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ハロウィンパーティーなんだけど

「トリックオアトリート!!」



 お店に来店してくれたお客さんに俺はこの日だけの特別な挨拶をする。今日はハロウィンである。バイト先のこの店でもせっかくだという事でハロウィンイベントが開催されているのだ。といってもハロウィン限定メニューとコスプレしてきた人にはちょっとした割引がある程度なんだけどね。



「刹那先輩、この衣装どうでしょう? 似合ってますか……?」



 そう言って顔を真っ赤にして、黒いキャミソールに、ミニスカートを履いて、ニーソックスに、悪魔のような羽をした衣装に身を包んだ双葉ちゃんが声かけてきた。生足がまぶしいし、いつもより露出が高い。なんというかギャップ萌えである。



「すごいね、双葉すごい似合ってるよ。例えるならば、普段は露出しないのに、ハロウィンの時露出して承認欲求が満たされて喜んでるかまってちゃんみたいですごいいいと思う!!」

「言い方ーー!! それって絶対褒めてませんよね? むしろ馬鹿にしてますよね? 例えるならば、彼氏が喜ぶかなぁってお洒落をしたのに、無茶苦茶けなされた気分です!! 謝ってください。例えるならば、貴族に失礼を働いて処刑されそうな平民が命乞いをするような気分で!!」

「まさかの二連続だ。今日も元気だね」



 頬を膨らませてこちらをすごい目で睨んでいる双葉に微笑みかけると、視線がさらに厳しいものになる。あれ、ちょっと言いすぎちゃったかな……軽い冗談だったけれど、普段こんな格好をしない彼女がこういう格好をするのはとても勇気がいたのだろう。俺は彼女の目を見つめながら優しく頭を撫でる。



「似合ってるよ、双葉。元気な双葉と小悪魔な感じがすごいマッチしていてとても可愛らしいと思う。あとさ、初々しさがいいよね。こんな小悪魔に誘惑されたらみんなコロっといっちゃいそう」

「な……この人はいきなり素直に褒めて……安い言葉で、顔がにやけてしまう自分が憎いです。例えるならば、RPGで最初に登場するクソ雑魚な魔物になった気分です」

「スライムかな? でも、こういう衣装って結構高くない?」

「ああ、これは如月先輩の彼女さんにお借りしたんですよ。なんか彼女さんはハロウィンとなると無茶苦茶気合をいれるらしくて、5着くらい衣装を作って、写真付きでどれが好みか聞いてきて、使わない奴を一つお借りしたんです」

「へぇー、やっぱりあいつの彼女もそういうの好きなんだね。でも、俺も仮装したかったなぁ……せっかくゾンビのコスを準備してきたのに……」

「絶対だめです!!」



 双葉ちゃんがかつてない勢いで否定してきた。そんなにクオリティ低かったかなぁ……実のところ俺もちゃんと準備をして双葉にみせたんだけど絶対店内で着るなといわれてしまったのだ。だからか、今は普段の執事っぽい服に申し訳ない程度の血のりをしているくらいである。



「体に張り付いている蛆虫とかクオリティ高いと思うんけどなぁ……」

「だからですぅぅぅぅぅーー。うちは飲食店なんですよ。例えるならばお洒落なカフェがいきなりバイオハザードの世界になったのを見た気分です!! 何で刹那先輩は無駄に器用なんですか。そのスキルを別の方向に活かしてください!!」

「一気にしゃべって疲れない? 水でも飲む?」

「私のはなしぃぃぃぃ!! でも、いただきますね、ありがとうございます!!」



 そういうと彼女は俺のあげた水を一気に飲んだ。でも急いだせいか唇から、水滴が垂れてそのまま。彼女の胸元に垂れる。ちょっとエロいな……なんて思っていると、双葉と目が合った。



「どこ見てるんですか!! 例えるなら同じ部活の気になっている先輩のラッキースケベの被害者になった気分です」

「いやぁ、ごめんごめん、つい、見ちゃうよね」

「エッチですねぇ……そんなにみてると私だって誘惑しちゃいますよ?」

「え?」

「なんでもないです、今のはなしで……ちょっとキッチンに行ってきますね」



 そういうと、彼女は顔を真っ赤にしてキッチンの方へと走ってしまった。一体どうしたんだろうね。よくわからないけどなんかいつもと違う感じで少しドキッとしてしまった。また、お客様が来たみたいだ。



