第10話 現れた幽霊
私が朝起きると、目の前に幽霊がいた。
かなり驚いた私だったが、クラーナとラノアの助けもあり、なんとか立ち直ることはできた。
そんな私は、クラーナとラノアとともに、幽霊と対峙している。机を挟んで、向かい合って話す体勢になっているのだ。
「えっと、アノンさん、いいでしょうか?」
「あ、はい……」
幽霊は、私に対して丁寧に言葉をかけてくれた。
この幽霊が、悪い幽霊ではないことはわかっている。だが、幽霊であるという事実だけで、私はまだ怖がってしまう。長年染みついた考えは、そう簡単に払拭できないようだ。
「私の名前は、レイコといいます。この家にクラーナさんの前に住んでいた犬の獣人です」
「そ、そうなんですね……」
幽霊は、レイコさんというらしい。
クラーナの前に住んでいたということは、前々から聞いている。
確か、彼女がこの家で亡くなって、それから心霊現象が起こるようになり、クラーナはこの家を格安で手に入れたのだ。
「私は、この家で亡くなりました。でも、とある未練があって、この家に留まっていました。その未練があったため、ここには誰も近寄らせないように邪魔をしていたんです。そんな時、クラーナさんがやって来ました」
「そこで話し合って、私はここに住んでもいいという許可を貰ったという訳よ」
「な、なるほど……」
どうやら、レイコさんはとある未練のために、この家に留まっているようだ。
そのために、心霊現象を起こして誰も近寄らせなかったという部分は、とても怖い。
だが、クラーナが話し合ったため、その辺りは大丈夫にはなっているのだろう。だから、安心していいはずである。
「というか、あなたはなんで姿を現したの? 何か問題でもなければ、あなたが姿を現すとは思えないのだけど……」
「そのことなんですけど、実はラノアさんもやって来て、私の存在がアノンさんに隠し切れないと思いまして……」
「それで、いっそのこと出てこようと思ったのね」
レイコさんが私の前に出てきたのは、ラノアに自身の存在を気づかれたからであるようだ。
確かに、ラノアはレイコさんの存在をかなり気にしていた。一度姿を現して、私に存在を知らせておく方がいいと思ったのだろう。
その目論見は、間違っている訳ではない。私も、レイコさんの姿を見たことで、以前よりは恐怖が和らいでいる気がする。
「夜に出ると、流石に怖いかと思って、朝にしたんですけど……結果的に、怖がらせてしまいましたね。すみません、アノンさん」
「い、いえ、大丈夫です……」
レイコさんは、私を怖がらせたことを謝ってきた。本当に優しい人である。
こうして、私は幽霊のレイコさんの存在を認識するのだった。




