歯車の損傷と対策~その他の損傷~
「それじゃあ最後はその他の損傷だ。種類が結構多いからざっといくぞ。特徴だけでも覚えておくんだぞ」
「はい!」
「まずは疲れ破損。材料の疲れ限度を越えて曲げの繰り返し応力が加わった場合に起こる。長期使用だと普通に起こりうる損傷だな。破損した破断面は比較的なめらかで、貝殻みたいな模様が出るぞ。使用期間が短いのにこれが起きた場合の原因は、設計上の検討不足、計画を越えた過負荷の繰り返し、表面付近の欠陥、歯の片当たりなんかだな」
「なるほど」
文字通り疲れ果てたら起きる損傷ってことだね。
負荷がかかってる以上長く使ってたら起きても不思議じゃないと。
もしも短期間で起きた場合は設計上の検討不足、計画を越えた過負荷の繰り返し、表面付近の欠陥、歯の片当たりといった原因がある、っと。
「次が過負荷折損。極端な歯面の片当たり、ベアリングの破損で歯車の異常な噛み合いがある場合や、大きな異物の噛み込みによっても起こる。文字通り過負荷で歯が折れちまうような状態だな。瞬間的に大きな負荷が作用して歯が折損した場合は区別して衝撃折損なんて呼ぶこともあるぞ」
「なるほど」
名前そのままだから覚えやすいね。
過負荷で起きた折損だから過負荷折損。
「次は歯のせん断。過負荷折損と似たようなもんだが、過大な負荷で歯が折損したものだ。切れ味の悪い刃物で無理矢理切断したように、破断の付近に塑性変形を伴う破断面だ」
シヤリングと言って刃物で挟み込んで切断するような感じらしい。
ハサミみたいなものかな?
ちょっと伸びた感じになってるし、そういうことだね多分。
「次は圧壊および圧痕。まず圧壊は軸受の破壊なんかによって歯車の歯と歯が乗り上げてしまったり、歯の折損で大きな破断片が噛み込まれた時に発生する。次に圧痕は、異物を噛み込んだり、何かをぶつけて出来た凹みで、局所的に歯面に凹みが出来ているな。端的に言えば異物噛み込みによる損傷だ」
圧壊は意図してない硬いものに当たって歯が壊れてしまうことみたい。
噛み合ってる歯がずれたら壊れるよね。機械のパワーえげつないから絶対に巻き込まれないようにシャチョーさんに注意されたし。
「次が亀裂。髪の毛みたいな小さいクラックから大きな割れ傷まで含むもので、鍛造割れ、焼割れ、研磨割れ、疲れ亀裂なんかがある。研磨割れは加工条件が不適当な研削のせいだったり、残留熱処理応力と絡んで発生することもある」
「ふむふむ」
「疲れ亀裂は材料の繰り返し曲げ疲れの過程で、歯元すみ部の表面や表面に近い内部が起点になって進展するぞ」
亀裂と一口に言っても沢山種類があるみたい。
髪の毛より細いのも、パカッと割れそうになってるのも全部亀裂!
「次が歯形の干渉。歯車噛み合い中心間距離の過小、歯の圧力角の倒れ、歯元すみ肉の形状不具合、歯形の修正不十分などが原因になって歯の噛み合いが正常じゃないせいで発生する。駆動歯車の歯元に大きなピットが出来て、深いひっかき傷も一緒に出来て歯先には塑性流れやひどい摩耗が出来る」
距離が近すぎたり歯の形がおかしくても損傷するなんて、一体どれだけのパワーで動かしてるんだろう。そりゃあ指なんて簡単に千切れるよね。
「次が電食。漏電したりして電気が通ったせいで出来た溶融の損傷だな」
「軸受でも聞きましたね」
「ああ、一緒だな。んで最後が腐食。水分、酸、潤滑油中の添加剤なんかの化学反応で小孔や錆として確認出来る歯面の劣化だ。運転していない状態で長時間放置してるとどんどん広がっていくぞ。湿気の多い環境や、潤滑油中の水分に注意な」
「はい!」




