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十二杯目

「生徒の目が痛い。目立ちすぎくっそ吹いた」


 現在地点は正門前。学校前。道行く生徒がちらちら見てくるうぜー。ってか、スカート嫌だ。スースーするし、めっさ視線を感じるんだもの。イジメられていても、やはり容姿が目立つせいか男共に人気はありそうだ。

 予想するに、女子の圧力が大きくて大っぴらに騒げない……たぶんね。


 そう、ちなみに隣に孝はいない。ぼっちー&イジメられっ子の自分を鑑みて、とりま孝に火の粉が降り懸かるのを厭うたからだ。孝は渋ったが納得させた。詭弁万歳。

 孝の出した条件、せめて公共交通機関は一緒に乗るぞ、というのだけはこちらも飲んだ。実際問題、電車に乗ろうとすると身体が少し……ね。

 そんなことはどうでもいい。どうでもよくないけど、どうでもいい。今考えなければならないのはイジメだ。これにどう対処するか、それが問題だ。

 準備はしてきた。上履きは案の定持ち帰ってるようだ。隠されたり、イタズラされたりするんだろうね。

 やりやすいじゃないか。

 んじゃ、そろそろ。


千里せんり、いっきまーす」

 

 ……生徒にすごい目で見られた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 勝手しったる他人の家。ならぬ学校。しからば。アルミのロッカーが、生徒全員分ある場所。


「げた箱前、遠くでこちらを伺うバカ共3名。仕掛けられているのは確定的に明らか」


 のぞき込んでいるのは……残念ながらうちのクラスの女子だね。悪い奴らじゃなかったはずなんだけど。

 固まって。こっちを見ながら話し合って。趣味が悪い。

 生徒が明らかにオレを避けて通っている。これは恒例行事なのかしらん。

 考えても仕方がないと思われなので、さっさいこうと思います。吉とでるか、凶とでるか。虫でも入ってたら投げつけようと思う。

 いざゆかん。


 せいっ! 


 ロッカーを開けた。

 カレーまみれだった。

 思考が停止した。

 遠くで笑い声が聞こえた。

 カレーまみれだった。

 香辛料の匂いが香った。

 わけがわからなかった。

 カレーまみれだった。

 手で掬ってみた。

 劇辛だった。

 この味はスパイスから調合したカレーだ。

 美味しい。

 ご飯プリーズ。

 要するに。

 美味しい劇辛カレーでロッカーが一杯だった。


 ぷちん。


 この所業、許さでおくべきかぁ!!


「そこにいる女子3人!! オレにこのカレーのレシピを教えろください!!」

「「「ええぇぇーーーーー!?」」」


 間違えた。

 ……まぁこのカレーのレシピを知ることに比べれば些細なことだ。

 笑顔で詰め寄ってみた。


「はぁ!? あんた馬鹿なの!?」

「死ぬの!?」

「カレー臭いよ!?」

「本望だ!!」

「「「変態だ!?」」」

「いいからとっととレシピを吐けやボケカスゥウウ!!」

「ひぇっ! 知らないわよ!」

「濱屋あんたよねこれ持ってきたの!」

「私に振らないでよぉ!」

「濱屋さん! あなたのことが前から好きでした!」

「「「嘘をつけ!!」」」


 仲が良いよね、さっきから。

 彼女たちはうわぁーん、と半泣きで逃げ出してしまった。ふぅ。


「計画通り」


 ニヒルな笑みを浮かべても、誰もツッコんでくれなかった。


 生徒の唖然とした顔が気持ちいいぜぃ。


 ……やりすぎちゃった、テヘッ。

 オロロロロロロロロ……

 とりあえず、教室に行こうと思う。


 オレは滑り止めのついた階段を上り始めた。


短いのであとでもう一話投稿します

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