表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/59

番外編2.バイトをすることになったんだけど その5

次の日俺がバックヤードで紅茶を淹れる準備をしていると双葉ちゃんが声をかけてきた。あ、とうとう紅茶を淹れるのが許可されたんだよね。今日のは委員長に教えてもらったリラックスできるっていうちょっと特別な紅茶である。私用で使うのだ。仕事中に何やってんだって? まあ、大目に見てよ。



「一条先輩、今日もいるなんて珍しいですね、まさか私に会いたくってシフトを増やしたんですか? 例えるならば恋愛映画で、ちょっと気になる人に告白されてちょっと困ってるヒロインみたいな気分です」

「その気になる人ってかませ犬じゃないよね? 何かフラれそうなんだけど……ちょっとね、人が足りなくなりそうな予感がしたからさ」

「はぁ……」



 俺の言葉に双葉ちゃんは何言ってんだこいつって感じでみてきた。そんなに見つめないでよ、照れるじゃん。



「双葉ちゃん、ご指名よ」

「え?」

「ほら、ご指名だってさ。いっておいでよ。ホールの仕事はやっておくからさ」



 ホールからの呼び声に困惑する双葉ちゃんの背中を俺はそっと押してあげる。彼女は客席をみて動きを止めた。



「あなたが呼んだんですか……?」

「仲直りをしたいんでしょ、大丈夫だからさ。俺を信じてよ。でももしも本当に嫌だったら俺が対応するからね」



 彼女の視線の先にはお店であった二人の同級生がいる。少し震えている彼女の肩に手を置くと双葉ちゃんはこちらを恨めしそうに、だけど何かを期待しているかのようににこちらをみつめてくる。だから俺は彼女にほほ笑ながら続ける。



「安心してよ、あっちにも話は通しているからさ。あとは双葉ちゃん次第だよ。嫌ならば俺の代わりに紅茶をいれて飲んでてよ、でも、仲直りしたいなって気持ちがあったら二人の元に行くんだ。もし途中で嫌な事になりそうならすぐに助けに行くからさ。俺は今、例えるならば青春映画でエンドロールが流れてハッピーエンドになる五分前をみている気分なんだけど」

「だから私のセリフを奪わないでください!! でも……一条先輩……ありがとうございます」



 俺の言葉に彼女は一瞬悩んだように止まったが歩き出した。これで大丈夫だろう。人脈が広い桔梗があの二人の素性を探してくれたのだ。同世代だからね、友達の友達をたどればつながるわけで。様々な人脈を活用して、俺と桔梗であの二人の女の子に会って色々話したのだ。(本当は俺一人で行こうとしたんだけど桔梗がついてくるって言ってきかなかった)

 喧嘩の理由は簡単、双葉ちゃんがお父さんのカフェの手伝いで、全然遊べなくなって、いつも断られた友達の一人の不満が爆発したというありがちな理由だった。そして喧嘩別れをしたまま気まずくなって疎遠になった。本当に物語にもならないであろう出来事だ。

 でもさ、喧嘩ってそういうもんだよね。ありきたりな事や不満が原因でおきちゃうんだよね。それでちゃんと話し合って納得できればまた仲良くすればいいし、無理ならそれで距離をおけばいいのだ。双葉ちゃんもあの二人の子も仲直りしたかったけどきっかけがみつからなかっただけなので、俺はその機会をあげただけにすぎない。もちろん双葉ちゃんかあの二人のどちらかが仲直りしたくないっていっていたらスルーするつもりだったんだけど杞憂だったみたいだね。



「一条ちゃんありがとうね」



 俺が紅茶をいれていると珍しく店長が表に出てきて話しかけてきた。普段は自分の見た目だと営業妨害になるからって出てこないのだ。きにしすぎだとおもうんだけどなぁ。



「いえいえ、双葉ちゃんが元気ないとこっちもつまらないですからね」

「あの子には無理をさせちゃったのよね、お店を開いてからずっと働いてもらっちゃったのよね……あの子は笑顔で引き受けてくれたけど、迷惑だったかもしれないわね」

「そんなことないと思いますよ、だってお菓子のことを話すといつもお父さんのケーキが、お父さんのケーキがって言うんですよ。迷惑だったらそんなこと言わないと思います。あ、でもシフトは減らしてあげたほうがいいかもしれないです。友達とも遊びたいでしょうし……」



 俺の言葉に店長は一瞬目を見開いて、俺と、友人の所に行った双葉ちゃんをみながら笑った。



「一条ちゃん申し訳ないけどシフト増やしてもいいかしら。あの子にもっと遊ばれてあげたいのよね。幸いお店も軌道にのったし、あなたのバイト代くらい払っても余裕は出てきたから」

「大丈夫ですよ。あと、今日も双葉ちゃんの代わりにシフト入りますね、それと良かったらなんですが、この前の試食した新作美味しかったんでまた作ってもらえませんか、桔梗と一緒に食べようと思って」

「うん、腕によりをかけてつくるわ。一条ちゃん変わっているけどいい男よね……私がもうすこし若ければね……」



 そう言い残して店長はまた厨房に戻っていった。あれ、なんかお尻の穴一瞬びくっとしたけどなんだろね?

