シフォンケーキ①
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「よし! 終わった!」
午前の講義が全て終了し、僕は思わずガッツポーズした。
それはそうだろう。
今日は午後からこよみさんとシフォンケーキを作るのだ。
こよみさんはケーキ類が好きだから、シフォンケーキも絶対喜んでくれるはず。
そんなこよみさんを想像していると。
「上代くん、ちょっと」
教室の出入り口で、僕を手招きする紫村先輩がいた。
……先輩はどうしても僕の邪魔をしたいようだ。
とはいえ、ここで無視しても絶対面倒なことになるだけだ。
とりあえずここは、先輩の話だけ聞くことにしよう。
「……先輩、何の用ですか?」
「え、ええ!? 上代くん、そんな睨まないでよ! ホ、ホラ! 今日は私だけじゃないし!」
「どういうことですか? ……って!?」
「えへへ、耕太くんお疲れ様」
先輩の後ろからヒョコっと現れたのは、僕の世界一の恋人、こよみさんだった。
「こよみさん! 迎えに来てくれたんですか!」
「う、うん……もちろん、それもあるんやけど、ちょっと耕太くんと飯綱先生に相談したいことがあって……」
「相談したいこと? 僕達にって……」
こよみさんと先輩が僕と飯綱先生に相談したいということは、例の“ヴレイヴハート”に関すること……かな。
「……分かりました。では、研究室に行きましょうか」
「うん!」
僕達は、急ぎ研究室に向かった。
◇
「ふむ……結局、得られた情報はその“ヴレイヴハート”に関するマニュアルのみ、ということか」
飯綱先生はしげしげと眺めながら、顎をつまみながら思案する。
「まあ、一応はその技術部主任も“資料”とは言うとったけどな」
「だが、ざっと目を通した限りでは、使用方法やカタログスペックを示しただけの、まさにマニュアルというべきものでしかないが」
「そうね、私もそう感じたわ……結局、私達が知りたいことは、何一つ分からなかったってことよ……ああもう! 考えただけで腹が立つ!」
そう言うと、先輩はバシバシとそのマニュアル? 資料? を手で叩いた。
うーん、先輩、かなり苛立ってるな。
「とにかく、私のほうでもう少し内容を読み込んでみよう。何かヒントが見つかるかもしれんしな」
「ええ……私達は、引き続きあのフザケた技術部主任を痛い目に遭わせてでも情報を引き出してみるわ」
「そんなんしたらアカンっちゅうねん……」
先輩の好戦的な言葉を聞き、こよみさんは頭を抱える。
「まあまあ先輩、押すだけが交渉じゃないですよ? とりあえずはその技術部主任と良好な関係を築いて、それから情報を聞き出してみては?」
「なによ! 上代くんは私に美人局をしろっていうの!」
「い、いや、そういうわけでは……」
ダメだ、先輩の頭に血が上っていて、話を聞いてもらえない……。
「コラ、耕太くんに絡んでどないすんねん!」
「だってえ……」
こよみさんにたしなめられ、さすがの先輩も引き下がった。
「ほな飯綱先生、お願いしてよろしいやろか?」
「ああ、任せてくれ。何か分かったらすぐに連絡するよ」
「お願いします」
僕達は飯綱先生にお願いし、研究室を出る。
「じゃあ私は、司令本部に戻ってもう少し探ってみるわ」
「それはええけど、さっきも言うた通り、ムチャなことしたらアカンで」
「分かってるわよ」
そう言うと、先輩は手をヒラヒラさせてその場を去った。
「さて、ほなウチ達も……」
「はい。まずはスーパーで材料を買って、それから、シフォンケーキを一緒に作りましょうね」
「うん! 楽しみ!」
◇
「今日はせっかくなので二種類作りましょう。プレーンとチョコで」
「はわあ! ウチも頑張る!」
スーパーで買い出しを終え、部屋に戻ってきた僕達は、早速シフォンケーキ作りに取りかかる。
まずは板チョコを包丁で細かく刻み、ボウルに菜種油と一緒に入れたら湯煎してしっかり溶かす。
次に、卵八個を卵黄と卵白に分けて、卵白のほうを冷凍庫で一〇分冷やす。
「じゃあこよみさん、この卵黄を泡立て器で混ぜてもらっていいですか? そこにまた材料を入れていきますので」
「うん! まかしとき!」
こよみさんがフンス! と意気込む。
なんですかそれ。僕へのご褒美ですか? もう一度お願いできますか?
で、卵黄の入ったボウルに砂糖を加えて泡立て器でよく混ぜたら、そこに菜種油を加え、全体に馴染むまでさらに混ぜる。
さらにここに牛乳を加えてよく混ぜて、と。
「うん。じゃあ今度はこれを半分ずつに分けますね」
「え? なんで?」
「半分はプレーンに、もう半分はチョコにしますから」
「あ、なるほど」
ということで、半分を別のボウルに移したら。
「それじゃ、まずこちらのボウルに小麦粉を入れますね」
僕はボウルに小麦粉をふるいながら加える。
「じゃあダマがなくなるまで混ぜてください」
「うん!」
こよみさんがダマがなくなるように丁寧にしっかりと混ぜる。
「そうそう、上手ですよ」
「えへへ、耕太くんに褒められた」
そう言って、こよみさんがはにかむ。
ダメだ、こよみさんが可愛すぎて我慢できない。
僕はこよみさんの傍に寄り、こよみさんのその柔らかいほっぺにチュ、とキスをした。
「はわ……もう」
と言いながら、こよみさんは頬を赤らめながら微笑んだ。
「あはは。じゃあ次は、こちらも小麦粉とココアを入れときましたので、同じようにかき混ぜてください」
「うん、分かったよ。……その、コッチも上手にできたら、その……」
「はい、じゃあ反対側にキスしますね」
すると、こよみさんは口元を緩めながら、一生懸命混ぜ合わせる。
「うん、こちらも上手にできました」
そう言うと、僕は今度は反対側の頬にキスをした。
「えへへ……ありがと」
違いますよこよみさん、最高のご褒美をいただいたのは僕のほうですから、ね?
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の朝投稿予定です!
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