84話 魔法の可能性
「よし、じゃあ俺が研究してきた事を説明するぞ?まずルフリア……どうやったら魔法は発動する?」
訓練場で3人と向かい合うアルスがこの中で魔法の扱いが上手いルフリアに質問する。
「はい、魔法は正しい詠唱を行い明確にその魔法を理解すると発動します!その際に魔力を練り上げるのも必要ですね」
ルフリアの回答にミーナは頷き、ポリオだけよく分からなそうな顔をしている。
ルフリアのその答えはある意味で正解、そして不正解である。
「つまり、魔導書や誰かから教わって訓練すれば扱える?まぁもちろんその属性の才能ありきだが」
「はい、そうです!」
優等生顔でルフリアが胸を張る。
そこまで胸は…………なんでもない。
「ルフリア……周囲の音を消す魔法ってのはあるか?」
「………ない、ですね。固有魔法ではもしかしたらあるかもしれませんが」
「………サイレント」
アルスは無音を創る魔法を発動する。
急に全く音がしなくなり困惑する3人。
不思議そうにルフリアが口を開き、そして声が音として出ないことで目を見開く。
アルスは魔法を解除した。
「これが無音を創る魔法だ」
「………固有魔法でしょうか?」
「いや、固有魔法でそんなものは持ってないな」
「………聞いたことがない魔法ですわ」
「それはそうだろ、俺が開発した魔法だからな」
「か、開発!!??」
「俺が思うに、魔法とは想像力を元に魔力を使って想像を創造し具現化する手段だ」
「………想像力」
「ルフリアが答えた通り魔法には詠唱が必要だな?だが無詠唱も省略した詠唱も存在する。それを扱える人との違いはなんだ?」
「………違い」
「それは、想像力だ。何度も何度も同じモノを使うとそれを明確に理解して想像することが出来る。だから無詠唱や省略しても発動するんだ。となると、さっきのルフリアの回答は正解であり不正解だと思わないか?」
ルフリアは唸りながら考え込み、そして頷いた。
「なるほど………」
「ど、どういうこと?ルフリア」
「つまり、魔導書や人から教わるのは想像するために必要なことでしかない?ということでしょうか」
「そうだ………例えばこれを見ろ」
アルスはそう言って小さな火の玉を指先から出した。
ファイアボールにしては小さい。
「ファイアボール………でしょうか?」
「ファイアボールだな。だが、これはファイアボールに風魔法を混ぜて爆発的に威力を高め、そしてさらに圧縮している。」
「………では、それは何なのです?」
「名前はないさ、思いつきだからな」
「…………」
アルスはそう言って指先を遥か遠くにある的に向け、そしてその小さなファイアボールを放つ。
高速を超え光速に至ったその火の玉は的に直撃した瞬間に圧縮されていた莫大な力が開放されドーーーーーーーーーーンッッッと耳をつんざく轟音を響かせて周囲一体を吹き飛ばした。
「魔法を理解したのではなく、どうやったら威力が上がるのかを想像した結果がこれだ」
「「「………」」」
「魔法は想像することで創ることができる。だが、皆はなぜそうなるのかを考えてない。だからこの方法は思いつかないんだ。だが、例えば火ならそれが理解出来ると思う。魔法なしで火を起こすというやり方は多く知られているだろ?それを魔力で置き換える、それが火魔法だ。」
ポリオはキラキラとした目でアルスを見るが、ミーナとルフリアはアルスの言葉を聞いてその発想の凄さに驚いている。
「さっきの無音の魔法だがあれは風魔法だ。人間の耳の中には鼓膜というものがあるらしい。音は空気中で振動しながら進み、そしてそれが鼓膜に伝わることで人間はその音を聞くことが出来る。だから俺はその振動を風魔法で無くすことで無音を創り出した。つまり、その方法を理解すれば新たな魔法を開発することも可能だ。皆が使える魔法だから使えるわけじゃない。皆が使えると知って、誰かがそれを扱えて、それを想像出来るから使えているだけだ。」
「ということは、殿下」
「ん?どうしたミーナ」
「私達の魔法は根本を理解していない分、本来よりも弱いのでは?」
「おぉー素晴らしいな。そうだ…なぜそれが発動しているのかを根本的に理解していないのが主流だ。だからその分ミーナの言う通り弱くなる。それでも使えているのは先人の知恵でもあるだろうが、それによって多分だが魔法は衰退してきたんだろう。古代魔法ってのは多分だが俺のような発想に基づいて使われていたはずだ。」
