第87話 悪い知らせではなく?
私は、クラーナとラノアとともにいつも通り家で過ごしていた。
「あっ……」
「あら?」
「お客さんだね」
そんな時、来客を告げる呼び鈴の音が聞こえてきた。どうやら、誰かがこの家を訪ねて来たようである。
この家の来客というと、数年前までは限られた人物だった。だが、今では誰が来るかはわからない程に、来客の可能性が増えている。
私達の交友関係も広がったものだ。そんなことを思いながら、私は玄関に向かった。
「二代目、開けてもらえますか?」
「ああ……」
私が玄関の戸に近づいた時、声が聞こえてきた。
その声と私の呼び方で、誰が来たかはわかった。念のため、除き穴から見てみると、やはり見知った顔が見えてくる。
「えっと……何か用?」
「二代目、実は大変なことになっていまして……」
「大変なこと? 何かあったの?」
「ええ、あったんです。あ、といっても、別に悪いことという訳ではないんですよ。いや、悪いことなんでしょうか? まあ、悲惨なことではないと思いたいんですけど……まあ、ややこしいことといえば、いいんでしょうかね?」
「はあ……まあ、とりあえず、面倒なことになったんだね?」
「いやあ、まあ、そういうことですね」
戸を開けるとすぐに、一人の男性が畳みかけてきた。彼の名前は、ゲルーグ。ガランの部下の一人だ。
ゲルーグは、なんだかとても焦っている。本当に、何か大変なことが起こっているようだ。
一体、なんだろうか。そう考えた時、すぐに思いついたのはガランの顔だった。
あの人は、色々なことをやっている。そこから面倒なことになっていると考えるのは、そこまでおかしいことではないだろう。
だが、直後に目の前の人物が言ったことを思い出した。
悪いことではない。少なくとも、悲惨なことではない。言葉の端々から伝わってくるのは、ガランの悪行には関係なさそうな感じだ。
「実の所、お頭……ガラン様が深く関係していることでして……」
「うん? 悪いことではないんだよね? それなのに、あの人が関係しているの?」
「ええ……いや、悪いことともいえるかもしれませんね。少なくとも、二代目にとっては悪いことかもしれません」
「歯切れが悪いね? 一体、何があったの?」
ゲルーグは、とても歯切れが悪かった。
その態度を見ていると、あまりいい知らせではないように思える。
少なくとも、私が不快に思うようなことではあるだろう。目の前の人物の態度からは、それが読み取れる。
「二代目……お頭は、数々の罪を犯してきました。いや、お頭というか、俺達ガラン一味ですね。ただ、お頭にも一定の流儀がありました。その流儀の結果、誰かを救ったこともある」
「……とりあえず、中に入ってもらおうかな。あなたの話が長いから、クラーナもラノアも出てきちゃったし……」
「……ええ、お邪魔します」
私は、ゲルーグに中に入ってもらうことにした。
長い話になりそうなので、座って話した方がいいと思ったのだ。




