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67話 クロは成長期






「なんか凄い大きくなってないか?」


「ピーーー?」




 モルドナ王国から帰還した日、しばし休息をとれと父上に言われたので広大な自室に戻りベッドに腰掛けたアルス。

その前には帰還を待ちに待っていたダークネスドラゴンのクロが尻尾をふりふりとしながら座っている。



 普通の王族の寝室よりも数倍以上に広い皇宮の皇太子の部屋。

その為幼いとはいえ大きいクロものんびりとすることが出来る。

前まではテーブルやソファなどが置かれていた場所は今は大きな円型のふわふわな絨毯が置かれておりクロの定位置になっている。



 その定位置に座るクロを見て、アルスは首を傾げる。



 数日で明らかに大きくなっているのだ。

二回りほどだ。




「クロは成長期なのか?」


「ピーー?」


「まぁ子供だしな……そりゃそうか」



 納得したアルスだったが、実際普通の龍の子供もここまで急に大きくはならないのだが、それを教える人はいない。



『おなかすいた〜』


「え?」



 アルスとクロしかいないはずの部屋の中で聞こえてきた声にアルスは周りを見渡す。

が、そこには誰もいない。



 アルスは目をパチパチとしながらクロを見つめる。



「クロ?」


『ん〜?おなかすいた〜』


「え、クロ喋れるの?いや、口は開いてないな」


『なんかできた〜』


「凄いなクロ……」



 アルスはクロの頭をわしわしと撫でる。



「何食べたいの?」


『おにく〜』


「分かった。じゃあ用意させよう」



 メイドを呼んで肉を用意させると、人一人分の大きさの皿に乗った肉の山をクロは嬉しそうに食べている。

しかし、まだ幼いのにテレパシーのような形で意思疎通ができるとは凄いな。

クロはもしや天才?



『おなかいっぱい〜。今日はなにするのー』


「んー、今日は予定はないな」


『じゃあお空飛ぶ〜?』


「空?」


『クロの背中乗る〜?』


「クロが俺を乗せて飛んでくれるのか?」


『うん〜』



 確かに幼龍とはいえすでに5m〜10mほどの大きさのクロなら背に乗る事もできるだろう。

が、魔法を使って飛ぶことも転移も使えるのでその可能性を考えてはいなかった。

ドラゴンに乗って飛ぶ………なかなか良さそうだ。ファンタジーっぽい。




「よし、じゃあ外に出ようクロ」


『うん〜いこ〜』




 外に向かって進んでいくと兵士や文官が俺とクロを見つけて挨拶してくる。

すでに、クロも皇宮の中では有名な存在である。

皇都の住民にも皇太子の配下である龍だと説明している為、空を飛んでてても騒ぎにはならない。



 皇宮の中庭に辿り着いた。

クロの背中にアルスが跳躍してふわりと着地する。



「よし、じゃあ行くか」


『よ〜しいくよ〜』



 魔法を複数発動してクロの上でも安定して騎乗するアルス。

クロはそれを確認して、バサリと翼を広げ…そして空に舞い上がる。



「おークロに乗って飛ぶのもなかなかいいな」


『でしょ〜?』



 クロは嬉しそうに皇都上空を飛び回る。

高度を上げた為もはやほとんどの人には見えていないだろう。



「ん?」


『どうしたの〜』


「なんか変な雰囲気を感じるな……もう少し高度を上げられるか?」


『できるよ〜』



 さらに高い位置まで飛んだクロ。

アルスはそのさらに上空を眺めて首を傾げる。

何もない……雲しかない空に不思議な感覚を感じている。

それが何なのかはわからない。



「……偽装?結界?なんだあれは……」



 目に見えていないだけで確かにそこに何かがあるという不思議な感覚。

アルスはそれを無視できずなんとかその偽装を解けないか模索している。

多くの魔法陣がアルスの周りに浮かぶ。

それは、調査、解読、探索、結界破りなど多くの術式だ。

しかし、それでもその何かは姿を表さない。



「創造神、あれはなんだ?」


『不可視の結界に守られた天空都市じゃな』


「なっ!?あれが天空都市?どうやって入ればいい?」


『分からん』


「創造神だろ……あんた」


『あれはこの世界のモノではない』


「なに!?異世界から来たのか?」


『まぁそのようなものじゃろう』


「んー不可視の結界か……異世界産だとしたらこの世界とは術式が違うのかもな……んー」




 創造神から聞いた情報によれば異世界から来た天空都市らしい。

ぜひとも、見たい。



『なにかあるの〜?』


「天空都市だって」


『てんくうとし〜?』


「そう!空に街があるんだって」


『すご~い』


「とりあえずなんとか侵入経路探すからもうちょい待ってな」


『わかった〜』




 未知の術式だとして、原理を理解することから始めなくてはならない。

かなり複雑で繊細な術式だ。

何の魔法なのかもよくわからない。

が、複雑に絡み合ってはいるが地道にやれば綻びを広げそこから侵入することが出来そうだとアルスは考えている。




 それから時間にして数分なのか数十分なのか、アルスは時間の概念すら忘れてひたすら不可視の結界に集中した。

この不可視の結界は攻撃魔法では壊せない不壊の結界でもあるらしく本気で全てを破壊する勢いで壊す事はできてもそれでは天空都市は見られない。



「よし、クロ!あそこの景色が揺らいでいるところに進んでくれ」



試行錯誤の末、やっと綻びを作ることに成功した。

アルスが指差す方向にクロは進んでいく。



 そしてその綻びを通過するのに合わせて、穴を広げるように魔法を展開する。

それはもはや名のない魔法。

この為だけにアルスが生み出したものだ。






 アルスが魔法で不可視の結界に開けた穴を広げ、クロと共にそこを突き進む。

視界が光に包まれた。




そして、それが晴れると………




















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