ミーナが深く頷き、ルフリアが目を見開く。
「ミーナ、ルフリア、ファイアボールをあそこの的に放ってくれ」
アルスが指差す先には複数の的がある。
先程アルスが消し飛ばしたのとは別の方向だ。
ミーナとルフリアが魔法を詠唱しファイアボールを放つ。
一般的なファイアボールだ。
少しだけミーナのほうが威力は高いがそれは魔力量による差だろう。
「よし、じゃあルフリア」
「は、はい!」
「魔法を使用しない場合に火の威力を上げるにはどうする?」
「…………薪を…足す?」
「それも正解だ。ミーナだったらどうだ?」
「………燃やす素材を変える?」
「おー!いいなそれも正解だ。」
「んじゃ、ポリオならどうする?」
急に振られてポリオは驚くが、魔法の質問ではないので、んーと考え込む。
「ドワーフは鍛冶の際に火を強くする為に風を使う、かな?」
「ポリオも正解だ。つまりだ、火の威力を上げるってだけでもそれだけの可能性があるし、方法がある。まずここを理解してくれ。
で、ルフリアの言った薪だがこれは魔法に置き換えるなら魔力量だな。使う魔力量を上げれば魔法の威力は上がる。
次はミーナだが、素材を変えるってのは魔力の練り方を洗練させる…っていう感じだ。
そしてポリオの発想だが、これは複合魔法だ。火魔法に風魔法を合わせることで威力が上がる。」
「確かに……」
「ルフリアは風魔法を使えるんだよな?」
「使えますわ!」
「じゃあファイアボールに風を纏わせてみろ。ミーナは魔力量を上げながらそれを制御して」
「わかりましたわ!」
「了解です!」
二人は先程とは別の的を見て手を上げる。
が、ルフリアがそこで「あっ」と声を上げた。
「どうやって詠唱すれば?私複合魔法はまだ…」
「………何でもいいぞ。火と風の複合魔法は存在するけどルフリアはそれを知らないだろ?知らないなら、根本的に今から放つ魔法はそれとは違う。だから例えば…。火よ…風を纏い爆炎となって放たれよ。とかでも放てるはずだ。」
「そんな思いつきでできるのでしょうか?」
「問題ない」
ルフリアは半信半疑だがそれでもアルスの言う事は正しいと信じて手を前に向ける。
「火よ……風を纏い………爆炎となって………放たれよ!!!!」
最初は先程と同じくらいの大きさだったファイアボールが現れた。
だが、詠唱が進むとそのファイアボールは数倍に大きくなり…そしてルフリアも驚くほどの速度で的に向かって少し離れた的を複数巻き込んで爆発した。
ルフリアはゴクリとつばを飲む。
初級魔法のファイアボールがここまでの威力になるとは思ってもみなかった。
「凄い………」
「な?できただろ?次はミーナな」
「はい!!」
ルフリアのそれを見てミーナは一切の疑いなく手を上げた。
そして、なんでもいいと言っていたので思いつきで詠唱を唱える。
「火よ………私の魔力を吸って業火となり……敵を抹消しろ!!!!」
少し厨二病っぽいなーと苦笑しながら見つめるアルスの前でミーナの手からルフリアのよりもさらに大きな凄まじい火の玉が生まれ、そして的に向かって飛んでいく。
そして、文字通り的や周囲を抹消させた。
「凄い………」
ルフリアと同じ感想を述べたミーナがアルスを見つめる。
「ということだ。この魔法だからこの威力が妥当、という考えも頭から無くす。実際問題今二人がいきなり使えたのは奇跡に近い。それだけ型破りなことをするのは難しい。だが、この理論さえ分かれば後は好きなように魔法を創造できる……まずはその練習だな」
「「はい!!!」」
楽しそうに返事する二人とそれを見つめて目を輝かせるポリオ。
実験はまだ始まったばかりである。
日間ハイファンタジーで12位に!!!
そして、日間の総合ランキングでも92位に。
本当に皆様のおかげです(TOT)
最初の頃更新頻度がグダグダで半年に1話くらいの時からブックマークしてくれている皆さんも、新たに知ってくれた皆さんも……本当にありがとうございます。
そして、本当に言いたいのですが………
誤字報告してくれている皆さん………感謝感謝です。
2度ほど確認しても見落としてるところが出てくるのですが、それを報告してくれるのは本当にとても助かります!!!
今後とも、転生捨て子を宜しくお願いします。




