君の想いが、料理が、ウチを強くする
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「ハア……ハア……!」
僕達は司令本部のあるフロアへ向け、全速力で階段を駆け上がる。
だけど……。
「今で二十五階……まだあと七階もある……」
僕は階段の上を見上げながら、独り言ちる。
本当はエレベーターを使えればいいんだけど、何があるか分からないから……って、弱音を吐いている場合じゃない。
僕は気合を入れ直すため、思いきり両頬を叩いた。
その時。
——ぐう。
ん? 今の音は?
僕は思わず隣を見ると、こよみさんが顔を真っ赤にしながら俯いていた。
「え、ええと、こよみさん……?」
「は、はわ……ウ、ウチも不謹慎やとは思うんやけど、その……」
こよみさんの声が、どんどん消え入りそうになる。
はあ……僕のこよみさんはどんな時だって可愛いなあ……。
尊みが溢れすぎてもはや天使……いや、女神です。
僕は自分のカバンをゴソゴソと漁り、そして。
「はい、こよみさん」
「はわ! 耕太くんこれって……」
「はい、おにぎりです」
いつお腹が空くか分からないので、簡単に食べられるようにおにぎりをラップに包んで用意しておいたのだ。
「はわあああ……ゴクリ」
こよみさんがおにぎりを凝視しながら唾を飲み込む。
「あはは、どうぞ召し上がれ」
「うん! いただきます!」
こよみさんはラップをすぐに取ると、カプリ、とおにぎりにかじりついた。
「はむはむ……美味っ! メッチャ美味しい! この中の具は何なん?」
「はい、今回はマグロのしぐれ煮ですね」
「はわあああ! すごい! やっぱり耕太くんのご飯は最高や!」
走るスピードは緩めないけど、こよみさんが幸せそうな表情でおにぎりを頬張る。
「チョットチョット! 私だってお腹空いてるのガマンしてるんだけど!」
「ふ、そうだな。私もそのおにぎりを食べたいところだ」
「おうおう耕太! 俺達の分はねーのか?」
おっと、三人からジト目で睨まれてしまった。
「はい、もちろん皆さんの分も用意してますよ」
カバンからおにぎりを三個取り出し、それぞれに配る。
「やったー! それじゃ早速……ナニこのおにぎり! すっごく美味しいんだけど!」
先輩がおにぎりを頬張ると、大絶賛してくれた。
けど、普通のおにぎりなんですけど……。
「……………………(モグモグ)」
そして飯綱先生は一言も発せず、ただ無心におにぎりを頬張っている。
でも、その口元はかなり緩んでいるので、どうやらお気に召したようだ。
「ヤベ、耕太のおにぎり超美味え……こんな彼女欲しいかも……」
「アカン! 耕太くんはウチのものや!」
イ、イヤイヤこよみさん、さすがに僕も男の人はないですから……。
と、とにかく、皆さんが喜んでくれて良かった。
「はあ……メッチャ美味しかった……」
「ホントねー!」
「うむうむ……もっと食べたいが……」
「シルバーって、意外と食い意地張ってるのな……」
食べ終わった四人が、思い思いにおにぎりについて語るのを聞き、僕は思わず口元を緩める。
やっぱり、僕のご飯を食べて喜んでくれると嬉しいなあ。
「うん! これで完璧や! 耕太くんのご飯を食べたウチは無敵や!」
「あはは、それは言い過ぎじゃ……」
すると、こよみさんは急に真剣な表情になって僕を見つめる。
「? こよみさん?」
「今のウチが言った言葉はホンマやで。ウチは……ウチは耕太くんがいるから強くなれる。耕太くんのご飯があるから強くなれる……! “君の想いが、料理が、ウチを強くする”んや!」
こよみさんの言葉に、僕の胸が熱くなる。
「こよみさん……はいっ!」
「ん! よっしゃ!」
僕とこよみさんは見つめ合いながら、強く頷き合った。
その時。
「グゲゲゲゲゲゲゲ!」
「キリキリキリキリ!」
「ブオオオオオオオ!」
階段の上から、大量の怪人が現れた。
「……おでましのようだな」
「ええ……多分、改造手術を終えるまでの時間稼ぎ、ってところかしらね」
僕達は脚を止め、怪人達を見据える。
「耕太くん、どうする……?」
「……時間がありません。怪人達の壁を正面から突き破ります」
「……せやね」
僕達は全員頷き、そして。
「「「「変身!」」」」
ヴレイウォッチをかざし、四人がヴレイファイブへと変身した。
「上代くん! 正面の突破は私が請け負った! くらえ! “サウザント・ワン”!」
そう叫ぶと、飯綱先生が回転しながら怪人の群れの中を突っ切っていく。
「っ! 僕達も後に続きます!」
遅れないように僕達も飯綱先生が切り開いた道を駆け抜ける。
「邪魔や! “ブリューナク”!」
「もう! 鬱陶しいわね! “トゥエルブ・ウィッチ”!」
横から挟み込むように迫る怪人を、こよみさんと先輩が蹴散らして道を維持する。
「オラオラアッ! 俺も負けてらんねーぞ!」
殿を務める青乃さんがガトリングガンを……って、ガトリング!?
