ヴレイヴハート③
ご覧いただき、ありがとうございます!
■飯綱江視点
「すまないな、急に呼び出して」
私は大学構内のカフェのテラス席で、三人に社交辞令の謝罪を述べる。
「いえ……それより、その……」
「……ああ、私はその可能性が高いと踏んでいる」
今回の研究室への盗難事件……あれは、十中八九“ヴレイヴハート”の資料を狙ったものだろう。
今も警察は捜査を続けているが、これといって盗難されたものは見つかっていないと言っていた。
しかも、たとえ小銭程度とはいえ、教授や助手達のデスクの引き出しにあった金銭の類は手つかずのままだというのだから。
「せやけど、それやったら一体誰が資料を狙ったんや? ひょっとして、ダークスフィアの連中が?」
「……いや、その可能性は限りなく低い。そもそもダークスフィアが、なぜ研究室にヴレイヴハートの資料があると、ピンポイントで分かるのだ?」
「あ、そうか……」
「それに、私は既にヴレイピンクに倒され、死んだものとされているはず。ならば、私が生きてこの大学で変わらず勤務していることも、ましてや、敵だったヴレイファイブに与していることなど、当然知らないはずだ」
それに、もし知っていたら、あのカネショウが黙っているはずがない。
すぐにでも私の前に現れ、そして、私を抹殺するだろう。
「じゃあ犯人は誰なのよ!?」
「落ち着け紫村。私は今回の犯人については、ある程度目星はついている」
「というと?」
「ああ……ヴレイヴハートの資料が誰の手にあるかを知っている人物、ということになる」
つまり。
「司令本部……ということですか?」
「上代くん、正解だ」
「ちょっと待って!? それこそおかしいでしょ! なんで司令本部がそんなこと……!」
「先輩」
上代くんが真剣な表情で紫村を見つめる。
「……残念ですが、以前にも言った通り、僕は司令本部を信用していません。全員が敵ではないはずですが、それでも、“ヴレイヴハート”に関することにしても、不信感を覚えています」
「けど……」
上代くんの指摘に、反論できない紫村は視線を落とす。
「なあ耕太くん、そしたら今回の犯人は司令本部の誰なんや?」
「普通に考えたら、一番怪しいのは技術部の主任でしょうね。なにせ、資料をこよみさん達に直接渡した本人ですから」
「ふんふん」
「ですが、その可能性は限りなく低いです」
「え!? なんで!?」
「考えてもみてください。そもそも窃盗までして取り返すのなら、初めから渡さなきゃいいだけです。なのに犯行に及んだということは、その主任以外の別の人間、ということになります」
確かに上代くんの言う通りだ。
それならば、犯人はその主任に近しい誰かということか?
「ところで、資料をこよみさん達が持っていることを知っているのは、二人が分かっている範囲だと主任のほかに誰かいますか?」
「え? あの時はその主任しかおらへんかったはずやけど?」
桃原さんは視線を上にして思い出しながらそう答えた。
「先輩はどうですか?」
上代くんが尋ねると、紫村は少しバツが悪そうな、言いたくないような表情を見せる。
「先輩?」
「……私、高田司令にそのことを話したわ……」
「高田司令に?」
紫村は無言でコクリ、と頷く。
「ホ、ホナ犯人は高田司令っちゅうことか!?」
「いや、まだ決まったわけでは……」
ふむ。確かに紫村にとって高田光機という男は、家族のようなものだからな。
しかも自分の上司でもあるのだ。言ってしまっても無理はない。
「他に誰かに言ったりしましたか?」
「ううん……高田司令だけ……いや、ちょっと待って」
すると、紫村は何かを思い出したのか、考え込むようなしぐさをする。
「先輩?」
「……もう一人いたわ」
「もう一人……それは誰だ?」
私は紫村に静かに尋ねる。
「高田司令の秘書、松永さんよ」
「松永さん……」
ふむ、秘書か。
ならば、傍で聞いていても不思議ではない、か。
とにかく。
「いずれにせよ、高田司令と松永秘書、この二人は今後注意しておくことに越したことはない。三人とも気をつけるのだぞ?」
私の言葉に、三人は無言で頷いた。
「よし。次に資料についてだ。実は昨日資料を調べた際、偶然にも資料の隠されたメモみたいなものを見つけた」
「!? な、何なのそれは!?」
紫村が思わず前のめりになる。
「落ち着け紫村。あの時、念のため撮影しておいて正解だったな」
私はスマホを取り出し、その浮き出たメモの画像を三人に見せた。
「……この数字……何?」
「それは分からない。だから、三人にも知恵を貸してもらおうと思ってな」
「うーん……電話番号、ってわけでもなさそうだし、何かのパスワード、かしら……?」
「いやいや、パスワードに小数点ておかしいやろ。普通パスワードいうたら、数字だけやったらホンマに数字だけやで? 他の文字も混ぜるんやったら、初めからアルファベットとかも入っとるはずやろ?」
「そうですね……」
上代くんが画像を見ながら顎をさする。
そして。
「! そうだ!」
上代くんは自分のスマホを取り出す。
「耕太くん、どうするん?」
「念のため、この数字をインターネットの検索エンジンに掛けようと思いまして。ええと、35.3759……」
上代くんは画像の数字を口ずさみながら、スマホに打ち込んでいく。
「さて……どんな結果が……ん?」
「なにか分かったの?」
「これ……地図の座標、ですね」
「「「座標?」」」
私達は思わず声を揃えて言葉を反芻した。
「はい。そして、結果から言うと、これは……千葉県木更津市〇〇、ですね」
「木更津……」
そんなところに何が……おや?
すると、紫村が少し狼狽するような、困惑するような表情をしていた。
「先輩?」
「……私、その場所を知ってるわ……」
「何だって!?」
紫村が場所を知っているだと!?
一体どういうことだ!?
「紫村……」
「……そこは、昔お父さん……反町一二三が研究資料を隠した場所よ……」
反町様が!?
「……なら、行くしかないですね」
「せやな……」
上代くんと桃原さんは見つめ合いながら頷いた。
「もちろん、私も行くわ……私じゃないと、場所も分からないだろうし……」
「そうだな……それと、今回は私も行こう」
「先生が?」
「ああ……反町様のことであれば、行かない訳にはいくまい」
そのように決めた私達は、明日、その場所へと向かうことになった。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の夜投稿予定です!
少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




