【Kieth・Leonardo First class soldier(キース・レオナルド一等兵)】
俺の名前はキース・レオナルド。
フランス外人部隊に入る前、俺はメキシコ出身のモトクロス選手として、16歳の時にSUZUKIとプロ契約を交わし北米のスーパークロスなどで活躍を期待された。
そして優勝経験はなかったが常に上位を走る“将来性のあるライダー”と注目されるようになった。
調子の良い時は、レース序盤にチャンピオンたちの前を走る事も度々あった。
しかし速い反面、怪我も多くて結局一度も優勝できないまま22歳でクビになり、それから活動地域をヨーロッパに移した。
人工的に作られたコースの多い北米と違って、森や牧場の一部をコースとして改造されたヨーロッパのコースは俺に合っていて、直ぐにYAMAHAと契約を交わし表彰台の常連にもなれた。
そしてついに夢にまで見たパリダガールラリー出場のオファーが来た。
その時のことは、今でも忘れない。
丁度シーズンが始まって3戦目に転倒した時に利き腕の左肩の骨を折り、入院していた時にチームマネージャーがその朗報を持って来た。
“今シーズンは棒に振ったと諦めて、パリダガで再起を掛けてみないか”
肩のリハビリは思いのほか上手く進まなかった。
夜も眠れないほどの鈍い痛みが四六時中ついてまわり、利き腕ではない右手では持つフォークやスプーンも上手く扱えない。
つのる苛立ちのなか、当時付き合っていたガールフレンドが、知り合いから良い薬をもらって来てくれた。
その薬を飲むと、痛みが取れるばかりか疲弊していた心にも希望が湧いて来てリハビリも苦にならなくなり、思いのほか退院も早くなった。
高い薬らしかったが、薬を飲むと練習でも好タイムが出せてチームも早い復帰を喜んでくれていた。
だが、それも続かなかった。
ガールフレンドが買ってきてくれたその薬は、違法ドラッグ。
レース後の尿検査でそれが発覚して、俺はチームを追われるだけではなく、レースの世界からも追い出されてしまう羽目になった。
ガールフレンドとも別れた俺は、パリでバイク便のアルバイトをしていた。
子供の頃からバイクばかり乗っていて、他に何もできなかったから。
ある日、図書館へ配達に行ったとき、そこで銀髪にオッドアイの美女を見かけて一目惚れ。
この図書館は俺の配達エリアの中でも、ほぼ毎日立ち寄る所。
彼女は決まった日の決まった時間に図書館に来ることが分かった。
職員なのかと思っていたが、職員に聞いたところ、ナトーと言う兵隊だと言う事が分かった。
フランス陸軍の兵隊なら国籍の違う俺には高嶺の花だと諦めていたところ、配達で寄ったフランス外人部隊の本部で偶然にも彼女を見かけた。
いつもの綺麗な感じではなく、軍服を着た凛々しい彼女。
“ひょっとしてコスプレなのか?”と思うほど、キリっとしていて、まるでアクション映画に出て来るヒロインみたいだった。
当然彼女が外人部隊に居ると分かった俺は、バイク便を辞めて外人部隊に入隊した。
入隊して直ぐに彼女を探したが、普通科連隊の中のどこを探しても彼女は見つからなかったし、誰に聞いても女性隊員など居ないと言われた。
しかし、ある時偶然また彼女を見かけた。
合同演習の時、俺たちの部隊は特殊部隊のLéMATの援護を受けながら作戦を遂行するミッションを与えられた。
そしてそのLéMATの中でも最強と噂される第4分隊に彼女がいた。
そう彼女の名はナトー。
ナトー1等軍曹。
俺はLéMATに入りたい一心で、1度落第した空挺の再試験を受けギリギリで卒業した。
ただ空挺の試験に受かっただけではLéMATには配属されない。
銃の成績や格闘技それに体力や知識が、ずば抜けていないと推薦されない。
俺は体力には自信があったが、格闘技は普通科でも中くらいの成績だったし、銃の方はここに入るまで触った事も無かったので成績は悪かった。
もちろん何の知識もない。
できるのはバイクの運転だけ。
バイクによる偵察部隊もない、ここではその能力は無用の長物。
それでも俺は給料を溜めて中古のKTMを買い、休日に演習場を走り回っていた。
ある日それを見ていたLéMATのハンス中尉が俺の利き腕が左であることに目を着け、走りながら射撃の訓練をするように進められSIG MPV-Pを与えられ、その1年後にコンゴで彼女の部隊の補給係をするチャンスが巡って来た。
あの時はもう天にも昇る気持ちで、毎日補給に行くのが本当に楽しかったし、綺麗な泉の傍で野営することになった日には彼女から水に浸かって帰ると言いと優しい声を掛けてもらった。
そんな俺に欠員の出たLéMATに偵察要員として配属されることになった。
俺を拾ってくれたハンス隊長。
そして部隊では女性扱いは御法度だけど、密かに想いを寄せるナトー分隊長のために俺は森を駆けた。




