お前なんかが自転車に乗れるわけがない! っておっしゃってたのはどちら様でしたっけ?
「ナナ! その細い足では自転車に乗れるわけない! 諦めな!」
第二王子の『ジュ王子』が、『ナナ』を嘲笑った。
ジュ王子とナナは、同じ小学校に通う小学2年生。最近、馬の代わりにナウイ乗り物として貴族の間では『自転車』が流行っていた。
そして今日も、放課後の校庭は自転車の練習をする小学生で賑わっている。
「確かに私は、ジュ様と違って背も低いし、華奢だし……。」
エマは、自信無く足元に目を向けた。
「わかればいいんだ! くれぐれも、この俺様の走行の邪魔だけはしないでくれよな」
校庭で自転車の練習をしていたナナの元を、ジュ王子は自転車で颯爽と走り去った。
「あぁ……。私にも、もっと足の力があれば……。」
ナナは手に力を込め、自身の細い足をギュウと握る。何度も転んで擦りむいた膝には血が滲んでいた。
それでも彼女は諦めなかった。涙を堪え、再び自転車に跨った。
数日後。
「ナナ! まだ乗れないのか? まぁ、お前じゃ無理だろうな! でも、お前がどうしてもと頼むのなら、俺の後ろに乗せてやってもいいんだけどなぁ?」
ジュ王子の乗る自転車の後ろには、人が乗れるように豪華な椅子が備え付けられていた。
「ジュ様、ありがたいお言葉……。ですが、お断りします! それに、私……。」
ナナは、引いていた自転車に跨り、それを漕ぎ始めた。
「どうしてお前が自転車に? 嘘だっ!」
「嘘ではありませんよ。ほら見ての通り!」
ナナは笑顔を浮かべる。その笑顔を見て、ジュ王子は心臓をドキリとさせたが、それを顔に出さず、ナナの自転車に目を向けた。
「なにっ! 電動アシスト付き自転車だとっ……! 卑怯だぞっ! 俺はこんなもの自転車とは認めん! こんな自転車もどき、こうしてやる!」
ジュ王子は、自身の自転車を放り出し、ナナに駆け寄った。
そして、ナナの自転車に手を伸ばした時。「おっと! 待ちな!」と彼の腕を掴む手があった。
「なっ! 兄上?」
ジュ王子は驚き、すぐに自転車を掴んでいた手を放す。
「熱心に自転車の練習をしているナナの姿を見て、心にグッと来たのだ。俺はナナを将来の嫁にする!」
第一王子であるミズ王子は、小学5年生である。彼は、自分より幾分か小さいナナの肩に手を乗せ、彼女を引き寄せた。
「なんだよ……。俺が先に……。お前を乗せるために自転車も改造したのに……。」
ジュ王子は涙ぐむ。
「そうですか。でも私は、自分の足で自転車を漕ぎたかったんですよ」
ナナは、ニコリと自信に満ちた笑みを浮かべた。
なろうラジオ大賞参加作品のため、1000字以内の短編になっております。




