四人旅
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「さて、それじゃ行きましょうか」
「うん!」
大学も休みの土曜日。
僕とこよみさんは身支度を整え、部屋を出た。
「さあて、先輩は起きてますかね?」
「どやろ? なんか生活ルーズそうやん?」
「あはは、こよみさんもなかなか辛辣ですね」
先輩の部屋の前でそんな軽口を叩いていると。
「……聞こえてるわよ?」
ギイ、という音とともに先輩の部屋の玄関ドアがゆっくり開き、恨みがましそうにこちらを見ていた。
「あ、あはは、ええと……おはようございます」
「おはよう……で、ピンク。私に何か言うことはない?」
「え、さ、さあ、なんやろなあ? ヒューヒュー」
気まずくなったこよみさんは、先輩とは目を合わさずに明後日の方向を向きながら、鳴らない口笛を吹いていた。
「フン! あなただって上代くんがいなきゃ何にもできないくせに!」
「う、うぐっ!?」
先輩の放った言葉に、こよみさんは思わず胸を押さえる。
うん、そろそろ止めようかな。
「二人とも、飯綱先生が駅で待ってますからそろそろ行かないと」
「「はーい」」
はい、返事は息ピッタリで何よりです。
◇
「先生、おはようございます」
「うむ、おはよう」
今日も凛としたたたずまいで、駅の改札で待っていた先生と朝の挨拶を交わす。
「……ところで、この二人はどうしたんだ?」
「それが……」
僕と先生はチラリ、と横を見る。
隣では、こよみさんと先輩が睨み合いを続けていた。
「アカン! この玉子サンドはウチのや! 見てみい! ちゃんときゅうりも挟んである! つまり、これは関西風の玉子サンドっちゅうことや! なら、これは耕太くんがウチのために作ってくれたもんやさかい、ウチはこれを食べなアカンのや!」
「ハア!? ピンク一人で玉子サンドを独り占めする気なの! 大体、どの種類も四つずつ入ってるじゃない! ということは、上代くんは全種類をみんなで分け合って食べろっていう意味よ!」
そんな二人のやり取りを聞きながら、僕は思わず顔を押さえる。
「ええと……今日は朝早かったので、手軽に食べられるようにサンドイッチのお弁当を用意しておいたんですが……」
「ああ……今の会話で私も察したよ……その、上代くん……お疲れ様……」
先生から、心底同情するような視線を向けられながら励まされてしまった。
「ま、まあいい。それで、ハムサンドは入っているのか?」
「は? え、ええ一応作っておきましたが……」
「よし」
先生はそう呟くと、小さくガッツポーズをした。
「と、とにかく、もうすぐ電車の時間ですから、早く駅に入りましょう」
「う、うん、そやな……とりあえず、続きは電車の中でや」
「ええ……望むところよ」
「ふう……ハムサンドは私のものだ」
「「ハア!?」」
……そんなに人気なら、今度からもっと多めに作ってこよう。
◇
あれから僕達は合計二時間以上もの間、電車に揺られ続け、とうとう木更津までやってきた。
例のサンドイッチについては、もちろん皆さんが仲良く……仲良く食べました。
もちろん僕も、こよみさんが食べさせてくれました。幸せです。
「さて、それでここからどれくらいなんや?」
「ええと……歩いてだと三十分くらいね」
「結構距離があるな……どうする? タクシーでも使うか?」
「いえ、歩いて行きましょう。どこから足がつくか、分かりませんからね」
そう、そのために今回はモモも、先輩のヴレイモービルも使ってないし、ヴレイウォッチも部屋に置いて来たんだから。
「そうね……それじゃ行こうか。コッチよ」
僕達は、場所を知る先輩の後をついて行く。
しかし、こうやって見ると、木更津の街並みは、色々とマンションなんかが建ち並んだりしながらも、港だったり商店街だったり、昔ながらの風情があって、歩いていて心地いい。
今度は、こよみさんと二人で歩いてみたいな。
「えへへ、なあ耕太くん、ここ、また二人で来よっか」
「はい、僕もちょうどそう思ってたところです」
「うん、知ってる」
「あれ? どうして?」
「そらもちろん、ウチは耕太くんの彼女やもん」
何というか、その……大好きな人に僕のこと理解してもらえるって、本当に嬉しいな。
「はいはいソコ! イチャイチャしない!」
おっと、前を歩いていた先輩がいつの間にか振り返って僕達を見ていたのか。
「ふふ、まあそう言うな。二人は恋人同士なんだぞ?」
「それが余計にムカツクのよ!」
うん……確かに独り身の先輩に申し訳なかったかな。
「上代くん……今、失礼なこと考えてたでしょ?」
「い、いいえ!」
す、鋭い……。
「はあ……もういいわよ……それよりも」
先輩は急に真剣な表情になり、歩いている道の先にある一軒のあばら家を指差す。
「あれが……目的の場所よ」
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次話は明日の夜投稿予定です!
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