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ショートショート5月~

饕餮の器

作者: たかさば
掲載日:2020/05/17

あまりにも何でも喰ろうて、封じ込められた魔物あり。

恐ろしき面を持ち、その禍々しさゆえ魔を寄せ付けぬ。

逢魔が時に、気をつけよ。

後ろからがぶりと、喰ろうてくるぞ。




「へえ、これがその、トウテツの器、ね…。」



目玉のような、縄のような、なんと言うか、グロテスクな模様がついてる、土器。



「うーん、昔神様だった人がさ、腹減りすぎて色々喰っちゃって、顎とられたって話。」


「なんじゃそりゃ。」



東洋美術史を専攻している俺の彼女は、たまになんだかよく分からない知識を披露する。

俺も東洋美術やってるけどさ、ちょっとテーマが違うからまあ、面白いっちゃあ、面白いんだけどね。



「なんか文様がさ、めっちゃかっこよくない? うっとりだわー。」



両手を泥だらけにして、うっとりしながら粘土をこねている。

何でも、卒論で製作発表にするんだってさ。



「ああー、だめだ、間に合わない。これ今日持って帰るわ!!」



結構重そうな粘土の塊は、持ち帰りが決定した。

紳士な俺は、もちろん箱を抱えて差し上げる。


「ふふ、ありがとう!」

「どういたしまして!」





夕方、薄暗い道を二人で歩く。

この器を送り届けたあと、彼女と一緒に飯を食う、予定。

俺の腹が鳴る。

彼女の作る飯、地味にめっちゃ美味くてさあ。



「なんか今日、めっちゃ夕焼けが、赤くない?」



どす黒い夕焼けが、少々不気味さをかもし出している。

恐ろしい化け物が、襲ってきたりして・・・?



俺は手元の、彼女が作ったまだ乾いていない器を覗き込んだ。

抱えるほどの大きさの木箱には、上蓋がついていない。


・・・?

なんか、器の底が、赤いような。


「この器の中、なんか赤くね?」

「夕焼けの色が反射してるんじゃないの…。」


二人で、器を覗き込むと。





ぐぅううぅうううぅううううわぁぁぁああぁあああ!!!!!





器の中から、角を生やした、顎の無い怪物が、飛び出した!!



「キャアアアアアアアアアアああ!!!!」

「ぅわぁぁぁあああああああああ!!!!」



思わず持っていた器を、箱ごと手放す!!


木製の箱は割れ、器はぐしゃりと、形を崩した。



化け物は、上顎だけで、赤黒い空をひと呑みした。



空の色が、変わる。



逢魔が時を、喰ろうてやった。

腹は満たされ、我は往くなり。

器の礼を言おうぞ。

また呼ぶがよし。




普段通りの夕焼け空が広がり、化け物は光の中にすぅと紛れた。





…気持ちをこめて作り上げたトウテツの器は、饕餮を召喚してしまったようだ。

俺の彼女、マジですげぇ。



しかし、目下の大問題は。



「卒業制作、どうしよう・・・!!!」



つぶれた粘土と成り果てた器を見て、半泣きの彼女に、俺はなんと声をかけたらいいのか。


もう一度作れば、また饕餮が、召喚される。

もう一度作れば、またおかしなものと遭遇する。


もう一度作れば、また器は破壊される。



だめだ!!どう考えても終わってる!!!




「もう、兵馬俑でいいじゃん…。」


俺は彼女に、卒業論文のテーマ変更を薦めた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 彼女、すごい才能持ってますね! 上手く生かすことができると良いんだけどね~笑
[良い点] これはローファンタジーもどき? 他にも色々と不思議が隠れてそう。 [一言] そのツボ異世界に持って行きたいw
2020/05/17 22:15 退会済み
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