「くらえ! これがあの脳味噌博士からもらった俺の武器、“タスラム”だ!」
青乃さんがそう叫びながらガトリングガンのトリガーを引くと、バレルが高速に回転し、銃口から勢いよく弾丸が射出された。
「「「グガガガゲゲゲッ!?」」」
多くの怪人達がまるで壊れたマリオネットのように不自然な方向に手足を折り曲げながら、バタバタと倒れていく。
こ、これ、とんでもない武器じゃないか!?
「ハーハハハ! さすがは対怪人用の特製弾丸だぜ!」
うわあ……青乃さんのキャラが変わっちゃってる……。
すると。
「っ! 見えた!」
先頭を突き進む飯綱先生が叫び、突撃体勢を解いた。
「怪人達の群れの最後尾まで来た! みんな急げ!」
飯綱先生は振り向きざま最後尾の怪人達を二本のショーテルで乱切りにしていく。
その様は、まるで舞踏を見ているかのように幻想的だった。
「ウチ達も!」
「ええ!」
こよみさんと先輩も、飯綱先生に負けじと“ブリューナク”と“トゥエルブ・ウィッチ”を振り回す。
「耕太くん!」
「はい!」
こよみさんが伸ばす手を、僕は強く握りしめると。
「やああああああ!」
「う、うわっ!」
こよみさんが“ブリューナク”を前方に構えると気合一閃、一気に飛び出して怪人達を弾き飛ばしながら僕を連れて最後尾に到達した。
「私も行くわよ!」
振り返ると、先輩が“トゥエルブ・ウィッチ”をまるで空中へと続く階段のように平行に並べると、その上を駆け抜け、そして、先輩も最後尾に辿り着いた。
後は。
「青乃さん! 早く!」
「おう! オラオラ! そこを退きやがれ!」
青乃さんはガトリングガンを振り回しながら怪人を薙ぎ払うと、最後尾へ到着した。
「さあ! 急ぎましょう!」
「うん!」
僕達は怪人達から逃げるように階段を登っていき……って!?
「あ、青乃さん!?」
なぜか青乃さんは、階段の前で仁王立ちし、怪人達にガトリングガンを向けていた。
「青乃さん! 何してるんですか、早く!」
僕は叫んで青乃さんに早く来るように促す。
だけど。
「俺はここでコイツ等を足止めする! お前達は先に行け!」
「はあっ!? 何言ってるんですか! これだけの大群、青乃さん一人で抑えられるわけが……!」
「いいから! 時間がねえんだろ! だったらお前達がちゃっちゃと高田光機のヤロウをサクッと倒して、すぐに戻って来い!」
青乃さんは僕達に振り向くことなく、ひたすらガトリングガンを怪人に向けて撃ち続ける。
「上代くん!」
「っ……分かりました! 青乃さん、すぐに戻って来ますから、絶対に死なないでくださいよ!」
すると青乃さんは、無言のまま左拳を突き上げた。
「みんな! 行きましょう!」
「ええ!」
「ブルーの心意気、無駄にせんぞ!」
「ウチ達は高田光機も怪人達も全員倒して、みんなで帰るんや!」
「みんな……行けええええ!」
僕達は青乃さんに背を向けると、振り返らずに上を目指す。
——最後の敵、高田光機を目指して。
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