第23話 未練なく
私達は、ローレリムさんを連れて家に戻って来ていた。
「驚いたね……まさか、この家にあんた達が住んでいるとは」
家の前まで来て、ローレリムさんは驚いていた。
どうやら、私達がこの家に住んでいることまでは知らなかったようだ。
その反応から、彼女がレイコさんが待っている人だとわかる。この家を知っているということは、そういうことだろう。
「……私を待っている人か」
「ええ、中に入ってください」
「ああ、わかった。入らせてもらうよ」
私に続いて、ローレリムさんは中に入っていく。
ローレリムさんは、落ち着ていてる。この家を見て、最初は驚いていたが、もう動揺は収まっているようだ。
「あ、あなたは……!」
「おや……」
中に入ったのと同時に、家の奥から見知った幽霊が現れた。
何もない空間から急に現れた気がするので、結構怖い。だが、今はそんなことを思っている場合ではないだろう。
「……久し振りだね。まさか、まだこんな所にいるとは思っていなかったよ」
「ず、ずっと待っていたんです」
「そうかい。それはなんとも……ご苦労だったね」」
意外なことに、ローレリムさんはあまり驚いていなかった。
恐らく、レイコさんが待っていることをわかっていたのだろう。
誰かが待っているとこの家に連れて来られた時点で、察していたのかもしれない。
「あんたも随分と我慢強いね。別に、私なんかを待っていなくてもよかったのに、あんたも馬鹿だね」
「いえ、主人を待つのは当たり前のことです。それに、最近は楽しい人達に囲まれていたので、全然苦しくはありませんでしたよ」
「そうかい」
二人は、笑いながら言葉を交わした。
その雰囲気は、とても和やかである。二人とも、昔を懐かしんでいるのだろう。
「でも、あなたに再会できたおかげで、この長い待ち時間ももう終わりです」
「行くのかい?」
「ええ、向こうでも待っていますけど、しばらくは来ないでくださいね。待つのは慣れていますから、大丈夫ですよ」
「まあ、あと数年くらいはそっちに行く気はないね」
ローレリムさんと出会えたことで、レイコさんの未練はなくなったようだ。
恐らく、これで成仏するということなのだろう。
「アノンさん、クラーナさん、ラノアちゃん、それでは私はこれで行きます。色々とありがとうございました……」
「あ、はい……ローレリムさんと再会できて、よかったです」
「気にしないでいいわ。あっちでも元気でね」
「ばいばい、またいつか会えるといいね」
レイコさんは、私達に挨拶してきた。
それに対して、私達もそれぞれ答える。
短い間だったが、レイコさんには色々と驚かされた。ただ、これでお別れというのは、中々悲しいものである。
「……」
「……」
その後、辺りに沈黙が流れた。
何故こんな沈黙が訪れたかは、明白である。
各々、最後の言葉を交わした。流れ的に、レイコさんが成仏する流れだ。
しかし、レイコさんには何も起こっていない。まったく成仏しないのである。
「成仏って、どうやったらできるんでしょうか?」
「え?」
「いや、再会できたらあっちに行けるのかと思ったのですが、なんだか全然行けなくて……」
どうやら、レイコさんは成仏する方法を知らなかったようだ。
私達も、なんとなく再会したら成仏できるのかと思っていたが、そうでもないようである。
ただ、この場にいる全員が、幽霊が成仏できる方法など知るはずもない。
「……もう少し、お願いできますか?」
結局、レイコさんは現世に留まるしかなかった。
私達と幽霊の共同生活は、まだしばらく続くようである。




