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120話 覚悟









 顔をひきつらせたベルクールがアルスに近付く。





「殿下、さすがに引くわ………化け物かよ」


「人だぞ?それより、とりあえず時間は稼いだが、どうする?」





 真顔で返答してくるアルスにベルクールは若干引き気味である。





「撤退でいいんじゃないか?行方不明の生き残りも合流できたわけだしな」


「そうだな……」


「にしてもどうやって魔法使ったんだ?」


「魔力吸収を解析して無効化した」


「んなことできんのか?」


「俺も驚いた。優秀なスキルのおかげだ」


「よくわからねぇがさすがだな」




 アルスはベルクールとワーグナーと共にアンバー達のところへ転移する。

突然目の前に現れた三人に驚くが、誰かが何かを言うよりも先にアルスはジスに近付いた。

光が溢れ出すアルスの手から温かい風のような何かがジスの中に流れ込む。

困惑顔のジスだが、経験上それがかなり高位の回復魔法だということは分かった。




「これで大丈夫だ」


「え………」




 自身の左肩から先を見ると、無くなったはずの腕がそこにはあった。

手を開いたり閉じたりしてみるが、問題なく動く。

一切の違和感がない。




「こんな回復魔法が……」


「アンバー、他に怪我してるやつはいないか?」


「我々は回復薬を飲んで治せる範囲でしたので、問題ありません」




 ベルクールはアルスのその規格外ぶりにさらに顔をひきつらせながら、しかし何も言わずに溜息をついた。




「……意味がわからないのだが、なぜ魔法が使えた?」




 アルスに近寄ったエリが困惑顔で尋ねる。




「解析がなんとか終わったらしい」


「らしいって………なんで他人事なんだ」


「それより出口に案内してくれ」


「………出る、のか」


「あぁ、とりあえずやることはやったしな」


「少し、話をしないか?」


「奴らが復活したら面倒なんだが?」


「大丈夫。その時は私が止める」




 エリの強い意志の籠もった瞳を見て、アルスは迷いながらも頭を縦に振った。




「少しなら構わない」


「話してる最中に復活して暴れられても面倒だ。先に、あれを解除してもらえないか?」




 エリが親指で後ろを指し示す。

あれとは、もちろんアルスの氷魔法による大剣である。




「あぁ、わかった」


「おいおい………殿下。さすがに不用心じゃねぇか?」




 会話を聞いていたベルクールが声をかけるがアルスはそれを笑いながら手で制した。




「魔法が使えるなら問題ない。エリの話を聞かずに敵対行動に移れば数秒以内にまた拘束する」


「それが可能というなら良いんだが」


「任せろ」




 再びエリに向き合うアルスは、その遥か後ろの氷の大剣を消し去った。




「とりあえずは任せるぞ?」


「わかった」




 拘束が解かれたばかりでまだ復活していない天人族達に向かってエリが歩いていく。

そして、エリが辿り着くよりも前に天人族達は復活した。

まだ何が起こったのかわかっていない様子である。




「皆!!一度私の話を聞いてくれ!!」




 エリの叫びがアルス達にも聞こえた。

族長と呼ばれていたエリ。

彼女の一声で天人族達は臨戦態勢を解いた。

集まって話す彼らの声は聞こえない。

が、殺気が薄れていくのにアルスやベルクールは気付いていた。


 


「にしても、何の話なんだ?殿下」


「出来るかどうか聞きたいんだろ」


「それは、どういう?」


「俺にならあいつらを殺すことが出来るのではないかとエリは考えている」


「出来るのか?」


「不可能ではない」


「………元天使でもできないのにか?」


「あぁ」





 ベルクールは考え込んで黙った。

アルスという存在の異常性を感じている。

魔法が使えない状況でそれを解読した?

元とはいえ天使を一方的に拘束した?

あのとんでもない魔法はなんだ?

それによくよく考えたらあの凄い魔法を今まで使わずにあんなに強かったのか?

しまいには天使すら解読できなかった世界の理すら解読可能なのか?




 アルスは、何者なんだ?



















「すまん、待たせたな」




 エリが戻ってきた。

天人族達はあの場所に留まっている。




「アルス……率直に聞こう。我々を殺すことができるか?」


「出来たとして、それでいいのか?歴史から消えることになるぞ?」


「それでいい?良いに決まってる」








 天人族を殺害するのは可能か?



『時間は掛かりますが方法はあるかと思います』



 創造神の上の存在がいるのか?



『その質問には現状答えられません』



 なるほど、否定ではないんだな。

それに、現状?








 創造神にすら干渉するほどの理ってなんだ?

創造神が一番上ではないのか………

そもそも世界ってなんだ?

…………っ!?

いや、何か今思い出しかけたような。















 天人族を殺すことが出来たとして、本当にそれでいいのだろうか。

今まで果てしない時間を生きてきた天人族。

天使から堕天し、世界から忘れられた種族。

自分達が死ぬために、ただそれだけの為に生きてきた。

それで死んで、本当に満足なのだろうか?




 本当に納得できるのだろうか?



 本当にそれが正解なのだろうか?



 

「エリ、少し考えてもいいか?」


「?」


「種族を滅ぼすっていうのはさすがに覚悟がいる」


「出来るか出来ないかではないのだな、すでに」














 一人で立ち去ったアルスの背中をエリだけでなく皆が見つめていた。

“種族を滅ぼす覚悟”と言ったアルスが背負うモノの大きさに誰も掛ける言葉がなかった。





 普通なら考えもしない、そして出来る可能性すらないそれが出来てしまうという重み。





 一人で草原に座って空を見上げるアルス。

そのそばに追いかけてきたベルクールが立つ。




「なにを考えているんだ?」


「天人族達をここで滅ぼしたとして、本当にそれで正解だと思うか?」


「それが目的だったんだろ」


「せっかく俺らと出会えたのに、ここであいつらが滅べば本当に世界から消え去る……」


「話し合ってみたらどうだ?本人達と話さないと分からないだろ。それで、アルスも納得できるなら俺は良いと思う。ただ、そこで納得できないならやめるべきだろう。どこまでいっても決めるのはアルスだ。後悔してほしくない」




 アルスはベルクールが真摯に考えて話してくれているのが分かり微笑んだ。




「あぁ、そうだな」



















年始から体調不良や諸事情が重なり投稿が遅れています。

申し訳無いですm(_ _)m

コンディションが良くなったらまた毎日投稿できるようにしますのでしばらくお待ち下さい。



その間のブックマーク、いいね、などは意欲に繋がるのでぜひともよろしくお願いします!

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