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【コミックス3巻発売中!】採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~  作者: 一色 遥
第2章 現実と仮想現実

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103. じっくりコトコト

「まずは……、シルフ」

「はいっ!」

「鍋をコンロの上にお願い」


 僕のお願いに笑顔で頷いて、彼女はいそいそと鍋をコンロの上に置いた。

 その間に僕はインベントリからルコの抽出液を取り出して、作業台の上に置いていく。


「抽出液を鍋の中に入れて、火にかける……」


 呟きながらコンロ代わりの魔石に魔力を込めて、火をつける。

 後はじっくりコトコト煮込むだけ……。


「上手くいけばいいんだけど……」

「今は上手くいくと信じましょう」


 シルフの言葉に「そうだね」と頷いて、ゆっくりとお玉でかき混ぜていく。

 きっと上手くいく。

 確信はないけれど……、そう思うだけで、成功する気がしてきたぞ。


 中火でじっくり煮込んでいくこと数分、少しずつ湯気も上がり、ほのかにスーッとするような匂いが立ち始めた。

 鼻に刺激があるというわけではなく、本当に少しだけの匂い。

 これはこれで、芳香剤みたいに出来れば使えそうな匂いかも。


「なんだか、カザリ草みたいな匂いだね」

「ですね。でも、カザリ草よりは匂いが優しい感じがします」

「カザリ草は、切ったらすごい匂いが強かったからね……」


 そんな話もしながら、香り立つ匂いに鼻をくすぐられつつ、ゆっくりとお玉を回していく。

 沸騰し始めてから数分ほどで、だんだん鍋底に粉のようなものが見え始めた。

 もしかして、これが『塩』の代わりになるものなんだろうか……!


「アキ様! アキ様!」

「出来てきたね!」


 鍋をのぞき込んではしゃぐシルフに答えつつ、お玉を動かしていく。

 熱さで手を離したいけど、混ぜないと焦げちゃいそうだし。


「シルフ、ちょっと布を取ってー。前にアルペ搾る時に使ったやつ」

「あ、はい!」


 ほとんど水がなくなったタイミングで火を止めて、かき混ぜつつゆっくり冷ましていく。


「小さい鍋に、布を張って……」


 その上から冷ました元抽出液を鍋から移していく。

 かき出すように中身を全部出して、布の端を持ち上げて……一気に絞る!

 ほとんど無かった水分が絞り出されるように、鍋の中に。


「あとは、もう少し残ってる水分を飛ばさないと……。シルフ、お願いできる?」

「お任せください!」


 布を開いて、日の当たる窓の傍に置く。

 窓を開けたら飛んで行っちゃうかもしれないから、窓は開けずにシルフに優しく風を当ててもらってっと……。


「なんとかできたね……」

「はい……」


 途中、布が浮きかけたり、粉が固まったまま飛んでいきかけたりと、何度も危ない状態になったけど……。

 なんとか、ほとんど減らずに残せたのは良かった……。


「さて、アイテムとしては……」


 僕は乾燥して粉になった元抽出液を、ひと掴みして手のひらの上に置き、アイテムの詳細を出してみれば……。


[食用中和剤:刺激を中和する成分を固めた粉末

主に口に入れるものに使われる]


「お、おぉ……!」

「……!」


 シルフと2人、顔を見合わせて声にならない想いを顔に映す。

 これで、これで出来るかもしれない!


「シルフ、やろう!」

「はい!」


 急かされるように鍋を洗い、水を張った。

 すかさず、薬草を入れようとして……はたと思い止まる。

 そして、薬草を作業台の上に置いて、僕は鍋を火にかけた。


「多分、だけど……」


 ある程度温まって湯気が出始めたタイミングで[食用中和剤]をひと掴みほどいれる。

 それが溶けたのを確認してから、刻んでいない薬草をお湯の中に漬けていく。

 お玉で薬草の上からお湯をかけつつ、全体が浸かるように調整。

 あとは、温めつつ状況を見て……。


「お!」


 沸き立つように気泡が薬草の至る所から上がってくる。

 まるで炭酸飲料の泡みたいに見えるけど……。


「うわ……、ちょっとこれ大丈夫……?」

「す、すごいですね……」


 まるで、沸騰してるんじゃないかって思うくらい激しく上がり始めた気泡と音に、火を切って、2人とも鍋から距離を取る。

 お玉でかき混ぜれないけれど、この状態ならもう特には……。


 数分ほどして、泡がおさまってきたのか音が静かになってきた。

 ゆっくりと近づいて中を見てみると、少し紫かかった色の水に変わっている……。

 これは、いったい……?


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