休暇④
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「え!? お父ちゃん!?」
「おー1 おかえりこよみ!」
まさか駅にこよみさんのお父さんが来ているなんて、思いもよらなかった。
ひょっとして、こよみさんがあらかじめ到着時間を連絡でもしていたんだろうか。
「な、なんでお父ちゃんが駅におるん!?」
あ、どうやら連絡はしてなかったみたいだ。
「そらそや! 何ちゅうてもこよみが彼氏さん連れて帰って来るっちゅうもんやから、朝から駅で張っとったんや!」
そう言うと、こよみさんのお父さんはいい笑顔でサムズアップした。
「かあー、ホンマしゃあないなあ……」
「ええやないか、そのおかげでタクシー代浮いたやろがな」
「そらそうやけど……」
「え、ええと、こよみさん……」
このままだと置いてけぼりになってしまいそうなので、なんとか割り込んでこよみさんに声をかける。
「あ、ゴ、ゴメン。コッチ、ウチのお父ちゃん」
「お! 君が耕太くんやな! こよみがお世話になってます!」
「あ、は、初めまして、上代耕太と申します。いつもこよみさんにはお世話になって……」
「わはははは! 堅苦しい挨拶は抜きや!」
そう言うと、お父さんは僕の肩をバシバシと叩いた。
何というか、豪快な方だなあ。
でも、すごく好感の持てる魅力的なお父さんだな。
「ホラホラ二人とも、ほな行こか」
こよみさんが僕とお父さんの背中を押して催促する。
「ああそやな。ほな車はコッチやで」
僕達はお父さんの後について行き、路肩に停めてある軽バンに乗り込んだ。
「よし、出発シンコーや!」
「わわ!?」
お父さんはアクセルを吹かし、急発進した。
「チョ!? お父ちゃん運転荒いで!」
「お、そうか?」
「そや! 耕太くんもいるんやさかい、安全運転して!」
「スマンスマン」
それからは、お父さんも運転に機を付けながら走行してくれた。
そして。
「ここがウチの家……『民宿桃原』や!」
「おお……」
こよみさんの実家は木造二階建ての大きな建物で、歴史と風情を感じさせる素晴らしい民宿だった。
「さあさ、中に入って!」
「し、失礼します」
僕は促されるまま民宿の中に入ると、着物を着た綺麗な品のある女性が出迎えてくれた。
「ようこそお越しくださいました」
「えへへ、ウチのお母ちゃんや!」
「はい、こよみの母です。いつもこよみがお世話になってます」
え!? こ、こよみさんのお母さん!?
だって、すごく若々しいし、まだ三十代……いや、二十代でもおかしくないですけど!?
と、とにかく!
「は、初めまして! 上代耕太と申します!」
僕はこよみさんのお母さんに慌てて挨拶する。
「ささ、長旅でお疲れやったでしょう? 部屋を用意してますさかい、まずは旅の疲れを癒してください」
「耕太くん、行こ!」
「は、はい」
僕はお母さんとこよみさんに促されるまま、部屋へと案内してもらう。
「こちらです」
「うわあ……」
案内された部屋はかなりの広さのある立派な和室の部屋だった。
「すぐお茶をお持ちしますんで、どうぞごゆっくり」
お母さんは部屋のふすまを閉めて席を外された。
「えへへ、どうこの部屋! うちの民宿で一番高い部屋なんやで!」
「そ、その、すごく良い部屋なんですけど、僕が利用してもいいんですか?」
「そらもちろん! 耕太くんはウチの家で最上のお客さんやもん!」
こよみさんが得意そうに満面の笑みで答える。
だけど。
「きょ、今日はお言葉に甘えてこの部屋を利用させてもらいますけど、つ、次からは普通に……」
「え、き、気に入らへんかった……?」
僕の言葉を聞き、こよみさんは急に不安そうな表情になる。
「あ、ち、違うんです。その……ぼ、僕をお客じゃなくて、こよみさんの家族として扱ってほしいというか……」
「あ……」
そう言うと、こよみさんは途端に顔を赤くする。
「で、ですので……」
「うん……えへへ、次からはそうするな……」
「はい……」
「失礼します」
ふすまが開き、お母さんがお茶を持ってやってきた。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ……ですが、ありがとうございます」
「へ?」
お母さんが僕にお礼を言うけど、一体……?
「失礼やと思いましたけど、先程のこよみとの会話、聞かせてもらいまして」
「あ、え、えと……」
「ふふふ……耕太さんはホンマにこよみのこと、大事に思ててくれはるいうんがよう分かりました。うちのこよみは幸せ者です」
「そ、そんな……むしろ僕のほうが……」
「ふふふ、ではお互い……ということで。それより耕太さん、せっかくですから、うちのお風呂に入ってください。吉野の山から温泉を引いた自慢の檜風呂なんですよ」
「そ、そうなんですね。ぜひ入らせていただきます」
「はい、ではごゆっくり」
そう言うと、お母さんは会釈をして部屋を出た。
「はあ……」
「耕太くん」
お母さんが退室されて軽く息を吐くと、こよみさんが僕に抱きついた。
「こよみさん」
「えへへ……ウチ、ホンマに幸せや」
「僕もです。お父さんもお母さんも、すごく優しい方で、こよみさんがこんなに素敵になったのも頷けます」
「えへへ、もう……ん……ちゅ……」
僕はこよみさんを産んでくれ、こんな素敵に育ててくれたご両親に感謝しつつ、愛おしいこよみさんにキスをした。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の夜投稿予定!
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