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【コミックス3巻発売中!】採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~  作者: 一色 遥
第1章 新しい世界と出会い

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31. 無自覚と苦労人

 気を持ち直したアルさんに[最下級ポーション(良)]を渡し、代わりに報酬を貰う。

 ポーションの値段はおばちゃんと相談しておいたのもあって、取引自体はスムーズに進んだ。

 っと、そうそう――


「アルさん、ひとつお願いがあるんですが」

「ん? なんだ」


 机を挟んで対面に座り直した僕へ、アルさんは顔を向ける。

 その動きで乱れたままの黒髪が揺らめき、視線と呼応するように鈍い光を返していた。


「恥ずかしながら……僕が採取に行く際にお手伝いいただけないかと」

「手伝い? 言っておくが、俺は下手だぞ?」

「ああ、いえいえ。アルさんに手伝って貰いたいのは護衛です。その、前回……死んでしまって」


 僕の言葉が予想外だったのか、アルさんは目を見開き「ふむ……」と重く息を吐いた。

 そのままアルさんは何も言わなかったこともあり、僕は訥々(とつとつ)と事情を説明していく。

 話が進む度に、アルさんの顔が重苦しいものから、呆れの顔に変わっていくのが、なんとも申し訳ない気持ちになった。


「言わなくてもわかっていることだろうが、油断しすぎだ」

「……はい」

「視界の悪い場所で座り込むなんて、襲ってくださいと言ってるようなものだぞ」


 淡々と叱るアルさんに、僕は小さくなることしかできない。

 わかってますよぅ……だから今回は助力をお願いすることにしたんだし……。


「はぁ……。アキさん、あまり気を抜きすぎないようにな? フィールドだけでなく、街の中でもな」

「ん? 街でもですか?」

「ああ、アキさんはあまり気にしてないかもしれないが、こっちでは一応女の子なんだ。それに……」


 女の子――そういえばそうだった。

 もっとも最後の方はなんて言ってるかよく聞こえなかったけど……一応気を付けよう、うん。


「……はぁ」

「なんなんですか? さっきから溜息ばっかり」

「いや、自覚がないというのも、なかなか大変なものだな、と」


 溜息交じり、苦笑しつつアルさんがそうぼやく。

 自覚?

 自覚ならしてますよ!

 僕が油断しすぎてるってことも……一応女の子だってことも。


(あはは……その、頑張ってくださいね)

(シルフまで!?)


 乾いた笑いをしながら、シルフは僕の視界から消えていく。

 まるで僕を除いた2人が結託してるような……お互い話してないはずなのに。


「それで、アキさん。いつがいいんだ?」

「ん? 採取ですか? 僕は今夏休みで学校がお休みなので、いつでも大丈夫です」

「ふむ……なら明日の夕方辺りにしようか。そこなら時間が取れるだろう」

「じゃあそうしましょう。森も街とはそこまで離れてないので、日暮れまでには帰ってこられると思いますし」


 実際、森まで行って帰ってくるだけなら往復で40分から1時間程度なので、遠くはないしね。

 ただ……森の入口付近はあんまり素材もなかったから、ある程度中には入らないといけないんだけど。


「ああ、わかった。なら明日、動けるようになったらこちらから連絡を入れよう」

「はい。お待ちしてますね」


 そこまですり合わせてから、アルさんは椅子から立ち上がる。

 そして僕と軽く挨拶だけ交わして雑貨屋を出て行った。


「アキ様」


 アルさんが去って、お店の奥が静かになったあと、少し時間を置いてからシルフが僕の前に姿を(あらわ)す。

 ――その顔は不思議そうな色を見せていた。


「ん?」

「アル様、武器を変えたみたいですね」

「え? そう?」

「はい。以前は腰から提げてましたが、今日は背中に背負われていましたので」


 ふむ……そういえばそうだったね。

 前回はごく普通の長剣みたいだったけど……大きくなってたような。

 というか、ものすごく大きくなってたよ。


「そういえば、左手に付けてた盾もなくなってたね。もしかすると普段は邪魔になるから外してるのかもだけど」


 ただ、なくなっていたとすれば……盾役(タンク)をやめたのかな?

 でもそうなると、パーティーでの役割も変わるだろうし……。


「まぁ、よくわかんないし。明日アルさんに聞いてみよう」


 手を叩きつつそう締めて、シルフと深く頷きあう。

 そうして気を取り直したところで、僕はインベントリからあるアイテムを取り出した。


 おばちゃんから貰った本――森の素材を覚え直すためだ。


強躍草(キョウヤクソウ)にシュネの木の枝。それにポルマッシュと……他には、」


 現物とイラストを見比べながらペラペラとページを捲っていく。

 すると、あるページが目に入った。


「ん? これは……」


 植物の、蔓みたいな……?

 採取方法としては引き抜くだけなんだけど……


「これ、箇所によって素材が違う?」


 本に書いてあるのは葉と茎、根の3カ所で違うということだけで、それ以上は書いてない。

 でも、こんなのもあるんだ……。

 ただ、思い出してみても見た記憶は引っかからない。

 森の入口付近には生えてないのかもしれないし、もし見かけたら採取してみようかなぁ……。

2019/02/23 改稿

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