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【コミックス3巻発売中!】採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~  作者: 一色 遥
第2章 現実と仮想現実

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227. 可能性はある

「まぁ、難しいだろうな」


 ああでもない、こうでもない……と頭を捻る僕を見てか、ウォンさんは小さく呟く。

 その声色に同情のようなものを感じられたのは、ウォンさんも僕と同じだったのかもしれない。


「ウォンさん。少し相談してもいいですか?」

「ん? なんだ?」

「僕の戦闘スキル――<戦闘採取術>なんですが、これってそもそも採取が戦闘スキルに変化してるものだと思うんですけど……」

「まぁ、そうだろうな」

「だとすると、採取と合わせるのは」

「無理だろうな」

「ですよね……」


 そうなると、調薬?

 でも、調薬と戦闘って……投げる程度しか思いつかないんだけど……。


「うーん……」

「そろそろ考え方を変えようか」

「考え方を変える?」

「そうだ。お前ならわかるだろ?」

「僕なら?」


 僕ならって言われても……。

 そもそも、戦いはあんまり得意じゃないから、少しでも戦えるようにって思って特訓に来たはずなんだけどなぁ。


 <戦闘採取術>を教えてくれた兵士のおじさんや、道具をくれたおばちゃんの事を思うと、別の武器を持つっていうのも、なんだか申し訳ない気がしちゃうし……。

 かといって、このスキルじゃ強くなれないって言われちゃうし。


 というか、<戦闘採取術>もさ……もうちょっと弱点が分かりやすくなるとか、そんな補助があれば戦いやすいのに、なにも無いから手探りになっちゃうしさ。

 だから、どうしても1体相手にするだけでも時間掛かっちゃうし、手遅れで押し切られちゃうこともあるし。


「ん? 弱点?」

「ほう」

「ねぇ、ウォンさん。複合スキルって、戦闘スキル以外にもあるの?」

「さぁな。でも、あってもおかしくはないと思うぜ?」


 ウォンさんは、そう言って不敵に笑う。

 知らないけれど、ありえないとは思っていないって感じだ。

 実際、試してみなければわからないことでもあるし……試してみるしかないかな?


「もし、あるんだったら。<戦闘採取術>をサポートするようなスキルが作れれば、もっと戦いを有利に出来るかもしれない」

「ふむ。それで?」

「えっと……<採取><鑑定><予見>って見ることに対してそれぞれ強化されるんだよね」

「聞いた限りはそうだな」

「だから<鑑定>で対象の状態を把握して、<採取>で採取可能部位を特定。<予見>で攻撃をした後の状態を知ることが出来れば……」


 でも、そのためにはもう少し何かが足りない気がする……。


「足りない部分は<集中>で補え」

「え?」

「<集中>の効果は精神だけじゃない。手先の力みなんかも補正で和らげられる。鑑定から採取、集中、予見が繋がればスキルになる可能性はあるだろうな」

「ほ、ホント!?」

「だが、どうやってそれを鍛えるか、だな」

「うぐっ」


 戦闘スキルであれば、意識しながら戦っている間に最適化されるみたいなんだけど……。

 これ、戦闘補助のスキルだからなぁ……。


「ま、そうだな……。とりあえず案山子(かかし)でもやるか」

「え、案山子でいいの?」

「アレにも弱い所はあるからな。流れを意識しながら、弱点を探って殴る。これでなんとかなるかも知れないぜ?」


 そう言われたらそんな気がしてくる。

 と言うか、そんな単純な……って思いもあるけど、今はそれしかないしね。

 「よし」と、小さく気合いを入れ直して、ウォンさんと2人で場所を移ることにした。



「まずは<鑑定>だ」

「うん!」


 後ろに立つウォンさんの声に頷きつつ、目の前の案山子へ<鑑定>の発動を意識する。


 [案山子――(わら)で出来た人型の人形。]


「あ、鑑定出来た」

「そりゃできるだろ」

「いや……敵に対して鑑定するの初めてだったから」

「まぁ、やる意味も特にないしな」


 えっと、鑑定したら次は……<採取>スキルを使うって意識しながら、全体を見る。

 むむむ……特になにも反応しない?


「採取出来るところが見当たらないかも」

「まぁ、完成品だしな」

「そういうものなの?」

「さぁ? そんじゃコレでも刺しとくか」


 ウォンさんは案山子のそばまで行くと、インベントリから取り出した草を無造作に差す。

 僕から見て反対側だから、正確な場所はわからないけど……それを取れってことかな?


「<採取>、<採取>……」

「<採取>だけじゃなく、<鑑定>と<集中>も合わせて使うイメージだ」

「あ、合わせて使う……」


 鑑定しつつ、採取出来る箇所を探し、違和感を覚えた瞬間にそこを集中して見つつ鑑定を繰り返して……。

 唸りながら何度も繰り返すと、次第に何のスキルを意識しているのかが分からなくなってきた。

 あー……頭が、混乱してきてるうぅぅぅ……。


「っうぇ……」


 頭の使いすぎか、なんだか熱が出てきたときのように意識がふわふわしはじめる。

 次第に足に力が入らなくなり、僕はがっくりと地面へ両手を下ろした。


「ううぅ、う……」

「あー、こりゃダメだな。今日の所は止めとけ」

「うぇぇ……」


 ウォンさんの言葉によくわからない返事を返しながら、僕は地面に腰を落とす。

 なんだって急にこんな……。


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