがある。

3年目の先生がなることは少ないだろう。

だが確かにフェリナ先生は1年前から闇魔法の先生になっている。




「それと………先生」


「ん?」


「行方不明になったのって皆闇魔法を受けてた生徒じゃないですか?」




 ポリオの記憶の中で知っている行方不明の生徒達は皆、選択科目で闇魔法を取っていた。

なぜ今まで気付かなかったのかわからないが、それは行方不明の生徒達を繋げる1つのピースだった。




「………そうね。それがどうしたの?」


「いや……何か引っかかって」


「勘の良い子ね………もう少し強く掛けておくべきだったかしら?」


「な………なにを……」




 雰囲気がガラリと変わったフェリナにポリオは少し身構える。




「まぁあの子が勘づきだしたからそろそろ頃合いだったし………君が最後の一人でもいっか」


「先生………」




 フェリナがニヒルな笑みを浮かべながら魔力を纏うのを感じた。

いつものニコニコとした穏やかな雰囲気とは掛け離れるゾクゾクとする空気が伝わる。




「あなたが………犯人だったんですか?」


「だったら………どうするの?」




 ニコッと微笑むフェリナ。

それを見てポリオはゴクリと生唾を飲んだ。




「マナリノさんは………生きていますか?」


「ふふっ 今のところはね。それより他人の心配をしている場合かしら?」


「ふぅー、これはやばいかもですね」




 冷や汗が滴るポリオ。

向かい合うフェリナは余裕の顔で涼しげである。




「あまり時間をかけるとバレそうだから………んー、やっぱりあなたはここで死んだ方がいいかも」




 そう言ってフェリナは胸元からネックレスのようなモノを出した。




「それは?」


「これは一回きりの魔導具。これを使うと魔法を使っても周りの人には気付かれないの………まぁ目視されたらバレるけどね」


「………僕を殺すんですか?」


「黙って見逃してくれるの?」


「………無理、ですね」


「なら、死になさい……ポリオくん」




 ザァーッと魔力が膨らみ視界がグラグラと霞む。

その圧倒的な自分との差にポリオは改めて冷や汗を流した。

これは………勝てない。

でも、あちらにも知らないカードはある。

ドワーフが魔法を使えるとは思ってもないだろう。

ポリオは少し後退りしながら好機を待った。




「闇よ………漆黒の蛇となり敵を捕縛しろ」




 フェリナから湧き上がった黒い靄が蛇になりポリオに向かう。

どうする………どうすれば………とポリオは考えるが、躱そうとして走っても闇の蛇は後を追ってきた。




「光よ………彼の者を守る盾となり、守護して」




 ボワッと目の前が光ってポリオの前に防壁が張られた。

その光の壁は闇の蛇を消し去りポリオを守る。




「ミーナさん!」


「先生が消えたから……探しに来たんだけど、これは?」


「犯人はフェリナ先生だった」


「なるほど………」


「あらあら!また1人………はぁこれは本気を出さないとすぐには片付かない……かな?」




 フェリナは突如現れたミーナを見ても、まだにこやかな顔をしていた。

しかしその目は暗く正しく闇のようだった。

その顔を見てミーナも身構える。




「先生………1つ質問をしても?」


「なにかしら、ミーナさん」


「理由はなんなんですか?学園の先生ですよね?」


「………ふふ。違うわ………私は。おっと、これ以上はダメね」


「教えてはくれないんですね」


「私を倒したら教えてあげてもいいわよ?」


「そうですか………」




 魔力を放出するフェリナに向き合うミーナもまた魔力を纏う。

アルスにもなかなかの才能といわれているだけのことはありミーナの魔力も凄まじかった。




「ポリオくん下がってて」


「でも………」


「大丈夫………あの人は私が止める」 


「……ごめん」 





 向き合うミーナの背中を見つめてポリオは小さく頭を下げた。

確かに自分にできることは大してない。




 フェリナがニコリと笑う。

それは余裕の表情だろう。

しかし、ミーナも笑っていた。

戦場に立ったことがないミーナだが、初めての生死を掛けた戦いに歓喜していた。

ミーナは思う“あぁ、これが本当の戦い”と。







 二人の戦いが始まろうとしていた。









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