表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/40

40 南の島

「青い海が綺麗ね~」

「砂浜も真っ白だし!」


 アンジェとリンスは水着になっていた。


「レイ、海に入ろうよ」

「遊びに来たわけじゃないんだぞ」


 海に入ろうというアンジェとリンスの誘いをレイが断る。 

 魔貴族ノエラを打倒してから一か月後。

 レイ達はイセリア王国の南東の港から船で南の島に来ていた。

 宿泊する島の有名ホテルの目の前の海岸が白い砂浜のビーチになっていた。

 水着を着て真っ先に海に入ろうとするアンジェとリンス。

 本当は入りたさそうにしているルシア。

 入りたいのか、入りたくないのか読めないサキュラ。

 若い娘と海ではしゃぐ年でもないと思うレイ。


「レイの言うとおりだ」


 完全に場違いなガーランドもいた。


「船では動けなかったので体がなまってしまった。レイ、付き合え」

「いや剣の鍛錬もしないけどね」


 燦燦と太陽が降り注ぐ青い海と白い砂浜のビーチで革鎧を着こみ、剣を振ろうとする人物は異様だった。


「なぜだ? 海底神殿とやらに行くのは明日だろう」


 レイ達がこの島に来た目的は四大精霊のウンディーネと会うことが目的だった。

 古代の伝説の文献によれば、二千年前、四大精霊は魔王ヴァサーゴと戦う英雄リクに協力したと記されている。

 なかでも水の精霊ウンディーネは他の四大精霊に対してリクと共に魔王と戦うことを説得したという記述もある。

 大精霊のなかでもっとも人類に親和的と考えられていて、人間もウンディーネをよく祀っている。

 ウンディーネはこの島の海底神殿で冒険者による目撃が多い。


「だからってこの暑い中剣を振り回せるか、そもそも何でついてきたんだよ」


 レイがガーランドに聞くと、ガーランドは顎をサキュラに向けた。


「あれか」


 魔神結界で破れてからガーランドはサキュラに拘っている。

 いつ裏切るかわからないサキュラを常に見張っている。

 サキュラはレイとガーランドに見られているのに気が付いて片目をつぶった。


「き、気色悪い」


 ガーランドはそう言ったが、顔が赤くなっている。

 見た目は女にも見える魔族だ。


『私も海に入りたいなー』


 聖剣ティファがつぶやいた。

 そうは言ってもとレイは思ったが、ふと気が付いたことがある。


「ノエラを斬ったということは人間に戻れる時間が増えたんじゃないか?」

『ええ。多分一日一時間は』

「え? 一日一時間って毎日?」

『ええ。毎日です』

「おーいルシア!」


 レイは自分も海に入りたそうにしていたルシアを呼んだ。


「お前も海に入りたいんだろ?」

「べ、別に。水着なんて持って来てないし」


 予想通りだった。


「ならさ。ティファと水着買って来いよ。聖剣助けならぬ、人助けだと思って」

「ええっ?」


◆◆◆


 結局、レイはガーランドの剣の訓練に付き合っている。

 ビーチサイドで汗だくだった。

 レイが砂浜の砂をガーランドの顔に飛ばして後ろに回って剣を振り下ろす。

 ガーランドは目をつぶったままその剣も受け止めた。


「よく見ないでそんな芸当ができるな」

「お前も聖剣でなくてもやるじゃないか」


 ルシアに渡して聖剣を渡してからだいぶ時間が経っている。


「レイさーん」


 遠くから水着姿の少女が走ってくる。

 後ろにはやはり水着姿のルシアがいた。

 海からあがっていたアンジェとリンスは誰だろうという不審な顔をする。

 レイだけが少女が誰かわかっていた。


「ティファ!」


 レイが呼びかけにそう返事をすると、アンジェがあっとした顔をする。


「え? あ、聖剣のティファ……ちゃん?」

「そうです!」


 ティファからすると皆のことは知っているが、皆はティファの姿を見るのは初めてだ。

 ティファは実際には一万年以上、生きているが、見た目は剣に転生した時点での年齢なので、三姉妹のほうが上に見える。

 純粋な性格も相まって妹のようなポジションをすぐに得たようだ。

 ただし、水着を買うのに時間がかかってしまったので人間としていられる時間はもう少ない。


「なら皆で泳ごうよ! せっかく水着買ってきたんだからさ!」

「はい! ルシアさんも! 水着一緒に買うの手伝ってくれたでしょ」

「わ、私はっ」


 三姉妹とティファは海に入って水をかけたり潜ったりしてじゃれあっている。


「レイも来なよ~」

「俺はいいよ。水着とかないしさ」


 リンスに呼ばれてもレイはその様子を波打ち際でほほえましく見守っている。

 急にアンジェが海から上がってレイに感想を聞いてきた。


「ねえねえ。この水着どう思う?」


 レイが胸の谷間が強調される水着の感想にしどろもどろになっていると。


「えいっ!」


 レイはアンジェに後ろに回り込まれて海に投げ飛ばされてしまった。

 アンジェが顔だけ出したレイに水をかけるとルシアもリンスもティファもレイに水をかけた。


「うわっぷ。やったな。そうだ」


 レイはガーランドも巻き込んでやろうと海からガーランドに水を飛ばした。

 目をつぶっていても剣を交わすガーランドに水など当たるはずもない。

 と、思いきや、ガーランドもふっとんで海の中にぼちゃんと落ちた。

 レイ達は何事だと思う。

 ガーランドが海から顔を出して叫ぶ。


「サキュラー貴様ー!」


 どうやらレイの水攻撃に気を取られていたガーランドをサキュラが魔力で吹っ飛ばしたらしい。

 サキュラも貴族服で海にはいってティファが剣に戻るまで皆で水をかけあった。

漫画版一巻10月7日発売

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] コミカライズから拝見しました。 おじさんと美少女パーティー、又他のヒロインズの今後とも楽しみにしております!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