開戦
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■ガネホッグ視点
「岐佐大尉、全員配置に就きました!」
「うむ」
部下からの報告を受けた後、私は司令本部があるビルを見据える。
時刻は深夜三時半。
あと三十分で戦闘が始まる。
私はポーチから無線を取り出し、通話をオンにすると。
「こちら岐佐。定刻通り〇四〇〇にて作戦を開始する。ついては隊員達に一つだけ伝えておく……」
『…………………………』
無線の向こうで、隊員達が息を飲み静かに私の言葉を待つ。
「いいか……身の危険を感じたら速やかに退避、自身の生存を最優先にしろ。君達の退路は……この私が確保する!」
『っ!? そ、それはっ!?』
「以上だ」
私は無線を切り、ポーチへとしまった。
「大尉……」
「フ……私もむざむざ死ぬつもりはない。だから、君ももしもの時は速やかに逃げるのだぞ?」
「ハ……ハッ!」
部下は敬礼をすると、自分の持ち場へと向かった。
さあ……彼女達、ヴレイピンクや上代くん達はもう裏口に配置しているだろうか……。
その時。
——ピリリ。
こんな時に無線!?
一体誰が……。
「こちら岐佐」
『た、大変です! 背後から怪人達が突然……グワッ!?』
「どうした!? 応答しろ! おい! ……クソッ!」
やられた!
連中、私達の配置が終わってビル正面に集中していることを見計らい、それを逆手にとってきたか!
「全隊員に告ぐ! 速やかにビル前に集結! 密集陣形を取り、怪人達を迎え撃つぞ!」
『ハッ!』
私は無線を切ると、ビルの正面へと走り出す。
すると。
「ジャアアアアア!」
「クケケケケケケ!」
「ギュオギュオ!」
怪人達が一斉にビルの中から飛び出してきた!?
バカな! 怪人は我々の背後をついて正面は手薄になっていたのではないのか!?
「クッ!」
私はガネホッグへと姿を変えると、現れた怪人達に向け、私の体毛を硬質化させた無数の針……“インドラニードル”を一斉に放つ。
「「「「「ギャアアアアアア!?」」」」」
針は先頭にいた怪人達に次々と突き刺さり、そのまま怪人は崩れ落ちるが、その怪人の屍を蹂躙しながら、後続の怪人達が襲い掛かる。
「バオオオオオオオオオオ!」
私は丸太のような鼻を振り上げると、怪人達を横薙ぎに払う。
怪人達はひしゃげながら吹き飛ばされるが、やはり怪人達の勢いは一向に止まらない。
クソッ! 怪人とはいえある程度の理性があるはずなのに、これではまるで操られているかのように……ハッ!?
「フフ……正解ですよ」
突然聞こえた女の声がする方向……上空へと視線を向けると、そこには大きな翼を広げて羽ばたくグリフォニアがいた。
「グリフォニアアアアアアアア!」
「フフフ……アハハハハハ! あなた方の行動は全て筒抜けでしたよ! いくら吠えたところで、もはや形勢は変わりませ……ムッ!?」
その時、グリフォニアの翼から突然、キン、と甲高い金属音がした。
「大尉! お待たせしました!」
振り返ると、隊員達が集結して怪人達に向かって対怪人用小銃“グラム”の銃口を向ける。
「てぇっ!」
そして、銃口が一斉に火を噴き、無数の弾丸が怪人へと射出されると、怪人はハチの巣となってバタバタと倒れた。
「ふう……小癪ですね。矮小なただのニンゲン如きがっ!」
グリフォニアが牙を剥き、隊員達へと襲いかかる。
だが。
「……グリフォニア、貴様の相手はこの私だ」
「ガネホッグウウウウウウウ!」
グリフォニアが私の名を大声で叫ぶと、その巨大な爪を私目がけて振り下ろす。
だが、私は体毛を硬質化させ、グリフォニアのその爪を受け止めた。
「グ、ググ……!」
「……チッ、やはり力はキサマが上ですか……!」
そう言うと、グリフォニアは羽ばたいて上空へと退避する。
「フフ……まあ、まともに相手をする必要はありませんね」
「…………………………」
私は上空のグリフォニアを見据え、静かに左腕を向ける。
“インドラニードル”をグリフォニアへと放つために。
その時。
「むっ!」
「「「「「ギー!」」」」」
今度は戦闘員達が一斉に現れ、私に向かって突撃してくる。
……まるで、特攻だな。
私は戦闘員を薙ぎ払おうと長い鼻を振り上げると、戦闘員へと叩き付け……。
——ドゴオオオオンン!!
突然巻き起こった激しい爆音とともに、私の身体が吹き飛んだ。
「グウウウウ……い、一体何が……!」
「フフフ、オマエは戦闘員に仕込んである爆弾で吹き飛ばされたんですよ。どうですか? といっても、既にかなりのダメージを負っているようですが?」
クソ……! まさか、本当に戦闘員に特攻させるとは……!
私は全身に負ったダメージの状況を確認する。
両手……動く。
両脚……動く。
うむ……まだ……闘える!
「バオオオオオオオオオオ!!!」
私は周囲に響き渡るほどの雄たけびをあげると、両脚に力をこめ、立ち上がった。
「フフ……そうですか、そんなに死にたいですか。分かりました……さあ、戦闘員達! ガネホッグに突撃するのです!」
グリフォニアの合図に、戦闘員が一斉に……いや、一人の戦闘員が飛び出して私に突進してきた!
私はその戦闘員へと左腕を突き出した、その時。
——なぜか、戦闘員が踵を返した。
「これは……」
「む……何をしているのです! ガネホッグは反対ですよ!」
グリフォニアが戦闘員に向かって叫ぶ。
だが……戦闘員は自分のマスクに手をかけ、そして一気に剥がした。
「ギギ……」
戦闘員の顔はツギハギだらけで、その眼球はグルグルと左右別々に動いていた。
だが、この男は……。
「ギ……ガ……オ、レ、は……セイ、ぎ、の、ヴれい……ヴ……ヴヴヴヴヴヴヴうううウ!」
そう叫ぶと、マスクを剥いだ戦闘員は、同じ戦闘員達へと突っ込んでいった。
そして。
——ドゴオオオオオオオオオオオオ!!!
戦闘員の一人に体当たりすると、連鎖的に次々と爆発し、戦闘員は全て吹き飛んだ。
「な……!? 戦闘員の分際でえええええええ!」
グリフォニアがその惨状を見て激昂する。
「くそっ! こうなれば、この私がガネホッグを……………………え?」
こちらへ向かってこようと身構えたグリフォニアだったが、急にその動きが止まり、困惑の表情を浮かべる。
「ほ、本当ですか!? はい……はい……かしこまりました」
……どうやら、高田光機からグリフォニアに通信が入ったようだ。
「クッ! ……命拾いしましたね……」
私を睨みながら忌々し気にそう呟くと、グリフォニアは飛翔してこの場を去った。
「陽動は成功した、か……」
私は安堵の溜息を吐き、今なお戦闘を続けている部下達を見やる。
怪人達は部下達の攻撃により、既に大半が打倒されていた。
まあ、洗脳していたグリフォニアもこの場から去り、統制を取ることもできなくなっているのだ。
この様子なら、あと十分もすればここは制圧できるだろう。
「反町様……ガネホッグ、任務完了です」
私はまだ暗闇の上空を眺めながら、独り言ちた。
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次話は明日の夜更新予定です!
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