第34話 森の中に潜む者
「グラムベルド……まさか、あなたがこんな所にいるなんて思っていなかったよ」
「それはこちらの台詞ですよ……赤髪の女勇者アンナ、そしてその妹カルーナ」
現れたリザードマンらしき男は、アンナさんとカルーナさんを睨みつけていた。
やはり、彼が二人の追っていた犯罪者であるらしい。見つからないように、この森に潜伏していたといった所だろうか。
「あなたのことは、魔界の皆から聞いている。どうやら、かなり悪い奴みたいだね?」
「……魔界の狂乱竜、かつてはそのように言われていましたよ」
「物騒な肩書きだね……だけど、今のあなたには戦う力はあまり残っていないはずだ」
「ええ、あなたの仲間のリザードマンにこっぴどくやられましたからね。ですが、今の私にはここがあります。例え、私に戦う力がなくても、戦力は用意しているのですよ」
グラムベルドと呼ばれた人物は、余裕そうな態度だった。
それは恐らく、魔物を従えているからなのだろう。
そんな私の予想通り、彼の後ろから大型の魔物が現れる。亀のような姿をしたその魔物は、聞いていた新種の魔物と特徴が一致している。
「鉄甲竜という魔物を聞いたことがありますか? この魔物は、正確には竜ではないのですが、そう呼ばれる程に強力な魔物です。この魔物の前では、どんな物理攻撃も魔法も通用しません。鉄よりも固い甲羅がそれらを防ぐからです」
「ガシャアアアア!」
「……お姉ちゃん、あの魔物は私が倒すから、お姉ちゃんはグラムベルドさんの方をお願い」
「わかった」
叫びをあげる魔物にまったく臆することもなく、アンナさんとクラーナさんは行動を開始した。
アンナさんはグラムベルドの方に向かい、カルーナさんは魔物の方に向かって行ったのである。
二人の実力は知っているが、しかしそれでもカルーナさんの行動は無謀に思えた。自分より遥かに巨大な魔物に向かって行くのはどう考えても危険だ。
「愚かな! 妹さんが魔物に噛み砕かれますよ?」
「私の妹は、そんなにやわではないさ」
「ガシャアアアア!」
「……」
カルーナさんは、鉄甲竜に対して両手を構えた。恐らく、魔法を発動しようとしているのだろう。
だが、鉄甲竜はかなり頑丈な生き物であるらしい。噂からもそれは間違いないだろうし、本当に大丈夫なのだろうか。
「……小さな消滅呪文」
「ガシャッ……」
「なっ?」
私もクラーナも、そしてグラムベルドも目の前の光景に驚いていた。
先程まで確かにそこにいた鉄甲竜は一瞬で姿を消していた。そこに舞っているのは、灰のようなものだけである。
それをカルーナさんが行ったというのは、状況からして間違いないだろう。しかし、何が起こったのかがまったくわからない。
「何が起こったのです?」
「……答える義理はない!」
「うがっ……!」
そしてそれから間もなくして、アンナさんの剣がグラムベルドを切り裂いた。
鉄甲竜がやられて驚いていたからか、彼は特に抵抗しなかった。
ゆっくりと彼の体が地面に倒れる。これで決着ということなのだろうか。




