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第十二話 昔話です4
「その子は、魅入られておるな」
俺の話を聞いてくれていた蓼山の神は、そう言った。
人間の時には分からなかったが、今の自分には分かる。
ひらりさんは、死ねない。
老化しない、寿命がない、そういう生物学的な話ではない。
ひらりさんは、とある神に魅入られていた。
その神は、彼女をそばに置きたいがために、あらゆる彼女のものを奪おうとしていた。
彼女の環境も、帰る場所も、大切な人も、時間も、自分で命を絶とうとする自由も。
そんな妖怪や悪魔よりも邪悪な神は存在する。
その神自身は、ピュアにひらりさんのことを愛している。
だからこそ、邪悪だ。
出会いや運命というのは、魂の行き先を大きく変える。
ひらりさんの魂は、捕えられ、監禁されてしまった。
呼吸をできない魂は、黒く腐っていく。
それは、どれほどの苦しみだったろう。
結局のところ、俺は、どれほどに彼女が切実に死を思っているか知らなかった。
短くてすみません…。
読んでくださって、ありがとうございます!