 そうして俺は紅茶を片手にホールへと出る。目指すところは決まっている。



「紅茶をお持ちしました」

「え……私達頼んでませんけど……あっ! あなたは……」

「仲直りの記念に一杯おごってあげますよ。店長には内緒ですよ」

「一条先輩……」



 双葉ちゃんたちの談笑しているところに三人分の紅茶をもっていきプレゼントをする。双葉ちゃんからは初日におごってもらったからね。そのお礼だね。三人分の紅茶代は痛いけど双葉ちゃんの笑顔がみれるなら安いよね。



「その……色々ありがとうございました。おかげで双葉と仲直りできそうです」

「一条先輩本当にありがとうございます。あ、初めて飲む味ですね……もしかしてこれがアバ茶ですか?」

「へー、双葉が飲んだことないなんて珍しい茶葉なんですね。いい香りです!!」

「はい、まあ……淹れたてですからね」



 もちろんアバ茶なはずないんだけど、いちいち説明するの面倒だし、双葉ちゃんが嬉しそうなのに機嫌を損ねるのも申し訳ないから話を合わせておこう。あとでラインで説明だけして日常会話では使わないほうがいいよってアドバイスしてあげればいいよね。




「ぶはぁっ」

「ちょっと何やってんのよ、汚いわね!!」

「岬ちゃん、大丈夫ですか!? 一条先輩すいません、何か拭くもの持ってきてくれますか!?」



 双葉ちゃんの友達のうちの一人が咽ながら、信じられないものを見るような目でこちらを睨んできた。貴様みているな!! 多分この子はアバ茶知っているんだろうけど、常識的に考えてアバ茶なんてお店で出すわけないでしょ。

 それはさておき服のシミになっちゃったらまずいからね、俺はすぐにおしぼりを何個か持ってきて渡す。これ以上はいたら邪魔だよね。咽てた女の子の背中をさすっている双葉ちゃんとその子の服を拭いている女の子をみながら俺は思った。



「もしかして、双葉はあの人の事……」

「違いますよ、あの人は違うんです。例えるならばファンタジー映画で言う主人公に助けられたヒロインの気分……ってあれ?」

「顔真っ赤にしちゃって。よし、作戦会議しましょ!!」

「ゴホッゴホッ。いや、あの人はやめた方がいいと思うよ……絶対頭おかしいと思う……どうせ、アバ茶もあの人から聞いたでしょ」

「岬ちゃん何でそんな事言うんですか、あの人は確かに頭はおかしいですが、あれで結構いいところあるんですよ!!」



 そうして俺は楽しそうに話している双葉ちゃんとその友達を視界のはしにいれながらバイトを続けるのであった。

 その夜双葉ちゃんにラインですごい怒られたんだけど理不尽じゃない?







次でエピローグです。バイト編いかがだったでしょうか?

委員長編を書いているのですが思った以上にシリアスになってしまい悩んでいます。この作品にはみんなシリアス求めていないと思うんだよなぁ……


面白いな、続きが気になるなって思ったらブクマや評価、感想いただけると嬉しいです。



特に評価ポイントは、『小説家になろう』のランキングシステムにおいてはかなり重要視されるんですよね。


↓の広告のさらに少し下に、ポイント評価を付ける欄がありますので、面白いなぁって思ったら評価していただけるととても嬉しいです


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【散々搾取された上、パーティーを追放された技能取引者<スキルトレーダー>スキルショップを開き、S級冒険者や王族の御用達になる~基礎スキルが無いと上級スキルは使いこなせないって言ったはずだけど大丈夫か?】 こちらがハイファンタジーの新作です。 クリックすると読めるので面白そうだなって思ったらよろしくお願いいたします。 【モテなすぎるけど彼女が欲しいから召喚したサキュバスが堅物で男嫌いで有名な委員長だったんだけど~一日一回俺に抱き着かないと死ぬってマジで言ってんの?~】 ラブコメの新作です。よろしくお願いします。 クリックすると読めるので面白そうだなって思ったらよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
[良い点] やばい双葉ちゃんいちばん推せる [一言] シリアス来てもこの主人公の性格なら全く問題なさそうな件
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