第26話 隣町の危機
私とクラーナの元に、エルトニデアという町に関する依頼が届いたのは、レクリアさんとレフィリーナちゃんの屋敷から帰って来てすぐのことだった。
なんでも、エルトニデアでは強力な魔物が出現しており、その魔物に手を焼いているようなのだ。
隣町とはいえそれなりに距離がある町の近辺の魔物の討伐ということなので、私達はあちらの町に泊らなければならない。それには、色々と心配なことがある。
「という訳で、私達はしばらくそのエルトニデアに行かないといけないんだ」
「……」
その心配なことの一つであるラノアに対して、私とクラーナはその事実を伝えた。
私達が泊まる都合上、彼女は一人になってしまう。そのため、誰かにラノアのことを頼まなければならないのだ。
幸いにも、サトラさんとテットアさんという当てがあるので、そこまでは問題はないはずだ。二人に迷惑をかけることになるし、ラノアにも寂しい思いをさせることになるが、それは帰って来てからフォローするとしよう。
「エルトニデアに行くの?」
「あ、うん……」
しかし、ラノアの反応は少し変なものだった。
なんというか少し遠くを見つめて、考えるような表情をしているのだ。
「……エルトニデア、そういえば、あの町がある方向って」
「え? あっ……」
クラーナの言葉に、私はあることに気づいた。
エルトニデアがある方向は重要な意味を持っていたのだ。なぜなら、私とクラーナはその方向で、ラノアと出会ったからだ。
「ラノア、あなたはあの町にいたの?」
「うん、そうなんだ……」
「……その表情的に、単に嫌なことがあったから思い出したくないという訳ではなさそうね? 何かあったの?」
「……」
クラーナの質問に、ラノアはゆっくりと下を向いた。
その表情は、いつになく暗い。彼女がこのような表情をするのは、出会った頃以来ではないだろうか。
「……私も、あの町に連れて行って欲しい」
「ラノア? それは、どういうこと?」
「会いたい人がいるんだ……私が、向こうでお世話になった人に」
「お世話になった人?」
クラーナの質問に、ラノアは真っ直ぐな目で答えた。
その目に迷いはない。きっと彼女は決意したのだろう。自らの過去に向き合うと。
それがどのようなものかはわからない。ただ、その表情から決意は伝わっている。
「……クラーナ」
「……ええ、そうね」
私とクラーナは、顔を見合わせて頷いた。
お互いに迷いはなかった。ラノアがここまで決意しているのだ。連れて行くべきだろう。
こうして、私達はラノアを隣町に連れて行くことを決めるのだった。




