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【コミックス3巻発売中!】採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~  作者: 一色 遥
第2章 現実と仮想現実

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259. 綺麗な空色

「――ッ!?」


 表示されていた言葉を理解すると同時に、僕はカンネリの根から手を離す。

 別に持っていたからといって毒が回るわけじゃない、そんなのは鑑定結果から分かっている。

 けれど、猛毒を作れる素材であると思うと、不思議と手に取るのも恐ろしくなったのだ。


「アキさん!? 大丈夫ですか!?」


 僕の近くで別の作業を行っていた女性が、慌て焦りながら僕へと声をかけ、立ち上がる。

 そんな彼女に「ああ、ごめん。少し驚いちゃって」と返しながら、慌てて笑顔を作った。


「でもアキさん、顔色が……」

「大丈夫大丈夫。ちょっと素材の内容に驚いただけだから。うん」

「そう、ですか?」

「気にしないで。そっちの作業続けてくれて良いから」


 僕の言葉に不満そうな、心配そうな顔を見せながらも彼女は作業に戻る。

 彼女の意識が作業に集中したのを見計らって、僕は再度根を手に取った。


[カンネリの根:カンネリの中でも最も強い毒素を持つ部分。

カンネリの猛毒は根の部分の毒素を抽出することで作成されている。]


 猛毒と、やはりそこには見間違いもないほどにハッキリと書いてあった。

 カンネリはこの島だけじゃなくて、普段僕らが生活している街のすぐ近くでも採れる。

 水が触れれば葉が開くという特殊な見極め方もあるだけに、探すのに苦労することもない。


 つまり、手に入れやすい素材なのだ。

 そんな素材が、猛毒の材料……。

 そのことに、まだ遠い世界の話だと思っていた猛毒の脅威が、実はすぐ近くにあったことを僕は実感してしまったのだ。


 でも、だからこそだろう……おばちゃんやおじいちゃんが、毒について詳しく教えてくれたのは。

 この世界の人達にとって、毒は身近にある危険のひとつなんだ。

 だからこそ、しっかりと理解して、上手に付き合っていこうとしているんだろう。


「……よし」


 改めて気合いを入れ直し、カンネリの根をインベントリへとしまう。

 今は根に気を取られている場合じゃない。

 今は――沸騰した[最下級ポーション(良)]に、刻んだカンネリの葉を入れることが、最優先だ!


「しかし、いよいよやってることが調薬というよりは、魔女みたいになってきたかも」


 こぽりと表面に浮かんでは弾ける泡に、僕はそんなことを思う。

 水とは違う、薄緑色の液体――それに、カンネリの葉を入れて数分かき混ぜれば、どんどん色が変わっていく。

 薄緑色から、まるで空のような薄い青色へ。


「おお、結構綺麗な色だ」


 時間にして合計10分ほど混ぜたところで、火を落とし、シルフにそれとなく冷やしてもらう。

 これは初挑戦だったけど、上手くできてる気がするぞ……!


[解毒ポーション(微):軽い毒を直せるポーション、ただし猛毒など強い毒に対しては効果がない。

軽い解毒作用を持つポーション。]


 おじいちゃんに見せて貰ったときは、瓶の中身が見えないようになっていたこともあって、色がわからなかったけれど、そうかこんな綺麗な色だったんだ。

 [最下級ポーション(良)]と一緒に窓際に置いておくと、反射して綺麗な気がするなぁ……熱が溜まるしダメなんだろうけど。


「おや、アキさん。それは?」

「[解毒ポーション(微)]だよー。軽い毒に対して使えるポーション」

「へえ、綺麗な空色ですね」


 彼女の言葉に同意するように頷き、複数出来た完成品の内、ひとつを手渡す。

 少し動かすと揺らめく液が、なんだか波みたいで、揺らすだけでも楽しい。


「あれ? でも、それ[解毒ポーション(微)]の良品ですか?」

「ん? いや、違うよー」

「そうなんです? 私の知っているポーションはもっと濁った色だったと思うんですが……雑貨屋とかで買えるやつですね」

「ふむ? 誰か持ってたりしないかな? ちょっと気になるね」


 「ですね」と彼女も頷いて、周りで作業している人達へと声をかける。

 それからほどなくして、僕の前にやってきたポーションは……濁った青色をしていた。


「濁ってるね」

「ですね」

「これが街の雑貨屋で買ったやつだっけ?」


 僕は、周りにできあがっていた人垣に問いかける。

 するとどこからか「そうでーす」と、元気な声が響いた。


「ふむ……。ちなみにコレが私が今作った解毒ポーション。鑑定してみたけど、違いはなさそうだね」

「でも、見るからに色が違いますよ? 買った方(こっちの)は、コレが毒です! って渡されたら信じそうですし」

「あー、それはあるかも」


 同じ[解毒ポーション(微)]なのに、受ける感じが全く違う。

 このふたつのどちらかを飲め! って言われたら、確実に自分で作った方を飲むね。

 うん、間違いない。


「あ、もしかして……使った材料の違いかな?」

「材料の違い、ですか?」

「うん。たぶんそうかな……詳しくは自分で調べてみてねってことで秘密だけど」

「アキさん、手厳しいなぁ」

「……いや、これは伝えておこうか。うん、その方がいいかな」

「え?」


 ふと思い直した僕に、みんなからの視線が突き刺さる。

 今までは基本的にレシピを開示しない方針だったから、仕方ないんだけどね?

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