「トリックオアトリート」

「あらあら滑稽なゾンビの仮装かしら? どこかポジティブサイコパスって感じするわね。ちなみにいたずらしたら通報するわよ」

「待って、俺別に今はゾンビの仮装とかしてないんだけど!? 素の俺だよ!?」



 俺を見て無表情な顔でそんなことを言いながら入店してきたのはアリスだ。彼女は110番と入力してあるスマホの画面を見せながら、俺をけん制している。いたずらしたらいたずらじゃすまないことになりそうだよね。

 流石の俺も警察沙汰にはしたくないので、素直に席へと案内する。多分アリスの事だから限定の可愛らしいパンプキンパンケーキかな? 可愛らしいジャックオーランタンをモチーフにしていて中々インスタ映えしそうな感じである。



「アリスは限定パンケーキかな? 来るって聞いてたからちゃんと取ってあるよ」

「ふーん、さすが刹那ね、私の好みを把握しているのね。悔しいけどちょっと好感度が上がったわ」

「お、アリス今日はちょっとデレるのが早いね」

「あらあら、勘違いしているけど、今のはマイナスからようやくプラスになっただけだから勘違いしないでね」

「おお、今のツンデレっぽい!! そういえば、今日はハロウィンだからコスプレするとドリンク無料なんだけど……」



 彼女の服装は清楚そうなワンピースだ。特にハロウィンっぽさはない。やっぱりアリスはこういう騒がしいお祭りは苦手なんだろう。スタイルがいいから、結構似合いそうなんだけどな。魔女とか絶対似合いそう。使い魔にされたい気分である。



「ちゃんと用意してきたわよ。ドリンク無料だし、刹那もこういうの好きでしょ。だから私もたまにはのってみようなって……」

「え?」



 そういうと彼女はカバンから猫耳を取り出して、そのままカチューシャの様に頭につける。そして、顔を真っ赤にしながら上目遣いでこういった。



「ドリンクくれないといたずらしちゃうにゃー」

「うおおおおおおお。優勝!!!!」

「ちょっと、写真を撮らないで、本当に通報するわよ!!」



 ちょっとずるくない? 普段とのギャップに脳が破壊されそうになるんだけど……俺がついスマホで写真を撮っていると、怒ったアリスに奪われてしまった。そして、そのままデータが削除されていく。



「ああ……世界の宝が……」

「どんだけ、へこんでるのよ……それにこういうのは一人より二人の方がいいでしょう? ゾンビさん」



 そういうと彼女は席を立って俺に顔を寄せたかと思うとパシャリと一枚撮る。画面には恥ずかしそうにはにかんだ猫耳アリスと間の抜けた顔の俺がいて……2ショットだぁぁぁぁぁぁ。



「早くドリンクをくれないからいたずらしちゃったじゃない。今日は忙しいんでしょ? 早く他のお客さんのとこにも行きなさい」



 そういうと彼女は顔を真っ赤にしながら、カバンから本を取り出して読み始めた。これは邪魔するなという合図だ。ああ、でも彼女の顔は真っ赤なわけで……ひょっとしたら慣れないことをして恥ずかしかったのかもしれないなと思った。



「トリックオアトリ……」

「いたずらでお願いします!!」



 俺の挨拶に食い気味で言ったのは桔梗だ。彼女は暖かそうなコートに身を包んでいる。やっぱり桔梗も来てくれたんだね。嬉しいな。でも、いたずらか……何をすればいいんだろうね。などと思っていると店内に入ったからか、桔梗がコートを脱ぎ始めた。そしてそのみを包むのはちょっと露出の激しい血のり付きの花嫁衣裳である。



「どうですか、刹那? ゾンビの花嫁っていうらしいですよ。ちょっとしたペアルックですね。刹那がゾンビの格好をするって聞いたので私も頑張ってみました」

「うおおおおお、おっぱいすごい!! あとむっちゃ可愛い」



 普通の花嫁衣裳とは違い胸の谷間を強調されたその格好に俺は思わず本音が出てしまった。なんというかやばいよね、普段は制服に隠された彼女の体が強調されているからか目線をどこにもっていこうか悩ましい。でもさ、俺はゾンビのコスするって誰にも言ってなかったんだけど何で知ってるのかな? まあ、桔梗のコス似合ってるからいっかー。



「どうしました、刹那? いたずらしてくれないんですか?

