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110話 ダンジョン!?










 洞窟の中、円形に座った面々はアルスの言葉を待っていた。

アンバー、ローマン、シルフィエッタ、ワーグナー、ベルクールと偵察から戻ってきたジスもその場にいる。





「皆はどう考えている?」


「………他大陸の可能性もありますね」





 アルスの質問に答えたのはアンバーだった。

その答えに軍の面々はジスとワーグナー以外は頷いている。




「ベルクール……ここに来るまでの道中魔物には出会ったか?」


「こちらに来てすぐに百体程に囲まれた。その後こっちに向かって居る時に一度……」


「なるほど……やはり魔物がいないわけではないか。それともう一つ聞きたいのだが」


「なんだ?」


「赤い玉を見なかったか?」


「………見てないな。なんだそれは?」





 アルスはそれを聞いて深く頷いた。

あの赤い玉は他にもあるのだろうか。




 二人の会話を聞いて単独で百体以上をそんなさらっと………と他の面々は思ったが話を止めるわけにもいかず黙った。





「俺達も来た当初魔物に襲われた。といってもあれは昨日らしいな。魔物の数は目算だが2500体くらいだろうか」


「2500だと!?どうやって逃げ切った?」


「殿下が殆ど倒しました」


「なっ!?フッ……フハッハッハッハッ!!!そりゃすげぇ」




 ローマンにアルスの規格外ぶりを聞かされベルクールは噂通りに面白そうなやつだなと笑った。




「で、その後俺は気を失っていたわけだが………俺はあの時赤い玉を見た。というより、壊した」


「赤い玉………ですか?」




 シルフィエッタがそれはなんです?という顔でアルスを見やるが、他の面々も同じように困惑している。




「気付かなかったか?あの時、魔物がどんどん増えていた」


「た、確かに………最初見た時よりもかなり増えていました」




 そう答えたのはアンバーだった。

アンバーも後から増えた魔物はどこから現れたのかとあれから考えていた。




「俺はあの戦いの最中にあることに気付いた」


「あること……ですか?」


「あぁ、魔物が何処かから来ているのではなく、ある場所から湧いていたんだ」


「湧く……?」


「あぁ、でその発生源を探したら大きな赤い玉が浮かんでいた。そして、そこから魔物が出てきた……」




 ベルクールが難しそうな顔をして唸っている。

そして、アルスの目を見つめた。




「………湧いてたのか?本当に」


「あぁ、転移魔法には見えなかった。すぐに壊したから検証は出来ていないが……あそこから湧いていた……ように感じた」


「ということは?」


「ここがダンジョンである可能性がある」


「だ、ダンジョンですか??」


「ローマン、よく考えてみろ。であるなら納得できる部分はないか?例えば俺らが四霊山で足を踏み入れた場所がダンジョンの入口だとして、ダンジョンの入口では転移する場合があるよな?それに、ダンジョンの転移魔法っていうのは解析できないと聞く、俺が気づかなかったのも納得できる」


「確かに……」


「それに、ダンジョンていうのは魔力が多い場所に出来るんだろ?四霊山はピッタリじゃないか?」




 アルスの推測を聞いて皆が頷く。

たしかに、ダンジョンの可能性は高い。




「ということは、どっかに出口があるのでしょうか?」


「ダンジョンなら出られる方法があるはずだ。ベルクール、ダンジョンだとしたら出口はどの辺にあると思う?」


「分からんな」


「SS冒険者でもか?」


「そもそも、ダンジョンは全て異なる仕様で出来てると言っても良い。普通の洞窟型のダンジョンであるなら壁を触りながら進めば出口もしくは次の階層に行ける階段に繋がる可能性はあるが。ここがダンジョンだとするとここみたいな広大なフィールド型のダンジョンはかなり特殊で、例えば海があるようなダンジョンで船の中に次の階層に行ける転移陣があったなんてケースもあるし、正直全く読めない。そもそも、出口があるかもわからん」


「出れないってことか?」


「いや、出れることは出れるがダンジョンの中にはダンジョンマスターを倒すまで外に出られないってパターンもある。それだったらかなり面倒だ……出口はなくあるのは次階層への転移陣か階段、次の階層に行けたとしてもダンジョンマスターに辿り着くまで出られない。そういうケースもある」


「なるほどな……」


「とりあえずは出口もしくは次階層に行ける場所を探さないといけないか」


「壊したっていう魔物が湧く球体が一つだとしてもこの森の中にはかなりの数の魔物がまだ居るだろう、それを倒しつつ進むしかないな」




 アルスはベルクールの意見を聞いて顎に手を置いて考え込む。




「ダンジョンの魔物の肉は食えるのか?」


「ここがダンジョンなのかはまだ確定してないが、まぁ食えるぞ。一定時間放置してたらダンジョンに吸収される場合もあるし他の魔物に食われちまうが普通に倒してその場で解体してってやれば問題なく食える。ちなみに俺はすでに一週間以上いるがここの魔物の肉を食ってる」


「そうか……なら魔物が出るのも悪くないな。動物性の栄養は摂取したいしな」


「前向きだな…」


「食事をとれないっていうほうがよっぽど危険だろ?」


「ちげーねー」




 そんなアルスとベルクールの会話を聞く面々は次元が違うと苦笑する。

こんなB〜Aランクの魔物が出る場所で、今後も魔物がかなりいるという話をしているのに、まさか食事の話になるとは思わなかった。

だが、肉が食えるのは悪くないなとワーグナーは一人納得していた。




「とりあえず進むことにするか……。アンバーの話ではこの辺りには魔物もいないんだろ?」


「ワーグナーとジスに探らせていましたがいないようです………しかし、居ないほうが良いのでは?」


「いや、まずは腹いっぱい飯を食おう」




 アルスの微笑みにアンバーは言葉が出ず、仕方なく頷く。




「賛成だ!」

と、ベルクールはご機嫌だ。

魔物を狩りたい欲求だろうか。



「俺も正直肉食いてーすねぇ」

ワーグナーも同意する。



「確かに、木ノ実とかだと腹も膨れないっす」

とジスも頷く。




「とりあえずの方針は転移陣か階段を見つけること。その道中の魔物は倒して食事にする…………どうせなら美味い魔物がいいな」




 美味い魔物と言ったアルスにさすがにアンバーとローマンは引いていた。




「ワイバーンは美味いぞー。まぁそれよりもドラゴンのほうが美味いがな」


「確かに……たまに皇宮の食事にもワイバーンは出るな………にしても、ドラゴンか。どんな味なんだ?」



「ドラゴンの見た目から硬そうとか思われているがドラゴンは皮膚が硬いだけで肉柔らけぇ。それに脂のノリも旨味も他の肉とは比べもんになんねぇ。一度食ったら虜になるぞ」


「俺の相棒がドラゴンだから食そうと思ったことはないが、それを聞いたらぜひ一度食べてみたいものだ」


「敵対してきた逸れなら心も痛まねぇだろ?もし、出てきたらステーキにしよう」


「………そうだな。それは楽しみだ」


「ハッハッハッ!!殿下とは気が合いそうだ!!」







 この二人は一体何を言っているのだろうか、とアンバーは頭を抱えるのであった。















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