「いやー、さっきのは挨拶みたいなもので……」

「じゃあ、私がいたずらしますね。エスコートしてください。旦那様」



 そう言って彼女は笑顔を浮かべながら俺の腕を取る。そうすると必然的に胸が俺の腕にあたるわけで……俺は思わずにやけてしまう。でもさ、いつもなら付きっ切りで接客するんだけど今日は忙しいからずっとはいられないんだよね……



「桔梗あのさ……」

「刹那も今日は忙しいですよね、だからせめて席まではこうしてくれていると嬉しいです」

「そのくらいなら大丈夫だよ」



 そうして俺は彼女をいつもの席へと案内するのだった。俺はオーダーを聞きながらふと思ったことをつぶやく。



「いやー、でも桔梗もアリスも仮装してくれて嬉しいなぁ。普段と違う恰好っていいよね」

「あれ? 委員長もいるんですか?」

「うん、聞いてよ、桔梗。あのアリスが猫耳をつけてくれたんだよ。むっちゃ可愛くない?」

「へぇー、刹那も楽しそうですね」



 俺が嬉々とした桔梗にさっきとった画像を見せると桔梗の目から感情が無くなった。すごいや、なんか死人って感じでとってもハロウィンっぽいね。



「よかったら桔梗も俺と写真撮ろうよ」

「え、いいんですか? でも、忙しいんじゃ……」

「ちょっとくらいなら大丈夫だよ。俺も桔梗と撮りたいしさ」



 そう言うと桔梗の目に光が戻った。そして、俺達は二人で写真を撮ることにする。でもさ、桔梗が近すぎない? 色々当たってるし甘い匂いがしてちょっとエッチな気分になっちゃうんだけど……



「じゃあ、またねー」



 そうして俺はキッチンに入って紅茶を淹れる。せっかくだし、二人の分は俺が淹れたいよね。双葉はというと忙しそうにホールを回っているようだ。それにしても三人ともコスプレ似合っていたなぁって思っていると双葉の悲鳴が聞こえた。



「刹那せんぱーい助けてください」



 何だろうと思うと、いつの間にか桔梗とアリスが二人で座っていた。お、ちょうど二人ともひとりできていたからか合流したのだろう。仲良しだなぁ。



「へぇー、猫耳ですか……王道で、あざといですね。でも知ってます? 刹那は巨乳が好きなんですよ」

「あらあら、胸しか誇るものがないのね……可哀そうに……刹那は私の事を可愛いっていってくれたわよ」

「いつのまにか正妻戦争がはじまっってるんですけど!! 私だって、刹那先輩に褒めてもらいましたし!! 例えるならば観光をしに行った冬木でやばい戦争に巻き込まれた気分です!! でも、私だって聖杯とりに行きますからね!! てか、桔梗さんの服が血まみれですけどついに誰かやっちゃったんですか!?」

「いや、普通に血のりじゃないかな?」



 三人をみて俺は思う。みんな楽しそうだなぁって思う。どこか俺以外には壁があった桔梗も、誰にも心をひらいていていなかったアリスも、人間関係で悩んでいた双葉もみんなが本音でぶつかりあっている。



「あ、刹那!! ちょっと聞きたいことがあるんですがいいですか?」

「そうね……誰のコスが一番好きか教えてくれるかしら?」

「あ、私もですからね。こんな恥ずかしいかっこうしたんです。後輩が絶対勝つラブコメってやつです……」



 三人の言葉に俺は悩む。でもさ、みんながみんないいところあるんだよなぁ……



「みんな可愛いじゃだめなのかな……?」

『ダメ』



 異口同音で否定されてしまった、でもさ、俺はおもうんだよね、こんな日常がさいこうだなぁってさ。結局誰が似合うかは決着がつかなかったけれど、でみんなで写真を撮ったり騒いだりして俺はハロウィンを堪能するのであった。



番外のハロウィンパーティーでした。


みなさんは誰のコスプレがよかったでしょうか?

私はアリスの猫耳ですね。



また新作を始めました。幼馴染とのいちゃらぶものです。よろしくお願いいたします。


『催眠ごっこで結ばれるラブコメ ~初恋の幼なじみの催眠術にかかった振りしたらムチャクチャ甘えてくるんだけど』


https://book1.adouzi.eu.org/n1226gp/


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― 新着の感想 ―
[良い点] ・・・やはりアリスのギャップ萌えってやつでしょうか? みんな可愛いんですけどね、どうしてもアリスが頭1つ出てますね。
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